高額のツケで女性客を借金地獄に陥らせる「悪質ホストクラブ」の問題。その対策を検討している警察庁の議論の一端が明らかになった。
警察庁の「悪質ホストクラブ対策検討会」は、悪質ホストの手口を売掛金(ツケ)・立替金が「蓄積」する段階と、それらを「取り立てる」段階に分けて分析。それぞれで現行の風営法が対応できないケースを洗い出して、規制のあり方を模索している。
この検討会は、風営法改正も視野に入れているが、被害者を支援する団体はこぞって法改正の早期実現を望む強い声を上げており、自民党の総裁選後の臨時国会に向けて、警察庁の本気度が問われる状況となっている。(ジャーナリスト・富岡悠希)
●警察庁は「悪質ホストクラブ対策検討会」を立ち上げている
「とにかく(悪質ホストクラブの)被害防止、そして被害者の救済、これに何とか資するように頑張りたい」
立憲民主党の杉尾秀哉参院議員は9月3日、衆院第二議員会館で開いた警察庁のヒアリング冒頭、このように強調した。
同党の国会議員は、9月7日告示・23日投開票の日程でおこなわれる代表選の対応に追われるが、「政策のほうはしっかり進めなければいけない」(杉尾氏)。その思いで、同じく立憲の山井和則衆院議員らとヒアリングの開催にこぎつけた。
警察庁は、女性の人権問題に詳しい弁護士や研究者でつくる「悪質ホストクラブ対策検討会」を立ち上げ、7月31日に初回の会合を開催。9月3日にあった立憲ヒアリングでは、8月30日に開かれた第2回会合の内容を警察庁・風俗環境対策室長らから聴取した。
被害者支援にあたる一般社団法人「青母連」とNPO法人「ぱっぷす」のメンバーも同席。両団体は過去2回の会合に出席して被害実態の報告などをしている。
●ツケが「蓄積」する段階と「取り立てる」段階がある
風俗環境対策室長によると、検討会では、女性客がホストクラブに初回入店して以降、悪質ホストの被害にあう過程を前後半で二分して分析。
前半を売掛金・立替金などが「蓄積」する段階とし、色恋を手段として女性をホストに依存させたり、酒に酔わせて正常な判断ができない状態で女性に高額な遊興・飲食をさせたりするとした。
しかし、現行の風営法が定めているのは、料金表示義務のみで、これらのケースでは規制の対象とならない。準詐欺罪の成立も、飲酒などによる「心神耗弱」に乗じたものでないと認められないという。
後半の売掛金・立替金などの悪質な「取り立て」段階には、悪質ホストが「支払わなければ実家に行く」などと言ったり、支払いのために女性客に売春をそそのかしたりする行為を含めている。
「そそのかし」は、風営法の規制対象外だ。さらに、特定の風俗店への取次ぎ、威迫に至らなければ、職業安定法・売春防止法・ぼったくり防止条例などで検挙することも困難だとした。
このほか風俗環境対策室長は、初回の会合で出た有識者からの意見も紹介した。
「ホストクラブの料金支払いのための売春、人身取引などの犯罪行為の取締りについては、法制度の見直しを待たずともより一層強化すべき」
「ホストの雇用関係を整理し、税法上の義務違反などがあれば厳正に対処すべき」
同時に、ホストが女性客に売春をさせるなどの悪質ホストクラブの「被害実態」も報告した。
2023年1月〜2024年6月までの間、83事件で203人を検挙。内訳は(1)ホスト90人、(2)その他ホストクラブ関係者64人、(3)性風俗店関係者28人、(4)スカウト11人、(5)客引き10人だ。今年6月だけで、7事件・31人も増えており、事態の沈静化にはほど遠いことが裏付けられた。
配信: 弁護士ドットコム