『地面師たち』『水ダウ』で怪演の76歳俳優「なりすまし老人役は“まさに今の私”です」借金、大病、独居暮らし…激動人生でも役者を続けるワケ

『地面師たち』『水ダウ』で怪演の76歳俳優「なりすまし老人役は“まさに今の私”です」借金、大病、独居暮らし…激動人生でも役者を続けるワケ

今年7月から配信され、いまだ注目され続けるNetflix『地面師たち』。ツカミとなる第1話で強烈な印象を残した、“なりすまし”役の老人が密かに注目を集めています。一言でも間違えれば犯罪がバレてしまう。そんな重要なシーンで、老人がたどたどしく答えた「ライフの方が安いので」というセリフはSNSで「ハラハラした」「演技がリアルすぎる」と話題になりました。

そんな“なりすまし役の老人”を演じたのは五頭岳夫さん(76歳)。本人はX(旧Twitter)を駆使しており、ファンのツイートにも反応するなど律儀な一面も。劇中とのギャップとも合間って「かわいい」などの反響も呼んでいるようです。


そこで「女子SPA!」は五頭さんを直撃。『地面師たち』撮影当時のお話をはじめ、これまでの役者人生や私生活についても伺いました。

『地面師たち』の老人は「まさに今の私です(笑)」

――『地面師たち』配信以降、五頭さんのXが注目されていますね。76歳でSNSを発信する人は珍しいように思いますが、どんなキッカケで始めたのでしょうか?

五頭岳夫さん(以下、五頭):もともとfacebookはやっていて、知人にXも勧められ2022年の2月から始めました。映像俳優になる前は舞台俳優をしており、その当時から年間チケットを購入して下さるお客様にはお礼状を書いたりなどご挨拶してきたので、SNSはそういう交流の場として捉えています。

あとはね、たまに「闘病中で辛いです」というようなコメントももらったりするので、Xは辛い気持ちを吐露する場でもあるのかな。気持ちの受け皿になれるのならとも思っています。そんな方には「辛いなら逃げてもいいんですよ」という言葉を返しています。


――なんて優しい…。『地面師たち』では五頭さん扮する佐々木老人のセリフ「ライフのほうが安いので」が有名となりましたが、役作りはどのようにされましたか。

五頭:認知症があって借金もある老人ということで……まさに今の私です(笑)。特別な人間ではなくただの老人だと考え、あまり深くは考えませんでした。

――短いシーンながら、ものすごいインパクトでした。

五頭:そう感じてもらえたのなら役者としては本望ですね。「なりすまし」を演じる役なので、手配師の麗子(演・小池栄子)や法律屋の後藤(演・ピエール瀧)に教えてもらったことを返すだけですから、すべて受け身の役なんです。自分としては話すスピードだけを気をつけていました。それが結果、身近にいそうな老人として皆さんの目に留まり、強いインパクトを残したんだと思います。

『水ダウ』無言の老人役は「不気味な仕事でした」

――ピエール瀧さんとは白石和彌監督の映画『凶悪』でもご共演されていますね。

五頭:はい、瀧さんに殴られ生き埋めにされる役でした。なぜか瀧さんにいじめられる役が多いですね(笑)。『凶悪』が白石監督との出会いの作品でもあり、その後、ドラマ『フルーツ宅配便』(テレビ東京系)やAmazon Prime Video『仮面ライダーBLACK SUN』でも使っていただきました。そのまま私で当て書きするかのようにご依頼いただいたのが映画『死刑に至る病』でした。白石監督にはご縁をいただき感謝しております。


――それらの役も『地面師たち』でのブレイクにより再注目されていますよね。中でも『水曜日のダウンタウン』(TBS)で「無言の老人」として登場したシーンも「怖い!」と話題です。

五頭:あれね……。ロケ地のキャンプ場のバンガローで待機しつつ、日没後に落とし穴に落ちてる芸人さんを「とにかく動かず見つめて」と言われて。再現ドラマに出るよりもキツかったです(笑)。だって落とされて可哀想な芸人さんを無表情で見つめ続けるなんて……涙が出ました。私にとってもキツくて不気味な仕事でした(笑)。

――セリフがないのもしんどいですね(笑)。五頭さんは6種類の方言を駆使するそうですが、どのように取得したんですか?

五頭:ほとんどは20代から入って全国巡業していた、劇団時代に演じた様々な役で身につけたものです。幼少期からラジオでよく聞いていた民話の影響もあるかもしれません。民話にはいろんな地域の方言が入っているので。いろんな方言が耳に馴染み深くて、自然と喋れるようになっていきました。

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