「熱中症対策にスポーツドリンクは欠かせない」と聞いたことがある方は多いと思います。しかし、スポーツドリンクの摂り過ぎは健康に悪影響を与える可能性があります。健康に深刻な影響を及ぼす可能性があるので、飲み過ぎには注意が必要です。今回は、1日に必要な糖分摂取量とスポーツドリンクの糖分の量を比較し、スポーツドリンクを飲み過ぎると健康に与える影響について、管理栄養士の高木さんに解説していただきました。
≫熱中症対策のドリンクは「スポーツドリンク」「経口補水液」どちらがいい? 医師が解説
監修管理栄養士:
高木 美奈子(管理栄養士)
京都府内の管理栄養士養成課程の大学を卒業後、委託給食会社に就職し、特別養護老人ホームに配属され、厨房調理業務をおこなう。その後、施設雇用の管理栄養士に転職し、栄養ケアマネジメント業務や給食管理業務、委員会や食事イベント企画運営など、入居者の生活が食事で健康になれるよう工夫する。現在は、フリーランス管理栄養士・ライターとして、健康系の記事執筆を中心に活躍している。
スポーツドリンクや経口補水液には実はたくさんの糖分が含まれている!
編集部
スポーツドリンクにはどのくらいの糖分が含まれているのでしょうか?
高木さん
スポーツドリンクのほかに、一般的なジュースや炭酸飲料などの「清涼飲料水」の糖分は、ペットボトル1本(500ml)あたり30〜60gです。WHOの指針によると、食事以外で1日に必要な糖分の量は、1日の必要なカロリーの5%程度、つまり25g程度と示しています。500mlのペットボトル1本分のスポーツドリンクを飲んでしまうと、1日の必要な糖分の量を超えてしまいます。
※「WHOガイドラインで成人および小児に推奨されている糖分の摂取に関する情報」
https://www.who.int/publications/i/item/WHO-NMH-NHD-15.3
編集部
なぜ、糖分を摂り過ぎるとよくないのでしょうか?
高木さん
糖分の摂り過ぎは、肥満や生活習慣病リスクが高まる原因となることがあります。糖分を摂り過ぎると、体内でインスリンというホルモンが過剰に分泌されます。インスリンは、血糖値を下げる働きがあり、糖分過多の状態では、使いきれなかったブドウ糖が中性脂肪として蓄積される可能性があるのです。その結果、肥満や糖尿病などの生活習慣病のリスクが高まります。
※「インスリン | e-ヘルスネット(厚生労働省)」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/metabolic/ym-011.html
編集部
多くの子どもがスポーツドリンクを持っているのを見かけます。むし歯の原因にもなると思うのですが、いかがでしょうか?
高木さん
スポーツドリンクを飲み過ぎると、スポーツドリンクに含まれる糖分がむし歯の原因になります。スポーツドリンクは清涼飲料水なので、炭酸飲料やジュースと同じく、糖分が多く含まれます。スポーツドリンクを飲む頻度が多いと、歯に付着しているむし歯菌が糖分を摂取し、酸を作って歯を溶かします。口の中が酸性に傾くと、歯が溶かされやすくなり、むし歯ができてしまうのです。スポーツドリンクを飲んだあとは、水やお茶で口をゆすぐだけでも、むし歯予防になります。
スポーツドリンクを飲み過ぎると引き起こす「ペットボトル症候群」とは
編集部
スポーツドリンクの飲み過ぎについて調べると「ペットボトル症候群」という言葉が出てきました。ペットボトル症候群について教えてください。
高木さん
ペットボトル症候群とは、糖分を過剰摂取したときに現れる症状です。具体的な症状として、喉の渇きや倦怠感、吐き気、多量の尿が現れるといわれています。ペットボトル症候群は別名「糖尿病性ケトアシドーシス」「清涼飲料水ケトーシス」と呼ばれます。
編集部
ペットボトル症候群は、糖尿病の人に起こるものでしょうか?
高木さん
ペットボトル症候群の症状は、急性の糖尿病で起こるものです。糖尿病でない人でも、スポーツドリンクや炭酸水、ジュースなどの清涼飲料水を大量に飲み続けると「ペットボトル症候群」の可能性が高くなります。清涼飲料水を大量に飲むと、血糖値が急上昇して、血糖値を下げるために喉が渇いてしまいます。そこでさらに清涼飲料水を摂取し、喉の渇きを感じてさらに飲むという悪循環に陥る可能性があるのです。
編集部
高血糖が続くと、なぜ危険なのでしょうか?
高木さん
高血糖状態が続くと、健康リスクが増加し、最悪の場合深刻な状態も考えておかなければなりません。日常的に清涼飲料水を飲み続けると、糖分過剰摂取となり、高血糖の状態が続きます。高血糖の状態が続くと、インスリンの分泌が減少したり働きも悪くなったりします。体内の糖分をエネルギー源として効率的に利用できなくなるため、代わりにタンパク質や脂肪がエネルギー源として利用されてしまうのです。脂肪がエネルギー源として利用されるときに出る物質が「ケトン体」です。ケトン体が増えると、喉の渇きや倦怠感、吐き気、多量の尿といった症状が出始め、ひどくなると意識がもうろうとしたり、昏睡状態になったりと、危険な状態も考えられます。
配信: Medical DOC