男性不妊の治療
男性不妊の治療は生活習慣を改善させるほか、原因に応じた薬物療法や手術などがおこなわれます。
生活習慣の改善
不妊の原因になる喫煙やアルコールの大量摂取、精子や射精に影響する薬剤を控えます。
精巣を長い時間、高温環境におくと精子の形成率や質が下がるため、サウナや長時間の入浴、膝上でのコンピューターの使用なども避けます。
薬物療法
逆流性射精には抗うつ薬、勃起不全にはPDE-5阻害薬という治療薬を用いる場合があります。
有効性は示されていませんが、精子の数が少なかったり、運動率が低い場合は、漢方やビタミン剤、血流改善薬を投与することがあります。
射精方法の改善
誤ったマスターベーションの習慣によって膣内射精ができない場合は、器具を用いて方法を矯正できるか試します。
改善が難しい場合は、人工授精が必要になる可能性があります。
内分泌療法
脳の視床下部や下垂体の機能不全によって起こる低ゴナドトロピン性性腺機能低下症(精巣の機能不全)に対して、自己注射をおこないます。
hCGやFSHというホルモンを含む薬剤を、腹部や太ももに指定された量と頻度で注射することで、改善が期待できます。
顕微鏡下精索静脈瘤手術
顕微鏡下精索静脈瘤手術は下腹部を切開した後、顕微鏡を用いて瘤の原因となっている静脈を結紮(けっさつ)し、精索静脈瘤の改善を図る手術です。
精索静脈瘤によって精子形成障害があるケースなどでおこなわれます。
精子採取術・顕微授精
手術によって精巣の組織から精子を採取し、顕微授精によって体外受精させる方法です。
さまざまな方法をおこなっても精巣から精子が得られない場合に適応されます。
精路再建手術
精路再建手術は精子の通り道の閉塞部位を取り除いて、精路を再建させる手術です。
精管や精巣上体、射精管などの閉塞部位によって、方法が異なります。
男性不妊になりやすい人・予防の方法
男性不妊になりやすい人は、睾丸(こうがん)の形や固さが特徴的だったり、睾丸のはたらきが落ちる病気にかかった経験があります。
以下の状態に当てはまる人は医療機関に自己申告し、適切な治療や対処法の指示を受けてください。
不規則な食生活や睡眠不足、喫煙、肥満なども精液に影響するため、規則正しい生活や体重コントロールなども心がけましょう。
睾丸に瘤がある人
睾丸に瘤が触れる場合は、精索静脈瘤が起きている可能性があります。
精索静脈瘤では睾丸の温度が低く保てないため、精子をつくる機能が衰えます。
睾丸が陰嚢の上方にある人
睾丸が陰嚢(いんのう)の上方や鼠径部(そけいぶ)に位置しているケース(停留睾丸)でも、睾丸の温度が高くなるため、不妊につながりやすいです。
過去に停留睾丸の手術をした人でも、精液の所見が悪い場合があります。
鼠径ヘルニアの手術をした人
子どもの頃に鼠径ヘルニアの手術をした場合は、不妊につながる可能性があります。
手術をした鼠径管で精子が上手く通れなくなることがあるからです。
おたふく風邪で睾丸が腫れた人
おたふく風邪で睾丸が腫れると、睾丸炎によって精子をつくる力が落ちやすくなります。
副睾丸や前立腺の炎症が起きた経験がある場合も、睾丸のはたらきが悪くなることがあります。
抗がん剤や放射線の治療を受けた人
抗がん剤や放射線の治療を受けた経験がある人も、睾丸の状態が悪くなる可能性があります。
治療が終了した後でも精子が上手くつくれないことがあります。
関連する病気
閉塞性無精子症
両側精管欠損
精巣上体炎
睾丸炎
低ゴナドトロピン性性腺機能低下症
停留睾丸
鼠径ヘルニア
参考文献
一般社団法人日本生殖医学会生殖医療Q&Aよくあるご質問
日本泌尿器科学会パートナーがなかなか妊娠しない
NPO法人男性不妊ドクターズ男性不妊について
配信: Medical DOC
関連記事: