不整脈で突然死する前兆にはどんな症状がある?Medical DOC監修医が不整脈で突然死する前兆・不整脈を発症しやすい人の特徴や何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。
※この記事はMedical DOCにて『「不整脈で突然死する前兆症状」はご存知ですか?予防法も医師が解説!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。
≫「不整脈の治療法」はご存知ですか?治療薬や手術内容も医師が徹底解説!
監修医師:
丸山 潤(医師)
群馬大学医学部卒業。群馬県内の高度救命救急センター救急科及び集中治療科に2022年まで所属。2022年より千葉県の総合病院にて救急総合診療科および小児科を兼務。乳児から高齢者まで幅広い患者層の診療に努める。
【保有資格】
医師/医学博士/日本救急医学会救急科専門医/日本集中治療医学会集中治療専門医/DMAT隊員/日本航空医療学会認定指導者(ドクターヘリの指導者資格)/JATECインストラクター/ICLSインストラクター
「不整脈」とは?
心臓は生まれてから死ぬまで鼓動を打ち続けます。不整脈は、この鼓動のリズムが狂う症状の総称です。安静にしている時の脈の回数はほぼ同じです。不整脈はいつものリズムより極端に脈が少ない、多い、脈が飛ぶなど、さまざまな種類があります。
不整脈は高齢になればなるほど増える傾向があり、決して珍しい症状ではありません。不整脈がすべて危険なわけではありませんが、中には突然死を引き起こす危険なものがあります。
子供でも突然命を失う重度の不整脈は、まれに起こります。日本の小中高校では年間40名前後の児童、生徒が心臓発作で急死しています。その原因の一つは不整脈と考えられ、一見すると健康そうな子供が突然発作を起こすことがあります。子供の心疾患は学校で行う心臓健診で見つかるケースがほとんどで、自覚症状に乏しいのが特徴です。
不整脈で突然死する前兆
不整脈は珍しくない症状ですが、中には突然死を起こすことがあります。全く何の前触れもなく倒れ、そのまま急逝するケースもありますが、前兆で何らかの症状が出ることもあります。前兆症状が出たら安静にして、様子を見ましょう。強い症状が出る、何度も同じ症状が続く際は、すぐに医療機関の受診をおすすめします。
不整脈は血流を滞らせて血栓を作り、脳梗塞を起こす心房細動、心筋梗塞を起こし突然死を引き起こす心室細動など、致命的な症状の引き金になります。
胸がドキッと一瞬だけ鳴る(脈が飛ぶ)
不整脈には数多くの病名があります。何も刺激がないのに突然胸がドキッと一瞬だけ鳴ることがあれば、それは不整脈のひとつ「期外収縮」かもしれません。心臓の筋肉は電気信号で収縮します。電気信号は規則正しい順番で心筋を動かしますが、正規ルートとは別のルートから電気信号が送られることがあります。規則正しい正しい信号の間に、誤った信号が届くと脈が飛びます。胸がドキッと一瞬だけ鳴るように感じる、胸が詰まるような感覚に襲われることもあります。
心房細動のせいで脈が乱れている場合、脳梗塞発症のリスクを急激に上昇させることがあります。心室で期外収縮が起こる(心室性期外収縮)はたいてい様子見で大丈夫ですが、頻度が多い場合や心室性期外収縮が数秒連続する場合は、致死性の不整脈(心室細動、無脈性心室頻拍)の前兆である可能性があります。早めに循環器内科を受診して下さい。
胸がドキドキ鳴り続ける(動悸)
何もしていないのに胸がドキドキと早く鳴り続ける動悸は「頻脈性不整脈」の可能性があります。あまりにも心拍が速すぎると心臓の空打ちを引き起こし、きちんと血液を送り出すことができなくなります。したがって、不整脈の中ではよく見られる症状ですが、突然死の前兆である可能性もあります。
頻脈性不整脈には、洞性頻脈、心房頻拍、心房細動、心房粗動、発作性上室性頻拍、心室頻拍、心室細動などがあります。洞性頻脈はいつもの心臓の電気の流れと同じですが、脈の速さだけ速くなるもので、甲状腺機能亢進症(バセドウ病)や脱水症、緊張(ストレス)などで発生します。若い人が非常に緊張する場面で動悸を自覚するのは多くの場合、この洞性頻脈です。
高齢者の動悸の原因として多いのは発作性心房細動です。これは正常な時にリズム良く電気信号を発信している「洞結節」という部分以外から、不規則なリズムで異常な電気信号が発生することで生じます。心房細動には発作性(1週間以内に収まる)、持続性(1週間以上続く)、永続性(1年以上続く)の3種類があり、ずっと心房細動になっている方もいますが、頻脈でなければ動悸を自覚しないことも多いです。洞性頻脈を起こす疾患の1つにバセドウ病がありますが、バセドウ病は放置すると心房細動を引き起こすリスクが高まるため、早期発見・早期治療が大切です。
胸が苦しい
胸が締め付けられるように痛む、心臓が圧迫されるなど、胸が苦しく感じる症状も、突然死を引き起こす可能性があります。この場合、不整脈で心臓への血流が一時的に減って症状が出現しているパターンと、心筋梗塞によって胸が痛み、心筋梗塞のせいで不整脈が起きているパターンと2種類あります。
気を付けたいのは、胸の痛みが胸で起こるとは限らないところです。歯や顎の痛み、肩こりなど放散痛と言われ、心臓から離れた位置が痛むこともあります。心臓は左寄りにありますが、必ずしも左側だけでなく右顎や右肩が痛くなることもある点に注意が必要です。突然歯が痛くなった、動悸がある、脈が飛ぶなどの症状を自覚した場合はすぐに医療機関を受診しましょう。強い胸痛や呼吸苦があれば、救急車を呼びましょう。
めまい
めまいは、極端に心拍が少ない不整脈、徐脈(じょみゃく)でよく見られる症状です。心臓の収縮力は変わりませんが、血液を送る頻度が極端に減ってしまい、脳へ十分な血液が届かず、酸素のせいでめまいを起こします。逆に頻脈でも、速すぎて心臓が膨らんで血を溜め込む時間が作れないと、心臓が空打ちになり同様の症状が起こります。
徐脈性不整脈には洞性徐脈、房室ブロック、洞不全症候群などがあります。洞結節と呼ばれるスタート地点からの電気信号の頻度自体が減ってしまうパターンと、電気の流れが滞ったり途切れたりすることで脈が遅くなってしまうパターンがあります。
めまいを感じたら脈を取る習慣を付けましょう。脈拍が1分間に50回以下の場合は徐脈のサインです。早急に医療機関を受診しましょう。
失神
徐脈がさらに悪化すると、意識を失う、目の前が真っ暗になるといった、より深刻な症状が現れます。また、心室細動という致死性の不整脈が一時的に発生している可能性があり、この不整脈が続くとその場で突然死するリスクが高い、非常に危険な前兆です。
一度でも意識を失ったことがあり、脈拍が明らかに遅すぎる、または速すぎる場合は直ちに循環器内科を受診して下さい。カテーテル手術などで早急に対策しなければ、命を失う可能性があります。
配信: Medical DOC