⚫️卑劣な投稿者への対応状況「警察が以前より動いてくれる」
シーズン中は、選手会に届く相談も増えていく。
同じ投稿者が中傷を繰り返す傾向にあることから、削除したとしても解決にはつながらないため、削除依頼は少ない。選手側から求められるのは、投稿者を特定して、二度と誹謗中傷をしないと約束させるなどの対応だ。
発信者情報の開示手続きはコンスタントに進められている。何件も投稿者が特定され、高額な解決金を支払うに至った示談が成立している。
また、損害賠償を求める民事裁判になり、和解したケースや、刑事事件として名誉毀損罪で告訴状が受理されるケースもある。
「アスリートへの誹謗中傷が社会問題になっているとして、警察が以前より対応してくれていると感じます」
一方で、弁護士がほとんどの手続きをするとはいえど、シーズン中の合間に警察から聴取を受けることや、書類確認などの負担があることから、法的措置を取ることに二の足を踏む選手もいる。
根本的には、ネット掲示板やSNSのプラットフォーム側が投稿を削除したり、悪質な投稿者の利用に制限をかけたりする対応が求められるという。
⚫️プロ野球選手を誹謗中傷しているのはどんな人たち?
発信者情報の開示手続きで特定した投稿者は、性別も年代もバラバラだった。
「ファンを自称する投稿者もいますが、名誉毀損や侮辱の投稿をする人はファンではないと常々感じています。どうにかして選手に反応をもらおうとしてやっているような人もいます」
ひいきするチームが負けたりすると、その苛立ちや不満を選手にぶつけるのも動機の一つだ。
「ただ、問題となった投稿の前後の投稿を見ると、プロ野球だけでなく、政治や芸能など、そのときどきで話題なったさまざまなテーマに牙を向けている人も多く、多方面で誹謗中傷している印象です」
対策チームも、どんな投稿が権利侵害と認められるのか知見を深めてきた。
たとえば、先日のパリ五輪でも、敗北した日本代表の選手に「引退しろ」と投稿があり、これが誹謗中傷だと話題になった。
ただし、「引退しろ」という言葉単体で見れば、中傷ではなく「意見」であると判断される可能性が高い。
「ただ、ある言葉が名誉毀損や侮辱にあたるかは、裁判官によっても判断が異なっています。言葉単体で見れば名誉毀損や侮辱にはならないとされる投稿であっても、その前後の投稿と組み合わせて、全体として権利侵害と判断され、開示されることもありえます。
よりよい野球界のために誹謗中傷の問題をどうにかしなければいけないと捉えている選手もいます。そのような強い思いには、われわれ弁護士もチャレンジして応えたいと思っています」
配信: 弁護士ドットコム