トラウデン直美「おじさんの詰め合わせ」発言を“性差別”だと騒ぐ人が見落としている大問題

トラウデン直美「おじさんの詰め合わせ」発言を“性差別”だと騒ぐ人が見落としている大問題

「ニュースエンターテインメント」は鉄板のストーリーを求める

 自民党という安全なサンドバッグを叩くことで成立するニュースエンターテインメントを裏付ける一例として、今回は「おじさんの詰め合わせ」なるパンチラインが生まれたわけです。


 慶應義塾大卒、サステナビリティへの意識も高く、欧米(西側)の価値観を持ち合わせているキャラの立った若い女性が古臭い自民党を批判する。こうした鉄板のストーリーを必要とするコンテンツと見ればわかりやすいのではないでしょうか。

 それは、いうなれば「おじさん」的なものの反動なのでしょう。だからこそ、その爽やかな正義感には濃厚な「おじさん」の後味が残っているのです。

 キャラの立ったご意見番が役割をこなすという点でいえば、2021年まで『サンデーモーニング』(TBS系)に出演していた張本勲氏と似ています。スポーツコーナーで不甲斐(ふがい)ないプレーや結果に対して、「喝!」とやっていたやつですね。

 張本氏は、昔かたぎの価値観を現代に持ち込むことで正論を打ち出す論法でした。

 それが今回は女性、若年層から男性、中高年への“喝”に変わっただけの話。つまり、やり方としてはどちらも「おじさん」的なのに他ならないのです。

日本のニュースショーの脆弱性があぶり出された

 今回のトラウデン発言を支持する人、怒る人、色々いました。しかしながら、引きの絵で見ると、それは「おじさん」に対する敵対的な性差別でもなければ、また日本社会に対する率直な批評でもありません。

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 逆にそうした議論の可能性の芽を摘み、秒で消費されるキャッチフレーズでしかなかった。

 それは現代のコメンテーターに最も求められる能力でしょう。

 トラウデン直美があまりにも優秀なアクターであったために、またひとつ日本のニュースショーの脆弱性があぶり出されたのだと思います。

<文/石黒隆之>

【石黒隆之】
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。いつかストリートピアノで「お富さん」(春日八郎)を弾きたい。Twitter: @TakayukiIshigu4

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