肺がんの原因
肺がんは、肺細胞の遺伝子が傷つけられることで生じます。さまざまな要因があるなか、最もはっきりしているのが喫煙です。ほかに受動喫煙やラドン・石綿・大気汚染・結核など肺の疾患も、肺がんのリスクを高めるといわれています。
ここでは、肺がんの原因と考えられるものについて解説していきます。
喫煙
肺がんの危険因子として最も多いのがタバコで、全体の70%にも及ぶといわれています。タバコには約60種類もの発がん物質が含まれているためです。喫煙により肺や気管支が発がん物質にさらされると、正常な細胞が遺伝子変異を起こします。繰り返し障害を与えられた細胞が、がんになってしまうのです。
喫煙者が肺がんになる可能性は、喫煙を始めた年齢・喫煙期間・1日のタバコの本数・どれだけ深く吸い込んだかによって影響力が変わります。具体的には、1日の喫煙本数×喫煙年数=喫煙指数になりますが、数値600以上の人は肺癌になる危険性が高いので注意が必要です。
肺がんのなかでも、扁平上皮がんや小細胞がんは喫煙との因果関係が深く、タバコを吸わない人はほとんどかからないといわれています。喫煙によって必ず肺がんになるわけではありませんが、肺がんの予防策として最善なのは禁煙することでしょう。
受動喫煙
タバコを吸わない人でも、同じ空間にいる喫煙者の煙(副流煙)を吸い込むことで、肺がんのリスクが高くなるといわれています。受動喫煙、または間接喫煙と呼ばれるものです。
公共の場や職場での受動喫煙を防止するため、日本を含む多くの国で法律や制度が整備されており、受動喫煙対策が取られています。
ラドン
ラドンは、土や岩石の中に自然に存在しているウラニウムから放出されるものです。目には見えない無臭の放射性ガスで、家庭や職場などの室内環境で高濃度の存在が確認される場合もあります。
多量のラドンを吸い込むことで肺細胞に障害を及ぼし、肺がんになる可能性がありますが、ラドンと喫煙の相乗効果により喫煙者の方がリスクは高くなります。
石綿
現在は完全に使用禁止となっている石綿(アスベスト)ですが、かつては建築材料や断熱材として使用されていました。これに長期間さらされることで肺がんのリスクが高まるといわれています。
石綿の繊維は簡単に粒子に分解する傾向があり、衣服に付くことで粒子が吸入されると、肺に留まり細胞に障害を与えて肺がんの危険性を生むのです。したがって特定の職種では、肺がんのリスクを高める物質に日常的に触れていた可能性があります。
ばく露から肺がんを発症するまでには、30~40年の潜伏期間があるといわれています。
大気汚染
WHO 国際がん研究機関は、学術論文(5大陸の1,000以上の研究)を精査した結果、「大気汚染が肺がんの原因とするのに十分な証拠がある」と結論づけています。
大気汚染物質のひとつであるPM2,5(微小粒子状物質)も、小さな粒子のため肺の奥深くまで入りやすく、肺がんへの影響が懸念されています。
結核など肺の疾患
肺炎や結核などの疾患を持っていると、肺がんに罹患する可能性が高いといわれています。肺の疾患で炎症を繰り返したり、結核で肺に傷がついたりすると、そこから肺がんが発生する場合もあるのです。
慢性的な肺疾患を持つ患者さんは、がん予防のためにも定期的に健康診断を受けるようにしましょう。
肺がんの症状は?
肺がんは症状が出にくいため、早期発見が難しい病気です。主な症状としては、咳や痰がありますが、風邪の症状と似ているため、気に止めない人が多いかもしれません。
その他の症状として、血痰・胸の痛み・腕の痛み・顔の腫れ・倦怠感・体重減少などがありますが、現れ方は肺がんの種類や発生部位・進行度合いによって異なります。
長引く咳
肺がんの初期に現れる症状として、長引く咳があります。単なる風邪だろうと見逃されがちですが、1週間しても改善しない咳が続くときは医療機関を受診しましょう。肺がんが気管支や肺を刺激している可能性があるからです。
特に、喫煙者や長期の受動喫煙者は要注意です。
血痰
気道の内側や付近に腫瘍ができると、気道が刺激されて傷つき、出血する場合があります。その血液が痰に混じり、咳によって排出されるのが血痰です。
喘息やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)でも血痰が出ることがありますが、長引く咳や息苦しさ・胸の痛みがある場合は医療機関で検査しましょう。
肺炎・気管支炎
肺がんは肺炎や気管支炎を起こしやすいといわれています。肺がんが気管支にできると、その部分がふさがれて閉塞性肺炎(へいそくせいはいえん)を起こしてしまうのです。肺炎または気管支炎だと思っていたら、実は肺がんだったということもあるので注意しましょう。
呼吸困難
肺がんが原因で気管支が閉塞されたり、胸水がたまって肺が小さくなるなどの機能障害を起こしたりすると、呼吸困難を起こします。運動や階段の昇り降りで呼吸が苦しくなる場合は、早めの受診が必要です。
配信: Medical DOC