血液検査ではわかる病気とは?Medical DOC監修医が血液検査で発見できる病気や検査結果の見方・項目ごとの数値の基準値・異常値等を詳しく解説します。
※この記事はMedical DOCにて『「血液検査」で何がわかる?検査でわかる病気や項目について医師が徹底解説!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。
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監修医師:
伊藤 陽子(医師)
浜松医科大学医学部卒業。腎臓・高血圧内科を専門とし、病院勤務を経て2019年中央林間さくら内科開業。相談しやすいクリニックを目指し、生活習慣病、腎臓病を中心に診療を行っている。医学博士、産業医、日本内科学会総合内科専門医、日本腎臓学会腎臓専門医、日本透析医学会透析専門医、日本東洋医学会漢方専門医、日本医師会認定産業医、公認心理師。
血液検査結果の見方と項目別の基準値・異常値一覧
ここまでは血液検査について基本的なことを紹介しました。
再検査・精密検査を受診した方が良い結果がいくつかあります。
以下のような診断結果の場合にはすぐに病院に受診しましょう。
血液検査結果の見方と項目別の主な所見
代表的な検査の項目一覧をお示しします。結果の見方については、まず自分の結果が基準値から外れているものがないかを確認します。基準値とは、健常人の95%の方が含まれる範囲を示しています。基準値から少し外れていても、異常とは言えないため「正常値」という用語は使われなくなりました。この基準値から大幅に外れている場合には、異常がある可能性が高いです。医療機関を受診しましょう。次に、今までの自分の検査結果が大きく変わっているものがないかを確認しましょう。例えば、基準値の範囲内であっても、急に貧血が進んでいる場合などは、病気が潜んでいる可能性があります。ご自身の体の変化を常に確認することが大切です。自分では、わからない場合にはかかりつけ医などに相談するのも良いでしょう。
項目
基準値
単位
何が分かるか
血球検査
WBC
(白血球数)
3300-8600
/μL
血液疾患,
感染症,炎症
Neut
(好中球桿状核球)
0.5-6.5
%
血液疾患,
白血球の異常,
アレルギーなど
Neut
(好中球分葉核球)
38-74
%
Lymph
(リンパ球)
16.5-49.5
%
Mono
(単球)
2.0-10.0
%
Eosino
(好酸球)
0.0-8.5
%
Baso
(好塩基球)
0.0-2.5
%
RBC
(赤血球数)
男435-555,
女386-492
10⁴/μL
多血症,貧血
Hb
男13.7-16.8,
女11.6-14.8
g/dL
赤血球の形状,
貧血の種類
Ht
男40.7-50.1,
女35.1-44.4
%
MCV
83.6-98.2
fL
MCH
27.5-33.2
pg
MCHC
31.7-35.3
g/dL
血小板数
158-348
10³/μL
凝固系の異常、
肝臓病
生化学検査
AST
(GOT)
13-30
U/L
肝臓病
ALT
(GPT)
男10-42,
女7-23
U/L
肝臓病
CPK
(CK)
男59-248,
女41-153
U/L
筋疾患,
心筋梗塞など
UN
(尿素窒素)
8-20
mg/dL
腎臓病,
脱水など
Cr
男0.65-1.07,
女0.46-0.79
mg/dL
腎臓病
UA
(尿酸値)
男3.7-7.8,
女2.6-5.5
mg/dL
痛風
LDL-C
65-163
mg/dL
脂質異常症
HDL-C
男38-90,
女48-103
mg/dL
TG
(中性脂肪)
男40-234,
女30-117
mg/dL
LDH
124-222
U/L
血液疾患,
心疾患,肝臓病,
筋疾患など
BNP
≦18.4
pg/mL
心不全
免疫検査
CRP
0.00-0.14
mg/dL
炎症,感染など
血液検査の項目別異常値と精密検査内容
健康診断で異常値が認められた場合、まずは医療機関を受診しましょう。そして、この結果が持続しているのかを再検査する必要があります。項目にもよりますが、なるべく早く再検査をされた方が良いでしょう。その上で、異常が分かった場合にはさらに精密検査をすることになります。例えば、肝機能障害が持続している場合にはB型肝炎やC型肝炎などのウイルス感染のチェックや膠原病の合併の有無、腹部エコーなど画像的な検査を追加し肝機能障害の原因について調べ、治療方針が決定されます。
「血液検査」についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「血液検査」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
一般的な血液検査の項目を教えてください。
伊藤 陽子 医師
健康診断などでよく行う項目としては、血球検査(白血球数、貧血など)、生化学検査(肝機能、腎機能、脂質異常、血糖値など)を測定することが多いです。
血液検査でわかる病気はどのくらいありますか?
伊藤 陽子 医師
血液検査の項目はかなり多く、検査項目を増やせばいろいろな病気を診断することができます。一般的な項目で診断できるものでは、貧血、血液の病気(白血病など)、肝臓病、腎臓病、脂質異常症、糖尿病、高尿酸血症などです。このほかに採血項目を追加することで、甲状腺疾患を含めた内分泌疾患、膠原病などの病気を調べることができます。また、ピロリ菌の感染の有無を調べる検査として、ピロリ菌の抗体を血液検査で調べる方法もあります。しかし、保険の適応となる検査は、胃カメラでの胃炎などの診断をした後に行う血液検査です。このように、血液検査の中には保険での適応があるため、必要な検査かを医師が判断した上で行う必要があります。健康診断などの自費検査とは違い、希望すれば検査ができるわけではないため、医師の判断を仰ぐ必要があります。症状などから心配がある場合には医師に相談をしましょう。
血液検査の前にやってはいけないことはありますか?
伊藤 陽子 医師
血糖値や中性脂肪は食事に影響されて上昇するため、一般的には10時間以上の絶食の上採血をすることが推奨されています。検査の前に食事をとったり、糖分がある飲み物を摂取したりすると値が高くなります。また、脱水状態ではBUNやCr、Hbなどの値が上昇することがあります。水や麦茶などの水分を摂取し、脱水状態とならないようにしましょう。また、過酷な運動も脱水を起こしたり、運動により筋肉が損傷されたりするとCKなどの値が上昇する可能性があり、控えるべきです。
血液検査で癌はわかりますか?
伊藤 陽子 医師
血液の癌である白血病や悪性リンパ腫などは、血液検査の異常値で発見されることもあります。しかし、残念ながら一般的な癌は採血検査のみで癌を診断することはできません。腫瘍マーカーは癌により体が反応して産生される物質であり、癌が診断された後の指標として測定することがあります。しかし、この腫瘍マーカーは炎症などの良性疾患や生活習慣などでも高くなることもあり、腫瘍マーカーのみで癌を発見することはできません。一般的ながん健診を利用して早期にがんを発見することが勧められます。
健康診断の血液検査の前に食事をしてはいけないのはなぜですか?
伊藤 陽子 医師
血液検査の前に食事を摂ることで血糖値や中性脂肪の値が上がってしまい正確な値が分からなくなるためです。これらの検査項目がないか、医師に確認をしましょう。
配信: Medical DOC