●遺族という言葉が苦手、「二度と会えない気が」
今も「遺族」という言葉が苦手だという。
「家族と言えばまたどこかで会えるかもしれないと思います。でも遺族というと、もう二度と会えない気がするんです」
同じ思いをする人を一人でも減らしたいと、講演や取材の依頼があれば応じるようにしている。
「事件が起きるとどうしてもひとごとだと思われるが、どこにでも起こりうる」
事件が発生した2004年は、まだ殺人にも時効があった。2010年に撤廃されたが、未解決となっている殺人事件はまだ多く残されている。
「未解決事件で一番怖いのは風化です。待っている家族は1年1年と年齢を重ねていきます。未解決事件の被害者家族の団体では高齢の方が多くなっていて、残された時間が限られています。早く解決してほしいと願っています」
●加害者を「思い出したくないのが一番」
2023年12月、犯罪の被害者や遺族が服役中の加害者に心情を伝える「心情等伝達制度」が始まった。だが、忠さんはこの制度を使うつもりはないという。
「(鹿嶋受刑者は)本心をどこにも出していないはず。今さら娘や家族のことを思われても、今さら何? という感じです。思い出したくないというのが一番です」
聡美さんが生きていたら今年で37歳になる。
「柴咲コウに似ていると言われていたので、生きていたらこんな感じになっていたのかなと思うことがあります」
娘の成長した姿を見ることは一生叶わない一方で、無期懲役刑で服役している鹿嶋受刑者には将来、仮釈放という社会復帰の可能性が残されている。このことについて忠さんは強い口調でこう話した。
「世間に出てくるのは絶対に認められません。命があるだけでいいじゃないか。生きていること自体が許すことできないのに、塀の中から出てくるというような考えを持つなよと。裁判の判決で命を守ってもらったなら、生きるのがこんなにつらいのかという毎日を過ごすべきです」
配信: 弁護士ドットコム