フィナステリドは男性型脱毛症(AGA)に対する治療薬として承認された医薬品です。世界で60ヵ国以上で承認され、広く使われています。
AGAの進行を抑え発毛を促す効果が認められたフィナステリドですが、使っても効かない場合があるのも事実です。
この記事では、フィナステリドが効かない原因を解説します。そして、AGA対策とは別の薄毛対応として、治療薬以外の薄毛対処法も紹介するので参考にしてください。
監修
フィナステリドの効果とは?
フィナステリドは男性型脱毛症の原因になるジヒドロテストステロン(DHT)の産生を阻害して、AGAの進行を抑え発毛を促します。AGAはDHTによって髪を作る毛母細胞の働きが抑制され、髪の成長が途中で止められて早期に抜けるためにおこる薄毛です。
通常2~6年続く成長期が数ヵ月~1年に短縮されることで、ヘアサイクルが早くなり髪が抜けやすくなります。このような短い成長期の髪(細く短い)が増えることで、頭皮が徐々に透けるようになるのがAGAです。
原因となるDHTは男性ホルモン(テストステロン)が酵素の5αリダクターゼにより変換されたもので、フィナステリドは5αリダクターゼの作用を阻害してDHTの産生を阻害します。
フィナステリドが効かない原因
フィナステリドの効果には十分なエビデンスがあり、日本皮膚科学会の脱毛症診療ガイドラインでもAGA治療への使用を強く勧められている医薬品です。
そのようなフィナステリドでも効かない場合があります。その原因を6つ紹介しましょう。
治療を開始して間もない
フィナステリドの効果は1ヵ月程度の使用期間では実感できず、6ヵ月はかかります。
フィナステリドの作用は成長期→退行期→休止期→成長期~と続く毛の成長サイクルを正常化するため、効果を実感するには長い時間が必要です。治療を始めて間もない1~2ヵ月で「効かない」と判断するのは早すぎます。
少なくとも半年間服用を継続してから効果の有無を判断しましょう。
フィナステリドに限らずミノキシジルなどでも同様で、AGAの治療薬には即効性はありません。フィナステリドを主成分とする治療薬・プロペシアの添付文書でも、効果を実感するには半年間毎日連続して服用することが推奨されています。
初期脱毛で一時的に毛が抜け落ちている
フィナステリドでAGAの治療を始めて1~2ヵ月経過した時期に、抜け毛が増え始める場合があります。初期脱毛と呼ばれ、一見して薄毛が悪化したように見える現象です。これはフィナステリドによって毛根が活性化し、次の新しい毛を伸ばす準備を始めたためにおこります。
成長が止まっていた古い毛が押し出されるように抜けていき、その後からは新しい毛が生えてきます。つまり、いずれ抜ける毛がフィナステリドにより早めに抜けているだけです。
古い毛が抜けてしまえば自然に止まる現象なので、驚いて治療を止めてはいけません。初期脱毛は悪化ではなく、フィナステリドの効果が出始めたサインと受け取りましょう。
正しく服用していない
フィナステリドの正しい服用方法は、0.2ミリグラムを1日1回毎日連続して6ヵ月以上継続して飲むことです。必要に応じて1ミリグラムまで増量が可能です。これ以外の方法で服用しても、所定の効果は得にくくなります。
フィナステリドの血中濃度は服用後1時間余りでピークになり、その後は徐々に低下して24時間で消失します。また、AGAは治療を止めるとすぐ進行する病気です。
例えば2日に1回の服用では、フィナステリドが体内に存在しない状態が1日おきに発生し、その間効果は望めず薄毛が進行します。また、多く服用すると副作用が出る可能性があり、そうなると治療を中断せざるを得ません。AGAの治療では、正しい服用方法を毎日続けることが何より大切です。
治療の開始が遅い
細胞分裂で毛を作る毛母細胞には寿命があり、成長期から休止期に至る成長サイクルを約20~40回繰り返すと寿命を迎えるとされます。通常では老年期まで維持できますが、AGAでは成長サイクルが数ヵ月~1年に短縮されるため、治療開始が遅れると早いうちに細胞分裂ができなくなる段階に到達してしまいます。
そうなると、フィナステリドで毛根を活性化しようとしても効果はありません。薄毛の兆候に気付いたら、まだ毛母細胞が分裂できるうちに早目に対策を始めることが治療のうえで重要になります。
効果を感じず自己判断で治療を中断した
フィナステリドを服用していて、6ヵ月経たないのに自分の判断でやめてしまう例があります。効果が出ないから効かないと判断して中断すると、その時点で服用前の状態に戻り、すぐに抜け毛が再開します。
フィナステリドにはAGAを根治させる効果はなく、進行を抑えるだけの薬だからです。フィナステリドを飲み始め、効果を実感するためには6ヵ月間は続ける必要があります。効果がなく不安を感じる場合は、効かないと自己判断する前に処方した医師に相談しましょう。
そもそもAGAではない
フィナステリドをきちんと服用していても効果がない場合は、AGA以外の原因による脱毛症の可能性があります。フィナステリドの作用は、酵素の5αリダクターゼに働きかけてDHTを作らせないことです。
それで効果がないのであれば、5αリダクターゼが関係しない脱毛症の疑いが強くなります。例えば免疫系の異常で抜け毛がおこる円形脱毛症・頭皮の過剰な皮脂分泌が原因の粃糠性(ひこうせい)脱毛症・膠原病の一種のエリテマトーデスなどです。
こういった脱毛症はそれぞれに別の原因があるので、5αリダクターゼを阻害するフィナステリドでは効果が望めません。
配信: Medical DOC