3、「自転車を勝手に移動させた人」は見つけられる?
もっとも、このように正当な理由なく他人の自転車を駐輪場から移動させる行為は不法行為(民法709条)に当たる可能性があります。行為者に対しては、市に支払った費用や自転車の受け取りに要した交通費などを請求することができます。
とはいえ現実的に行為者を特定することは難しく、行為者がわからなければ請求のしようがありません。手掛かりになるものを強いて挙げるとすれば、移動させた人の自転車です。
そこからわかる情報(例えば、各種の情報シールの内容)を保存し、弁護士へ相談することも考えられます。しかし、自分が停めていた場所にあったからといって、勝手に移動させた人の自転車であるとは限りません。空振りに終わることも十分考えられてしまうところです。
事後的な対処としては、よい方策はなさそうです。あらかじめケーブルやチェーン状の鍵を用意して、柵などの工作物に自転車を括り付けることによって容易に移動できなくするという事前の対策に尽きてしまいます……。
自転車に限った話ではありませんが、物、特に人に迷惑をかけるおそれのある物(危険な物や大きい物)の所有には一定の責任が生じます。勝手に移動させる人が最も非難されるべきことはいうまでもありません。
しかし、勝手に移動させられた結果、通行の妨げになるなどして、関係のない人の迷惑とならないように、所有者が多少なりとも責任を求められてしまうということなのでしょう。
4、自治体も設備投資で対策を講じている
福岡市ではこのような状況を受け、数千万円の予算を投じ、停めた人でなければ移動できないよう鍵式の駐輪場への移行を進めているとのことです。
また、たとえば監視カメラの設置や警察の協力を仰ぐことで、行為者を見つけ出すことはできるようになるかもしれません。コストをかけることで解決できる領域かもしれませんが、そこには時間もかかるはず。
横行する不法行為に対し、法的な抑止力を行使できないという状況には大きな問題があります。今回取り上げられた福岡市の事例に限らず、泣き寝入りを余儀なくされている被害者が各地にいるのです。
自治体の早急な対応や法律の整備を願うことはもちろん、このような心ない行為がなくなることを願います。
監修者:宮本健太弁護士
【経歴】
立教大学法学部卒業
東京大学法科大学院修了
司法修習(東京)修了
【専門分野】
交通事故のほか、労働災害事件、夫婦間の問題、労働問題などの一般民事事件を主に担当しています。
ご依頼者様の利益を最大化させることを念頭に、職務に取り組んでおります。
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