胃ポリープは、胃にできる良性のいぼのような病変です。自覚症状が乏しく、胃カメラや健康診断で発見されることが多いです。多くは良性のため、発見されても経過観察ですみます。
ただし、がん化するケースもあるため、定期的に状態を把握しておく必要があるでしょう。
以下で、胃ポリープががんになる確率や胃カメラ検査の流れ、切除が必要になる大きさなどを紹介しています。知っておくことで、胃ポリープが見つかった際にも慌てずに対応できるでしょう。
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監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。
胃ポリープとは
胃に生じる良性の隆起性病変です。胃粘膜上皮の異常な増殖により、胃の内部にイボができます。高齢者では17%と高い発生率が報告されています。20歳代からみられますが、60歳代の高齢者に多いのが特徴です。
種類
次の3つの種類に分けられます。
胃底腺ポリープ
胃過形成性ポリープ
腺腫性ポリープ
多くみられるのは、胃底腺ポリープと胃過形成性ポリープです。胃底腺ポリープは、以前は家族性大腸腺腫症に随伴する胃の病変と考えられていました。今では、大腸腺腫症以外の人にもみられるようになっています。好発するのは40〜50歳代の女性で、ポリープ自体も8mm程と小さく多発するのが特徴です。
家族性大腸腺腫症は大腸に多くのポリープができ、やがてがん化して大腸がんになる遺伝性の疾患です。
胃底腺ポリープは胃食道逆流の治療薬に使われるプロトンポンプ阻害薬が原因で、ポリープが大きくなったり増大したりするとの報告もあります。ピロリ菌の感染による炎症の影響がない胃粘膜で起きるのと、ポリープの色調が胃粘膜に似ているのも特徴です。
胃過形成性ポリープは胃にできるポリープで頻度が高く、胃の粘膜の過剰な増殖が局所的に生じるポリープです。主にピロリ菌の感染と関連が強く、診断がでた際にはピロリ菌の有無を確認されるでしょう。赤みが強く出るのも特徴です。
ピロリ菌に感染している場合、除菌すると80%程の患者さんでポリープが小さくなったり消えたりします。大きさが10mm以上のものでは1〜3%、20mm以上の大きさでは3〜5%でがんとの併存がみられます。多くが良性ですが、稀にがん化するため、注意が必要です。
腺腫性ポリープは胃腺腫として知られており、萎縮した粘膜でみられます。白くて平坦な隆起が特徴で、胃の上部と中部に発生しやすいです。良性のポリープで、形態の変化が少ないとされています。
症状
胃ポリープは、ほとんど症状が現れないため、胃カメラや造影検査でポリープが見つかる場合も少なくありません。ポリープが大きくなり出血した場合に、動悸やめまいによる貧血症状や通過障害による食欲低下などが生じる場合があります。
胃ポリープががんになる確率
胃ポリープががんになる確率は、胃ポリープのタイプによって異なります。決して高くはありませんが、がんになる可能性があることを知っておきましょう。
胃底腺ポリープの場合
がんになる確率は低いでしょう。胃底腺ポリープは、ピロリ菌に感染していない胃底腺粘膜にできます。そのため、以前は胃底腺ポリープ自体が胃がん発生の低リスク因子と考えられていました。
しかし、近年では、胃底腺ポリープにもがん化を認める報告が出てきています。ある報告では、胃底腺ポリポーシスと呼ばれる家族性大腸腺腫症に合併した胃の病変で、胃底腺ポリープの25%に正常な細胞の形とは異なる細胞異型が伴うとされています。
過形成性ポリープの場合
2.1〜4.8%の確率でがん化するでしょう。20mm以上の大きさになると、4.8〜8.2%とがん化率が高くなるとされています。また、がん化している過形成性ポリープでは、表面が粗い顆粒状・白色粘液・出血・大きさの増大・形態の変化などの特徴がみられます。
腺腫性ポリープの場合
10〜21%とされています。胃腺腫には隆起型と陥凹(かんおう)型があり、がん化しやすさに有意な差はありません。
また、がん化しやすい特徴として、大きさが16mm以上・表面が広範囲に顆粒より大きく隆起・正常な細胞と大きく違う場合などの特徴が挙げられます。
配信: Medical DOC