離婚調停の申し立て|本人だけでできる方法を解説

離婚調停の申し立て|本人だけでできる方法を解説

3、離婚調停の申立てで重要な「申立ての理由」とは?

申立ての理由とは、文字どおり、あなたが離婚調停を申し立てる理由のことです。

先ほど、申立書の「申立ての趣旨」の欄に「離婚する」ことと希望する離婚条件を記載したはずですが、申立ての趣旨と申立ての理由はセットで重要となります。

以下で、具体的にご説明します。

(1)申立ての理由が重要な理由

あなたは、パートナーとの離婚、そしてさまざまな離婚条件の取り決めを求めて離婚調停を申し立てるはずですが、それなりの理由がなければ離婚も慰謝料や養育費などの支払も認められません。

そこで、あなたがどのような理由に基づいて離婚や離婚条件を求めるのかを記載するのが「申立ての理由」の欄になります。

裁判(訴訟)では、「法定離婚事由」に該当する理由がなければ離婚は認められませんし、その理由がパートナーの不法行為に該当するものでなければ慰謝料も認められないことになります。

調停は話し合いの手続きですので、どのような理由でも申立ては可能ですが、法律的に離婚や慰謝料の支払いの請求が可能となる理由があるかどうかを意識することは大切です。

(2)申立ての動機は13個!あなたの動機は?

申立書の雛形には以下の13個の動機が列挙されていて、その中からご自身の動機を選ぶようになっています。

ご自身がどのような動機で離婚を決意したのかをよく振り返り、その動機が法律的にどのような意味を持つのかを確認しておきましょう。

①性格があわない

いわゆる「性格の不一致」のケースです。性格の不一致のみでは、法定離婚事由には該当しません。

ただし、性格の不一致が原因で夫婦関係が修復不可能なほどに破たんしている場合には、法定離婚事由に該当する可能性もあります。

②異性関係

パートナーが浮気や不倫をしているケースです。「不貞行為」がある場合は法定離婚事由となりますが、不貞行為に至らない高裁の場合は法定離婚事由に該当しない可能性が高いです。

③暴力を振るう

パートナーからDVを受けているケースです。

身体的暴力は不法行為ですので、基本的には法定離婚事由に該当しますが、程度が軽い場合には法定離婚事由に該当しない可能性もあります。

④酒を飲み過ぎる

パートナーが酒を飲み過ぎるというだけでは、基本的に法定離婚事由には該当しません。

この動機で離婚を求める場合には、他の動機も合わせて選択する必要があるといえます。

⑤性的不調和

セックスレスのケース、あるいは逆に過剰な性行為を求められるケースです。

これらのケースでも、程度によっては法定離婚事由に該当することがあります。

⑥浪費をする

パートナーが浪費をする場合も、法定離婚事由に該当するかどうかはケースバイケースです。

家計をかえりみずに浪費を重ねて、多額の借金を抱えているような場合は法定離婚事由に該当する可能性があります。

⑦病気

パートナーが病気という場合、それだけで法定離婚事由に該当することはほとんどありません。

この動機で離婚を求める場合も、他の動機も合わせて選択する必要があるでしょう。

⑧精神的に虐待する

パートナーからモラハラを受けているケースです。

精神的暴力も不法行為に当たりますので、程度にもよりますが、法定離婚事由に該当する可能性が高いといえます。

⑨家族をすててかえりみない

パートナーが仕事や趣味・遊びに夢中になり、家族との交流がほとんどないようなケースです。

浮気や不倫、生活費を渡さない、浪費をするなど他の動機もある場合は法定離婚事由に該当する可能性もありますが、単に毎日帰りが遅い、交流がない、というだけでは離婚は難しいでしょう。

⑩家族と折り合いが悪い

嫁と姑の対立が典型的ですが、パートナーの実家との折り合いが悪いために夫婦関係が不和となるケースも少なくありません。

しかし、家族と折り合いが悪いだけでは法定離婚事由に該当する可能性は低いです。

他の動機も合わせて選択する必要があるでしょう。

⑪同居に応じない

夫婦には同居義務があります。

パートナーが正当な理由なく同居に応じない場合、その状態が長期間継続していれば夫婦関係が破たんしているといえますので、法定離婚事由に該当する可能性が高いです。

⑫生活費を渡さない

パートナーに収入があるにもかかわらず生活費を渡さない場合は、夫婦の協力扶助義務に違反していますので、「悪意の遺棄」として法定離婚事由に該当する可能性が高いといえます。

ただし、一定の金額は渡されているものの足りないと主張する場合は、その金額が家族の生活費として適正かどうかを考慮する必要があります。

4、離婚調停の申立書以外に提出すべき書類の書き方

離婚調停を申し立てる際には、申立書以外にも以下の書類を記載して提出することになります。

それぞれの書類について、書き方をご説明します。

(1)離婚調停の進行に関する照会回答書

進行に関する照会回答書の雛形は、下記のテキストをリンクすることでダウンロードできますのでご利用ください。

進行に関する照会回答書_離婚調停

雛形をご覧いただければ分かりますが、以下の質問事項が記載されていますので、各質問に対してそれぞれ回答を記入します。

家庭裁判所に実情を把握してもらうことが大切ですので、ありのままの事実を正直に記載しましょう。

この申立てをする前に相手方と話し合ったことがありますか。
相手方は裁判所の呼出しに応じると思いますか。
調停での話合いは円滑に進められると思いますか。
この申立てをすることを相手方に伝えていますか。
相手方の暴力等がある場合には、記入してください(暴力の内容、頻度、治療を受けたことがあるか、調停時に暴力の可能性があるか等)。
調停期日の差し支え曜日等があれば書いてください。
裁判所に配慮を求めることがあれば、その内容をお書きください。

相手方が暴力を振るう傾向がある場合や、裁判所で待ち伏せ等をされるおそれがある場合、現住所や連絡先を知られたくない場合は、必ず該当欄に記載しておきましょう。

(2)事情説明書

事情説明書の雛形は、下記のテキストをリンクすることでダウンロードできますのでご利用ください。

事情説明書_離婚調停

事情説明書も雛形に以下の質問事項が記載されていますので、各質問に対してそれぞれ回答を記入します。

やはり、家庭裁判所に実情を把握してもらえるように、ありのままの事実を正直に記載しましょう。

この問題でこれまでに家庭裁判所で調停や審判を受けたことがありますか。
調停で対立すると思われることはどんなことですか。
それぞれの同居している家族について記入してください。
それぞれの収入はどのくらいですか(月収や賞与の金額等)。
住居の状況について記入してください(自宅か、賃貸か等)。
財産の状況について記入してください(土地や建物や預貯金等の内容と負債について)。
夫婦が不和となったいきさつや調停を申し立てた理由などを記入して下さい。

相手方の収入や財産などで不明な点があれば、空白のまま提出しても差し支えありません。

最後の「夫婦が不和となったいきさつや調停を申し立てた理由」の欄には、ぜひ具体的な事情を詳細に書くようにしてください。

ただ、雛形では記入欄のスペースが狭いので、次にご紹介する「陳述書」を活用することをおすすめします。

その場合、上記「7」の欄には「別途提出する陳述書に記載のとおり」と記載すれば足ります。

(3)陳述書

陳述書とは、ご自身の主張する事実や裁判所に伝えたいことを物語形式で記載した書面のことです。

充実した陳述書を提出しておけば、裁判所にこちらの言い分を十分に理解してもらった状態で調停をスタートできますので、有利に調停を進めることが期待できるようになります。

離婚調停における陳述書の書き方は、夫婦が結婚したときからその後の夫婦生活の状況、それから夫婦関係が破たんするまでに起こったことを時系列で具体的に記述していくのが一般的です。

事実を列挙するだけではなく、それぞれの事実に対してご自身がどのような気持ちになったのかを記述することによって、精神的損害の程度を説明することも大切です。

文章を書き慣れていない方には難しいかもしれませんが、弁護士に依頼すれば、弁護士があなたのお話を聞いた上で説得的な陳述書を作成してくれます。

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