ケロイドの治療
ケロイドの治療にはさまざまな方法があり、それぞれの症状にあわせて単独または併用で行われます。
最初に選択される治療法は副腎皮質ステロイドです。外用療法として軟膏を使用するほか、副腎皮質ステロイドを含有するテープ剤を患部に貼付します。ステロイド剤を使用することで、過剰にできたコラーゲンや血管の新生を抑制し、傷本来の治癒を促進させる働きがあります。
病変がひどい患部の場合は、局所注射によって直接ステロイドを注入することもあります。また、内服薬としてトラニラストが用いられることもあります。
他の治療法としては、凍結療法や放射線療法、シリコンジェルシートによる圧迫・固定療法があります。これらの治療法は、ケロイドの症状や患者の状態に応じて適用されます。特にシリコンジェルシートは、圧迫や固定によりケロイドの肥厚を抑える効果があります。
外科手術によるケロイドの切除も有効な治療法の一つですが、手術によって新たな傷が再びケロイドにならないようにする必要があります。
そのため選択される手術方法は、Z形成術やW形成術などの形成外科的手法が中心です。皮膚に対してジグザクに縫うことで、縫った皮膚に対して一方向に力がかからないように工夫された縫合です。ケロイドは皮膚の突っ張りによって発生する確率が高くなるため、こういった手術方法により再発のリスクを最小限に抑えることができます。
ケロイドは、最低でも2年間の経過観察が必要とされています。その理由は再発頻度が高く、定期的な診察を受け、兆候が見られた場合は適切な対応をすることが重要だからです。
ケロイドになりやすい人・予防の方法
ケロイドは遺伝的な体質に関連していると考えられており、家族内で発症が多い家系が存在します。つまり、遺伝的にケロイドができやすい体質が受け継がれることがあるということです。
また、メラニン色素の量とも関連しており、黒人はケロイドができやすく、白人は比較的できにくい傾向があります。メラニン色素が多い肌の人はケロイドのリスクが高いとされています。
さらに、高血圧の人や女性ホルモンの影響を受けやすい人は、ケロイドの症状が悪化しやすいです。特に女性はホルモンバランスの変化によってケロイドのリスクが高まることがあります。
喘息などのアレルギー疾患を持つ人はケロイドが多く発生することがあり、免疫系の異常反応がケロイドの形成に関与しているとされています。
ケロイドは若年層において特に発生しやすいとされています。これは若い人の皮膚は新陳代謝が活発であり、傷の治癒過程で過剰なコラーゲン生成が起こりやすいためです。
傷ができた場合は、その部位のケアを怠らないことがケロイドの予防につながります。適切に止血をしたり、傷をそのまま放置したりしないなどのケアを心がけましょう。
小さな外傷でも同じ患部に刺激が加わったりその上に傷ができてしまうことでケロイド発生のリスクが高くなります。
関連する病気
肥厚性瘢痕
参考文献
日本皮膚科学会ケロイド
日本形成外科学会ケロイド・肥厚性瘢痕
日医大医会誌 土佐眞美子 小川 令ケロイドの病態と治療(2020)
配信: Medical DOC
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