乳がんの手術を終えたとき、一区切りついた気持ちになるのと同時に、これからの生活に不安を感じるかもしれません。
日常生活で注意しなければならないことは何かを具体的に知り、見通しを立てておくことで、心の準備をしましょう。
乳がんの手術後は医師の指示にしたがって治療をすすめながら、徐々に日常生活へ戻っていきます。
この記事を読んで注意すべきポイントをおさえることで、少しでも不安を減らして治療に取り組みましょう。
≫「乳がんのセルフチェック法」はご存知ですか?乳がんができやすい部位も解説!
監修医師:
上 昌広(医師)
東京大学医学部卒業。東京大学大学院修了。その後、虎の門病院や国立がん研究センターにて臨床・研究に従事。2010年より東京大学医科学研究所特任教授、2016年より特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所理事長を務める。著書は「復興は現場から動き出す(東洋経済新報社)」「日本の医療格差は9倍医療不足の真実(光文社新書)」「病院は東京から破綻する(朝日新聞出版)」「ヤバい医学部(日本評論社)」「日本のコロナ対策はなぜ迷走するのか(毎日新聞出版)」。
乳がんとは
乳がんとは、乳腺の組織にできるがんです。乳房は乳腺と脂肪組織でできており、乳腺は乳頭から放射状に広がっています。それぞれの乳腺はさらに小葉にわかれ、小葉は乳管でつながれた状態です。
乳がんの90%程は乳腺から、残りは小葉から発生します。乳がんは早期発見で90%が治療できるがんであり、早期発見・早期治療が大変重要です。乳がんは30代〜40代にかけて急増し、ピークは40代後半〜50代といわれます。
代表的な症状は乳房のしこりです。しこりは自分で触って気付く場合もありますが、検診で発見される場合もあるため2年に一度は検診を受けるよう心がけてください。
乳がんのしこり以外の症状には、乳頭や乳輪のただれ・乳房の皮膚や乳房のくぼみやひきつれ・左右の乳房の形が非対称・乳頭から分泌物が出るなどが挙げられます。
授乳中や乳腺症でも似たような症状が出る場合がありますが、自己判断はせず気になる症状があれば受診するようにしてください。
乳がんの手術後に気を付けたい日常生活での注意点
乳がんの手術を終えて日常生活に戻るとき、これまでのような生活を取り戻したいと感じる方は多いです。手術後に自分らしい生活へ戻るなかで、気をつけたいポイントがあります。
ここでは乳がんの手術後に日常生活へ戻る際の注意点を解説するので参考にしてください。
仕事復帰時期は体調・治療を考慮して決定する
仕事復帰時期は、手術の大きさ・仕事内容・術後の補助療法などによって異なります。手術の場合、事務作業であれば術後2週間程度、重労働の場合は術後4週間程度が仕事復帰の目安です。
手術後に化学療法へ進む場合でも、治療期間はおおよそ予測できるため主治医に確認しましょう。
治療中の妊娠は避ける
乳がんの手術後、抗がん剤による化学療法やホルモン療法に進む場合は、治療期間中の妊娠を避ける必要があります。妊娠初期は薬剤に敏感な時期であり、胎児が奇形となるリスクが増すなど胎児に影響を与える可能性が高いためです。
治療が終了すれば妊娠は可能ですが、妊娠のタイミングは主治医とよく相談することが大切です。
バランスのよい食事を心がける
乳がんの手術後は普段と同じ食事をして問題ありません。しかし、肥満は乳がんのリスクとなることがわかっています。再発や新たな乳がんのリスクを下げるために、バランスのよい食事を心がけるようにしましょう。
肥満はリンパ浮腫のリスクも高めます。リンパ浮腫は乳がんの手術後に生じやすい後遺症の一つであり、体重を減らして負担を減らすことで症状が改善しやすくなります。食事内容を工夫して、楽しく食事をしながらバランスのよい食事を心がけましょう。
規則正しい生活を心がける
規則正しい生活を心がけることで、手術後の体の回復を助けて体調を整えましょう。特に大切なのは睡眠と適度な運動です。早寝・早起きを心がけ、不眠が続くようであれば主治医に相談しましょう。
また、適度な運動も大切です。乳がんの治療中や治療後は体を動かす機会が減り、体力が落ちて体重が増える傾向があります。医師の指示にしたがって、筋力トレーニングやウォーキングなどの有酸素運動を行うようにしましょう。
下着は手術後の段階・回復状態に合わせて変える
乳がんの手術後は普段つけていた下着が合わないことがあります。手術後はワイヤーが入った下着や締め付けの強い下着をつけると、痛みやむくみを引き起こすことがあるため注意しましょう。
下着は手術後の状態に合わせて変え、ワイヤーの入っていないタイプや前開きタイプの下着を選ぶようにしてください。また、手術後に乳房の左右差が気になる方はパッドを入れて調節することもできます。
喫煙・過度なアルコール摂取は避ける
喫煙と過度なアルコール摂取は乳がんのリスクを高める可能性があるため避けましょう。
タバコには多くの発がん性物質が含まれ、喫煙している本人以外がタバコの煙にさらされる受動喫煙でもがんのリスクは高まります。
また、アルコールは1日1杯程度であれば問題ありませんが、飲みすぎには注意してください。
配信: Medical DOC