摂食障害の初期症状と行動パターン、心理的な兆候を医師が解説

摂食障害の初期症状と行動パターン、心理的な兆候を医師が解説

摂食障害は、現代社会における健康問題の一つです。拒食症(神経性無食欲症)と過食症(神経性大食症)、またそれらを繰り返すタイプがあり、食事や体重に対する極端な考え方や行動によって、心身の健康に深刻な影響を及ぼします。そこで摂食障害について、ストレスケア日比谷クリニックの酒井和夫先生に解説してもらいました。

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監修医師:
酒井 和夫(ストレスケア日比谷クリニック)

東京大学文学部、筑波大学医学群医学類を卒業後、長谷川病院を経て平成8年にストレスケア日比谷クリニックを開業。現在に至るまで、院長として精神科の一般臨床に携わる。精神医学、心理学に関する著書も多く、独協大学・筑波大学など、数か所の大学においても非常勤講師として精神保健一般についての講義を行っている。医学博士、日本精神神経学会精神科専門医・指導医、日本医師会認定産業医。

摂食障害ってなに? 精神科医が解説

編集部

摂食障害について教えてください。

酒井先生

摂食障害は、食事や体重、体型に対する極端な考え方や行動が特徴で、拒食症(神経性無食欲症)と過食症(神経性大食症)の2つの主要なタイプと、さらにはこの2つを繰り返すケースなどがあります。これらの障害は、身体的・精神的に深刻な影響を及ぼすことがあり、適切な治療と支援が必要になります。

編集部

摂食障害の初期にはどのような症状があるのですか?

酒井先生

過食・拒食どちらのタイプなのかや個人差もありますが、ごく初期であれば食べ物や体型・体重についての関心が徐々に強くなってくるほか、対人関係の変化、疲労感や睡眠の変化など、一見摂食障害とは無関係のような症状がみられることも多くあります。

編集部

それぞれのタイプの症状や行動パターンも教えてください。

酒井先生

拒食の場合は、急激に食事の量を減らしたり、特定の食べ物を避けたりするほか、食べたあとで過剰に運動しようとしたり、食べたもののカロリーを細かく把握しようとしたり、他人との食事を避けたりするといった傾向があります。加えて、自分の体重や体型に対して過剰な心配や不満を抱いたり、自分の価値を体重や体型に結びつけたりすることなどで、結果的に気分の落ち込みやイライラも増えてきます。さらには、体重が極端に落ちているのに「自分は太っている」と言い張るなどの特徴的な行動がみられるようになります。

編集部

過食の場合はどうですか?

酒井先生

字のごとく食べる量が増えてきます。特に、短期間に大量の食べ物を一気に食べることが増えたり、その後に嘔吐や下剤の使用、過度な運動を行ったりするようになってきます。家族と同居している人は、食べ物を隠しておいて、家族が寝静まるなど、誰にも見られない時間に食べるようになったり、食事時間がまちまちになり、1日に何度も食事をするようになったりします。

どうして摂食障害になるの?

編集部

どうして摂食障害になるのですか?

酒井先生

現時点ではそこがよくわかっていません。摂食障害は、明確に原因を断定できるものではなく、いくつかの要因が複雑に絡み合って発症します。しかし、まず知っておいてもらいたいのは、摂食障害は「ただの大食い」や「極端な少食」とは全く異なる概念だということです。

編集部

いくつかの要因には、例えばどんなものがありますか?

酒井先生

ストレスなどにより、セロトニンやドーパミンなど脳内の神経伝達物質のバランスが崩れることで起こりやすくなります。ほかには、思春期の女性に特に発症しやすいとも言われていますし、遺伝的要因もあるといわれています。とくに、繰り返しダイエットを行うことで、摂食障害の発症リスクは上がると言われています。

編集部

そうなのですね。

酒井先生

はい。さらには、家庭環境や対人関係、社会的なプレッシャーなどがきっかけで発症する方もいます。モデルやバレリーナといった、体型や体重が重要視される職業に就いている方にも見受けられます。

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