肥満症

肥満症

肥満症の治療

肥満症の治療は、以下の内容を組み合わせておこないます。

食事療法

運動療法

行動療法

薬物療法

外科的手術

食事療法や運動療法、行動療法を基本とし、患者の状況に応じて薬物療法や外科的手術を検討します。

肥満症患者で現体重の3%、高度肥満症患者で現体重の5〜10%の減量を目標とする必要があり、一時的な減量ではなく、健康的な生活習慣の獲得と維持が目標です。

食事療法

食事療法では、摂取カロリーを適切に制限しバランスの取れた食事を心がけましょう。

単純に摂取エネルギーを減らすのでなく、糖質は50〜60%、たんぱく質は15〜20%、脂質は20〜25%分を摂取するように調整します。

糖質制限による減量は短期では減量効果がみられますが、長期的にみると大きな差はみられません。

各栄養素をバランスよく摂取することが重要です。

運動療法

運動療法は、糖質や脂質をエネルギーとする有酸素運動が効果的です。

有酸素運動を開始して、20分頃から体脂肪が燃え始めるため、無理なく続けられる運動をおこなうことが大切です。

ウォーキングやサイクリング、エアロビクスダンスなどが有酸素運動にあたります。体力や疾患に応じて、医師と相談しながら適切な運動をおこないましょう。

行動療法

行動療法とは、患者に起きている問題を軽減するために患者本人と医療従事者が協力して、行動を改めるよう支える方法です。

肥満症の治療における行動療法では、まず、日常生活を振り返り、肥満になった問題行動について患者自身が考えます。

その後、肥満になった原因を患者本人がみつけ、自分でフィードバックをおこなって行動を修正するようにサポートしていきます。

具体的には、食事に関する質問票の記入や体重の記録、生活イベントの記録などを細かく実施します。

この方法により、患者自身は自分で行動を変え、生活の質を向上させることが期待できます。

薬物療法

肥満症における薬物療法は、まず一定期間は食事や運動療法といった非薬物療法に取り組み、それでも改善がみられなかった場合に検討します。

ただし、誰しもが薬物療法の対象となるわけではありません。

肥満にともなう健康障害が2つ以上あり、BMIが25以上、内臓脂肪面積が100cm²以上の人が対象となります。ただし現段階で日本で使用が認められている肥満症治療薬の種類は少ないのが現状です。

外科的手術

BMIが35.0を越える高度肥満症の場合、外科的手術による治療が認められています。

日本では18〜65歳で、半年以上の内科的治療によっても改善がみられないというのが条件です。

手術により物理的に胃が小さくなるだけでなく、ホルモン動態にも好影響をおよぼすため、治療による大きな効果が期待できるとされています。

肥満症になりやすい人・予防の方法

肥満症になりやすい人には、以下のような特徴があります。

摂取エネルギーが多すぎる人

運動不足の人

睡眠不足の人

遺伝的要因がある人

高カロリーな食事を好み、糖質や脂肪分の多い食事をする人は肥満症のリスクが高くなります。ストレスによるやけ食いをしてしまう人も、摂取エネルギーが過多になり、肥満症になりやすいといえるでしょう。

運動不足の人も肥満症になりやすい傾向にあり、以前と比べるとデスクワークが増えて、活動量が減少していることも肥満症の一因です。

また、睡眠不足も肥満症になるリスクがあります。

睡眠が不足していると、食欲を抑えるホルモンは減少し、食欲を高めるホルモンの分泌が亢進します。

さらに、親が肥満の場合、子どもも肥満になりやすいため、遺伝的な要因も肥満症になりやすい一因です。

これらをふまえて、予防方法として以下の点を心がけましょう。

バランスのよい食事をしエネルギーの過剰摂取を避ける

運動を習慣付ける

睡眠時間を十分に確保する

ストレスを発散する

定期的に健康診断を受ける

関連する病気糖尿病メタボリックシンドローム脂質異常症高血圧

高尿酸血症

心筋梗塞狭心症脳梗塞脂肪肝

月経異常

不妊

睡眠時無呼吸症候群

変形性関節症

参考文献

厚生労働省「国民健康・栄養調査(令和元年)」

厚生労働省e-ヘルスネット「肥満と健康」

厚生労働省e-ヘルスネット「BMI」

厚生労働省e-ヘルスネット「メタボリックシンドロームの診断基準」

厚生労働省e-ヘルスネット「メタボリックシンドロームを予防する食事・食生活」

厚生労働省e-ヘルスネット「エアロビクス/有酸素性運動」

厚生労働省e-ヘルスネット「睡眠と生活習慣病との深い関係」

一般社団法人日本肥満学会「あなたの肥満、治療が必要な「肥満症」かも!?」

前田法一下村伊一郎日本内科学会雑誌第100巻第4号「肥満症とアディポサイトカイン」

宮崎滋日本内科学会雑誌第107巻第2号「肥満症診療ガイドライン2016」

和田淳日本内科学会雑誌第108巻第3号「肥満症の病態と治療」

萩原謙山下裕玄「肥満症診療ガイドライン2022の要旨と概説」

羽田裕亮山内敏正門脇孝「肥満症の薬物療法」

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