「自動販売機横のリサイクルボックスの近くにペットボトルの残骸が大量に置かれているんですが、問題ないのでしょうか」
東北地方に在住の大学生のケンタさんは、通学路の途中にある自動販売機の横のリサイクルボックスの様子が気になっています。
リサイクルボックスに入りきらないペットボトルが、リサイクルボックスの近くに放置されており、風で近くの道路にも転がっている光景をよく見るそうです。リサイクルボックスはこれ以上入らない状態のため、捨てようとした人が入らないので仕方なくリサイクルボックスの横に投棄していく姿を見かけたこともあります。
「ペットボトルが散乱している様子は景観を損なうし、環境にも良くない。もし地面に転がっているペットボトルで滑って転べばケガする可能性もあるのではないでしょうか」(ケンタさん)
リサイクルボックス付近に、ペットボトルを投棄することは法的に問題ないのでしょうか。また、自販機を設置した業者側の責任はどうなのでしょうか。大和幸四郎弁護士に聞きました。
●「事業者にリサイクルボックス設置の法的義務はない」
──リサイクルボックスの設置や管理について、業者側に法的責任は何かあるのでしょうか。
意外に思われるかもしれませんが、自動販売機の設置者がリサイクルボックスを自販機近くに設置する法的義務はありません。コンビニも同様です。事業者が資源回収の取り組みとして、ごみ箱を設置しているというのが実情です。
法的に設置義務はないので、リサイクルボックスの横に捨て置かれたペットボトルなどが道路等に散らばったとしても、設置者に清掃するまでの義務はないと考えられます。
──事業者側がリサイクルボックスを設置した以上は、ペットボトルを溢れさせないようにするなどの責任などはないのでしょうか。
この点、日本自動販売協会は、設置自主ガイドラインを定め、自販機設置の際には使用済み容器の回収ボックス(リサイクルボックス)の設置を推進しているようです。
よって、法的義務はないとしても、業者側が進んで設置した場合については、条理上の責任として、ペットボトルを溢れさせないようにするなどの管理責任はあると思います。
──ペットボトルを放置する行為についてはどうでしょうか。
自販機などで販売されているペットボトルは、原則として、家庭から出たなら「一般廃棄物」、事業所から出たなら「産業廃棄物」とされていますが、いずれにしても廃棄物処理法上の「廃棄物」(2条1項)です。
リサイクルボックスの横にペットボトル等を放置する行為は、「何人も、みだりに廃棄物を捨ててはならない」とする廃棄物処理法違反に該当します(16条)。罰則も定められており、違反すれば「5年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、または併科」となっています(25条1項14号)。
リサイクルボックスの有無にかかわらず、ペットボトルを投棄すれば、同法違反に問われる可能性は否定できません。
──投棄されていたものが、自販機で買ったペットボトルか持ち込んだものかで何か違いはありますか。
どちらも「廃棄物」だとすれば、違いはないと考えられます。
ここ数年、私は健康のために遠回りをして通勤してますが、ときどき駅にある自販機横にペットボトルの残骸が大量に置かれているのを見て悲しくなることがあります。
SDGsの見地や美観を守るためにも、リサイクルボックスに缶やペットボトルが入らない場合はきちんと持ち帰って欲しいと思います。
【取材協力弁護士】
大和 幸四郎(やまと・こうしろう)弁護士
佐賀県弁護士会。2010年4月~2012年3月、佐賀県弁護士会・元消費者問題対策委員会委員長。佐賀大学客員教授。法律研究者、人権活動家。借金問題、相続・刑事・男女問題など実績多数。
事務所名:武雄法律事務所
事務所URL:http://www.takeohouritu.jp/
配信: 弁護士ドットコム