●「未熟児」から「低出生体重児」へ
かつては37週未満で2500gより軽く生まれた赤ちゃんは、体の機能が未熟であることからまとめて「未熟児」と呼ばれていた。だが現在、医療現場では小さく生まれた赤ちゃんは「未熟児」ではなく、「低出生体重児」という呼び方をしている。
「“未熟”とは機能的に成熟していないということですが、今の日本では正期産(37~41週)でも出生体重が2500g未満の赤ちゃんが少なくありません。そうなると早産という言葉との線引きが難しくなるため、現在は出生体重で明確に分類されるようになりました」(水野教授 以下同)
出生体重児の赤ちゃんは、生まれたときの体重で次のように分類される。
低出生体重児…2500g未満の赤ちゃん
極低出生体重児…1500g未満の赤ちゃん
超低出生体重児…1000g未満の赤ちゃん
在胎週数が少ないため機能が未熟なまま生まれてくる赤ちゃんもいれば、お腹の中で大きくなれないため在胎期間のわりには未熟な状態で生まれてしまう赤ちゃんもいる。事情はさまざまだが、水野教授は「未熟」という言葉が持つイメージに傷ついてしまう親心にも配慮している。
「“未熟”という言葉がずっと赤ちゃんについてまわるのは、ご両親にとってもつらいことになると思います。ですから、客観的に生まれたときの体重で表す“低出生体重児”という呼び方のほうが、ご両親の心情に寄り添うという意味でもよいのかなと個人的には感じています」
●なぜ小さく生まれる赤ちゃんがいるの?
最近では妊娠中の検査でさまざまなことがわかるようになったため、赤ちゃんが危険な状態になる前に出産させるケースも増えた。だが、わが子が標準よりも小さく生まれた場合、「私のせいかもしれない」と自分を責めてしまうママは少なくないという。
「赤ちゃんが標準より小さく生まれてしまう原因は複雑です。妊娠高血圧症候群や子宮内で炎症が起こる場合など、母体のさまざまな事情で妊娠が続けられなくなる場合はありますが、どれをとってもお母さん自身のせいではありません」
経過は順調でも突然早産になる人もいるなど、個々のケースについては原因不明なこともある。とはいえ、何か少しでも予防できることはないだろうか?
「100%避けることは難しいですが、気をつけていただきたいことがあります。適度に運動する、受動喫煙を含めてたばこの害を避ける、日に当たってビタミンDが不足しないようにする、食生活は青魚を食べてDHAを摂取する、鉄不足にならないようにするなど、できる範囲での健康管理はしっかりと行ってください」
いくらかでも早産リスクを低下させるために、妊娠中の人や次の出産を考えている人は、健康管理にはくれぐれも気をつけて暮らしていこう。
(阿部花恵+ノオト)