離婚調停の申し立て|本人だけでできる方法を解説

離婚調停の申し立て|本人だけでできる方法を解説

ご自分で離婚調停の申立てをしたいとお考えの方に

今回は、

自分でできる離婚調停の申立て方法
離婚調停の申立てに関する必要書類の書き方
離婚調停を有利に進めるために申立て時に準備しておくべきこと

などについて、弁護士がわかりやすく解説していきます。

1、離婚調停を自分で申し立てる方法

離婚調停を申し立てる方法は、

必要書類・証拠・費用を準備して
それらを管轄の家庭裁判所へ提出するだけ

このようにいうと簡単そうに思えますが、それぞれのステップごとに注意すべきポイントがあります。

以下で、順にご説明します。

(1)証拠を集める

まずは、ご自身の言い分を証明できる証拠を集めることが必要です。

なぜなら、証拠がなければ相手方が言い逃れをする可能性がありますし、調停委員も証拠がない事項については話し合いの前提とすることが難しいからです。

調停を有利に進めるためには、相手方が言い逃れできないような、決定的な証拠を確保しておくのが理想的です。

たとえば、相手が浮気をしているのであれば浮気の証拠を、DVやモラハラがあるのならその証拠です。どんなものが証拠になるかわからない場合は、弁護士の無料相談で確認してみるとよいでしょう。

強力な証拠がないからといって離婚調停の申立てを躊躇する必要はありませんが、できる限り証拠を集めておきましょう。

(2)必要書類を揃える

離婚調停を申し立てる際には、さまざまな書類を家庭裁判所へ提出する必要があります。

以下の解説を参考にして、漏れのないように準備していきましょう。

なお、各書類の書き方は後ほど「2、離婚調停の申立書類の書き方」で解説します。

ここでは、どのような書類が必要となるのかをご確認ください。

①夫婦関係調整調停申立書

離婚調停の申し立てで最も基本となる書類です。様式に特段の決まりはありませんが、家庭裁判所が用意している定型の申立書を使用するのが便利です。

最寄りの家庭裁判所で取得するか、裁判所の運営するホームページでダウンロードして使用することができます。

夫婦関係調整調停申立書
記載例

②進行に関する照会回答書

裁判所が調停をスムーズに進めていくための参考とするために提出が求められる書面で、離婚の話し合いに関する相手方の動向や、調停期日の希望曜日、裁判所に配慮を求めたいことなどを記載します。

書式は最寄りの家庭裁判所で取得するか、裁判所の運営するホームページでダウンロードして使用することができます。

進行に関する照会回答書_離婚調停

③事情説明書

調停の開始前に裁判所ができる限り詳しい事情を把握するために提出を求められる書面です。

当事者の現在の住居や収入・財産の状況、夫婦関係が不和となったいきさつなどを記載します。

書式は、最寄りの家庭裁判所で取得するか、裁判所の運営するホームページでダウンロードして使用することができます。

事情説明書_離婚調停
子についての事情説明書_離婚調停

④夫婦の戸籍謄本

戸籍謄本はあなたの本籍地のある役所で取得することができます。手数料として1通450円が必要です。

⑤連絡先等の届出書

裁判所からの書類の送付や連絡がスムーズにできるようにするために提出が求められている正面です。

書類を受け取る事が可能な住所、平日の昼間に連絡の取れる連絡先を記入します。

電話番号については、固定電話の番号でも携帯電話の番号でもかまいません。

書式は、最寄りの家庭裁判所で取得するか、裁判所の運営するホームページでダウンロードして使用することができます。

連絡先等の届出書_離婚調停
連絡先等の届出書記載例

⑥(年金分割を請求する時)年金分割のための情報通知書

年金分割の請求手続きは年金事務所で行うものですが、分割割合についてパートナーとの話し合いがまとまらないときは離婚調停で決めることもできます。

その場合には、「年金分割のための情報通知書」を家庭裁判所に提出しておく必要があります。

この通知書は、共済組合(夫が公務員の場合)や日本年金機構(夫が会社員の場合)に「年金分割のための情報提供請求書」を提出することで取得できます。

(3)費用を準備する

離婚調停の申し立てをする際には、以下の費用が必要となりますので、準備しておきましょう。

①収入印紙代1,200 円

家庭裁判所に納める費用として、1,200円分の収入印紙が必要となります。

収入印紙は、郵便局やコンビニで買うことができます。

②切手代800円前後 (家庭裁判所により異なる)

家庭裁判所から相手側に書類を送付する必要が生じるため、切手を購入して家庭裁判所へ提出します。

申し立て先の家庭裁判所によって多少前後しますが、金額はおおよそ800円です。

③その他

その他、調停に必要な提出書類(戸籍謄本など)を用意したり、弁護士に相談したりする際には費用がかかります。

詳しくは、以下の関連記事をご参照下さい。

(4)管轄の家庭裁判所へ書類と費用を提出する

証拠・必要書類・費用が準備できたら、それらを管轄の家庭裁判所へ提出することで離婚調停の申し立てが完了します。

申立先は、原則として相手方の住所地を管轄する家庭裁判所です。

例外的に、夫婦間で事前に申し立てを行う家庭裁判所について話し合って合意していた場合には、その家庭裁判所に申し立てをすることもできます。

合意していない場合で、夫婦が別居して遠方に住んでいる場合には、相手方の住所地の家庭裁判所に申し立てなければなりませんので、ご注意ください。

具体的な管轄裁判所は、裁判所のホームページで確認できます。

参照:裁判所|裁判所の管轄区域

なお、調停の申立ては、申立書などを郵送で家庭裁判所へ送ることでも可能です。

2、離婚調停の申立書類の書き方

離婚調停を申し立てる際に多くの方が悩まれるのが、各書類の書き方についてです。

ここでは、記載が必要な書類について1つずつ、具体的な書き方を解説していきます。順に確認しながら、正確に記載していきましょう。

(1)申立書の雛形・記載例の無料ダウンロード

ここからの解説は、申立書の雛形と記載例を見ながらお読みいただくとわかりやすくなりますので、先にダウンロードしておくことをおすすめします。

雛型と書式例は、下記テキストをクリックしていただくことでダウンロードできます。

夫婦関係調停申立書の雛形のダウンロードはこちら

夫婦関係調停申立書の記載例のダウンロードはこちら

(2)各項目の具体的な書き方

では、申立書の項目ごとに具体的な書き方を説明していきます。

①夫婦関係申立書の事件名の欄

離婚調停なので、「離婚」と記載します。

②家庭裁判所名・日付・申立人の記名・押印の欄

「家庭裁判所の名称」は、申立先の家庭裁判所の名称を記入します。

日付は、申立書を作成する日を記入します。

申立人の記名・押印は、ご自身の氏名を記入し、印鑑(認印可)を押印します。

弁護士がついている場合には、弁護士名も記入します。

③添付書類欄

チェックをする項目は以下の通りです。該当する場合にはチェックを入れましょう。

戸籍謄本の欄
年金分割の申し立ても行う場合は、年金分割のための情報通知書の欄

その他にも添付書類がある場合は、3つめのチェックボックスにチェックを入れて、書類の名称を記載しましょう。

例えば、後ほど「4」(3)でご紹介する陳述書を提出する場合は、この欄に「陳述書」と記載します。

④申立人・相手方の欄

申立人と相手方、それぞれの本籍・現住所・名前・生年月日を記入します。

本籍は戸籍謄本に記載のある本籍を記入します。

住所は、裁判所が連絡を取るために使用するので、原則としてそれぞれの現住所を記入します。

⑤対象となる子の欄

未成年の子の親権や養育費の額で争っている場合は、子どもがどちらの親と住んでいるのか・氏名・生年月日を記載します。

⑥申立ての趣旨

円満調整と、関係解消(離婚あるいは内縁関係の解消)の欄がありますが、 離婚調停の申し立ての場合は、関係解消の欄に記載します。

「1 申立人と相手方は離婚する」、「2 申立人と相手方は内縁関係を解消する」のどちらかに◯を付ける

こちらは1に○を付けます。

付随申立ての(1)

未成年の子どもがいる場合には、父と母のどちらが親権者になる方を記入します。

子どもの名前、続柄(長男、長女、二男、二女等)を、全ての子どもについてそれぞれ記入します。

付随申立ての(2)

監護権がない方、親権者ではない方が、子どもとの面会交流を希望する時期や方法について話し合う場合にチェックを入れます。

付随申立ての(3)

離婚時の養育費についてです。これは、親権者が親権を持たない側に支払ってもらう金額の希望額を記載します。

具体的な金額については実際に調停で決定されていくことになりますが、現段階での希望額を記載しましょう。

付随申立ての(4)

離婚時の財産分与についてです。

これは、夫婦の共有財産を分割し、持ち分について取得を希望する場合に記載します。

具体的な金額については実際に調停で決定されていくことになりますのが、現段階での希望額を記載しましょう。

付随申立ての(5)

離婚時の慰謝料についてです。

一方が不貞行為などの不法行為をしており、損害賠償義務を負う場合に、不法行為をした者が相手方に支払う金額です。

具体的な金額については実際に調停で決定されていくことになりますのが、現段階での希望額を記載しましょう。

付随申し立ての(6)

こちらには年金分割を請求する場合の分割割合についての希望を記入します。

年金分割の割合は0.5が上限ですので、通常は「0.5」の所にチェックを入れます。

⑦申立ての理由

 「同居・別居の時期」の欄には、結婚して同居を開始した時期と別居を開始した時期を記載します。

「申立ての動機」の欄には、離婚の原因となる一般的な事例が記載されていますので、該当すると思われるものに○を記入して下さい。最も重要なものには◎を付けます。

この欄には〇を付けるだけなので、いっけん簡単な項目のようにも思えますが、実は離婚調停において非常に重要な意味を持っています。

そこで、申立ての理由(動機)については、この後「3」でさらに掘り下げて解説します。

⑧申立書に関する注意点

申立書を家庭裁判所に提出すると、家事事件手続法という法律により、原則として相手方にもコピーが送付されることになっています。

しかし、申立書の内容によってはお互いの感情に亀裂が入ってしまい、調停での話し合い難航する可能性があります。

そのような心配がある場合は、例外的に申し立てがあった事実の通知のみで、その内容については伏せておくことが許される場合があります。

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