血尿には、痛みが生じるときと生じないときがあります。痛くない血尿が出たら「膀胱がん」の可能性とも言われますが、果たして本当なのでしょうか。「きたじま腎泌尿器科クリニック世田谷烏山院」の北島先生に教えていただきました。
≫【イラスト解説】「膀胱がん」を疑う症状・発症しやすい人の特徴
監修医師:
北島 和樹(きたじま腎泌尿器科クリニック世田谷烏山院)
聖マリアンナ医科大学医学部卒業。聖マリアンナ医科大学大学院医学研究科修了。その後、聖マリアンナ医科大学腎泌尿器外科助教、虎の門病院分院腎センター外科医長、聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院主任医長、北里大学医学部泌尿器科学教室診療講師などを務める。2024年、東京都世田谷区に「きたじま腎泌尿器科クリニック世田谷烏山院」を開院。医学博士。日本泌尿器科学会専門医・指導医、日本臨床腎移植学会専門医、日本ミニマム創泌尿器内視鏡外科学会施設基準医。日本泌尿器内視鏡・ロボティクス学会、日本泌尿器腫瘍学会、腎移植・血管外科研究会、腎癌研究会の各会員。
血尿には痛みがある?
編集部
一般的に、血尿が出るときは痛みがあるのですか?
北島先生
いいえ、必ずしも痛みがあるわけではありません。原因によっては、血尿が出ても痛みがないこともあります。
編集部
痛みを伴う血尿の場合には、どのような疾患が疑われるのですか?
北島先生
例えば、「膀胱炎」や「尿路結石症」が考えられます。膀胱炎は膀胱内で炎症が起こり、膀胱の機能に異常がみられる疾患です。発症原因のほとんどが細菌感染とされており、頻尿や排尿痛、発熱などの症状がみられます。
編集部
尿路結石症についても教えてください。
北島先生
腎臓で尿が作られ、尿道を通って排出されるまでの経路である「尿路」に結石が生じる疾患を尿路結石症と言います。尿の中に含まれるカルシウムやマグネシウム、尿酸などの成分から結石が作られます。突然、背中や脇腹、下腹部にかけて痛みが生じたら尿路結石症が疑われます。また、結石が尿路の粘膜を傷つけることで血尿が出る場合もあります。
編集部
そのほかには、どのような原因が考えられますか?
北島先生
前立腺炎や尿道炎などの尿路感染症が原因となって、痛みが生じているかもしれません。ただし、これらの疾患でも場合によっては血尿が出ないこともあります。そのため、血尿だけで判断するのではなく、ほかの症状も確認しながら受診する必要があるかを考えましょう。
痛みがない血尿とは?
編集部
一方、痛みがない血尿には、どのような原因が考えられるのですか?
北島先生
「膀胱がん」「腎盂尿管がん」「腎臓がん」「前立腺がん」などの悪性腫瘍の可能性があります。
編集部
それぞれ、どのような人がかかりやすい疾患ですか?
北島先生
膀胱がんと腎盂尿管がんは、50歳以上の男性で発症率が高く、特に喫煙者は発症リスクが高くなるとされています。血尿を示すことが多いので、早期発見につながりやすいがんです。しかし、その一方で血尿が自然と治り、ほかの症状がない場合にはそのまま放置されてしまい、発見が遅れることもあるので注意が必要です。
編集部
ほかのがんについても教えてください。
北島先生
腎臓がんは、40代以降の肥満体型、あるいは喫煙習慣のある男性に多くみられるがんで、腎臓の細胞ががん化したものを指します。初期には自覚症状がほとんどなく、進行すると背中や腰の痛み、血尿などの症状がみられます。
編集部
前立腺がんについてはいかがでしょうか?
北島先生
50歳を超えると発症リスクが特に高くなるがんで、前立腺がんも腎臓がん同様、早期では自覚症状がほとんどないため、気づかれにくいことがあります。多くの患者さんは検診や人間ドックの採血検査で、「PSA」の高値を指摘され、受診します。PSAとは、前立腺がんや前立腺肥大、炎症があると高値になるタンパク質分解酵素のことです。そのため、検診や人間ドックを受けなければ見逃すことも少なくありません。
配信: Medical DOC