アンジュ株式会社が運営する住宅型有料老人ホーム「介遊園」に1歩入った瞬間に、他のホームと雰囲気が大きく異なることに気づきます。
スタッフがマスクをしていないのです。
同社では新型コロナウイルス感染症の区分が5類となった2023年5月以降、マスク着用を任意としました。
「もちろん感染症対策は重要です。しかし、マスク着用を義務化していたときでも感染者が出たことを考えると、マスクに過度に依存することに疑問を感じました」と梶原寛子統括マネージャーは理由を語ります。
マスクをしての入浴介助はスタッフの肉体的負担が非常に大きいです。
また、マスクは声が通りにくいため、スタッフ間の指示、スタッフから入居者への声がけが十分に伝わらず、事故が起こる可能性もあります。
そして、顔の半分が見えないスタッフから話しかけられたりすることは、特に認知症の人にとっては不安でしょう。
今では、ホーム内の様子はほぼ100%コロナ前の状況に戻り、レクリエーションなども普通に行われています。
もう1つ目に付くのがスタッフの服装。
一応ユニフォームがありますが、ほとんどのスタッフが私服で勤務しています。服の種類、ネイルやピアス、髪の色などといったお洒落については、入居者の身体を傷づける恐れが無い限り自由です。
「介護職だからと様々な制限を設けることは、職業選択の幅を狭めると考えました。そして、安全上問題がなければ、ネイルやピアスなどの禁止は『見た目が不快』の理由しかありません。外見だけで判断して、介護職としての経験やスキルに優れた人に働いてもらうチャンスを逃すのは勿体ないことです」
こうした「自由さ」は、入居者の生活にも表れています。
同社は現在、大阪市南東部で3棟のホームを運営していますが、そのうち2棟には2人入居が可能な部屋があります。
一般的なホームでは、こうした部屋には「夫婦」「兄弟姉妹」など血縁関係がある人たちしか同居できません。しかし「介遊園」では、友人や恋人など、血縁関係がない人どうしでも同居可能です。
実際に、長いこと同棲生活を送って来た事実婚のカップルが入居したり、それまで別々に住んでいたカップルが入居を期に同居を始めたりというケースがあります。
「一般の賃貸マンションなら、ほとんどの場合そうしたカップルでも入居できます。『要介護になったから一緒に住めない』というのはおかしな話です」と梶本寛子統括マネージャーは語ります。
まだ実例はありませんが、同性カップルの入居も可能です。
2026年4月には生野区で4棟目が開業します。こちらにも2人部屋を設ける計画です。
介護の三ツ星コンシェルジュ
配信: 介護の三ツ星コンシェルジュ