【リレーエッセイ「ラブレター from 酒場」】好きなチェーン店/スズキナオ

 自分が好きなチェーン店のこと、あれこれ考えてみました。パリッコさんが前回書いていた「サイゼリヤ」は、私も普段からお世話になっております。個人でやっていらっしゃる居酒屋などに飲みに行くと、店の1つ1つに、その店をやっている人の人間性がそのまま反映されている感じがありますよね。どんな料理やお酒をどんな価格帯で提供するかという、そこからして個人の判断ですもんね。私たち居酒屋好きは、お店を通して、そこを切り盛りしている人に会いに行っているという気がします。

 一方のチェーン店は、“人に会いに行く感じ”が希薄というか、むしろ、そういうことを考えずに食事を楽しんだり、時間を過ごしたりできるという点が魅力ですよね。最近、「ジョナサン」で1人で飲んでいて、小説を読んでいたら感極まって目頭が熱くなったことがあったのですが、おじさんが1人で泣いていても、おかわりのチューハイを運んで来るのがロボットだからまったく恥ずかしくないんですよ。そしてそのチューハイが、めっちゃ安いし。

 個人店だと「サラダだけで飲んでいたら申し訳ないよな。やっぱりメインっぽい料理も食べておかねば」とか、そんなことを考えたりするわけですが、チェーン店ならその時の気分に合わせて利用できる。その自由度が好きです。

 なので、いわゆるファストフードとかファミレス、回転寿司とか、鳥貴族みたいなチェーン居酒屋とか、そういう店に行くことも結構あるのですが、最近、私がいいなと思っているチェーン店が“ビアホール”なんです!

「ニュートーキョー」とか「銀座ライオン」とか、あれも一応、チェーン店と呼んでいいですよね? ニュートーキョーも銀座ライオンも私の住む大阪に支店があって、特に最近よく行くんです。なぜなら、生ビールが旨いから!

 ある時、取材で、生ビールのおいしさに力を入れている角打ちに行ったことがありました。その店では、サーバーの洗浄を、細かいパーツまで全部ばらして、1日に2回も行うんだそうです。そこまでしてようやく雑味ゼロのクリアな味わいの生ビールを提供することができるとのこと。いただいた生ビールは、ほとんど水であるかのようにすーっと喉に流れ込んでくるおいしさでした。

 そのおいしい生ビールを飲んでからというもの、私自身が生ビールの味わいに敏感になってしまい、「あっ! ここの生ビールサーバー、ちょっと手入れが甘いな」などと感じるようになったんです。1度気になってしまうと、なかなか満足いく生ビールに出会えず、すっかり瓶ビール派に傾いていた最近なのですが、どうしてもおいしい生ビールを飲みたい欲が消えません。

 そこで思い当たったのがビアホールの存在でした。普段、自分が行くような酒場よりも少し価格帯がリッチで、それゆえにあまり足が向いていなかったのですが、ビアホールというからには当然、ビールがおいしいのです。注ぎ方にもこだわった、クリアな生ビールを確実に飲むことができる。

 で、少し高めな価格帯とはいえ、そこに何時間も居座って飲もうと考えず、キンキンの生ビールを1杯か2杯飲んで帰ろうと思えばそれほどの金額にはなりません。

 そんなわけで私は最近、街に出て喉が渇いたなと思った時は、ふらっと喫茶店にでも寄るかのような感覚で、ビアホール系チェーン店を利用しています。おつまみにはソーセージかザワークラウトが定番。特に私はザワークラウトに目がなく、また、チェーン店によって味わいが全然違うので食べ比べも楽しいんです!

 あー生ビールが飲みたくなってきた。次回のテーマ「夏の酒の楽しみ」でどうでしょう!

スズキナオ:東京生まれ、大阪在住のフリーライター。著書に「遅く起きた日曜日にいつもの自分じゃないほうを選ぶ」「『それから』の大阪」他。最新刊「家から5分の旅館に泊まる」が絶賛発売中。

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アサジョ
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