大人で「発達障害」が疑われる人の行動・兆候とは? 診断までのプロセスも解説

大人で「発達障害」が疑われる人の行動・兆候とは? 診断までのプロセスも解説

発達障害は、多くの人が気づかないうちに日常生活や職場での困難を引き起こすことがあり、適切な診断とサポートがとても重要です。大人の発達障害は、どのように顕在化し、どのように診断されることが多いのでしょうか? そこで、大人の発達障害にフォーカスし、特徴や兆候、診断プロセスなどについて、ストレスケア日比谷クリニックの酒井和夫先生に教えてもらいました。

≫ 【イラスト解説】うつ症状だと思っていたら発達障害!? では、うつ病の人に現れる特徴とは?

監修医師:
酒井 和夫(ストレスケア日比谷クリニック)

東京大学文学部、筑波大学医学群医学類を卒業後、長谷川病院を経て平成8年にストレスケア日比谷クリニックを開業。現在に至るまで、院長として精神科の一般臨床に携わる。精神医学、心理学に関する著書も多く、独協大学・筑波大学など、数か所の大学においても非常勤講師として精神保健一般についての講義を行っている。医学博士、日本精神神経学会精神科専門医・指導医、日本医師会認定産業医。

発達障害って? 精神科医が解説!

編集部

発達障害について教えてください。

酒井先生

発達障害は、脳の発達に関する機能の不具合により、コミュニケーションや行動、学習などに影響を及ぼす一連の障害の総称です。ここ20~25年で急増しており、メディアでの影響もあって「ひょっとして自分(あるいは自分の配偶者や子どもなど)は、発達障害なのではないか?」と思って受診される方も少なくありません。

編集部

どんな症状があるのですか?

酒井先生

いくつかのタイプがあります。例えば、ADHD(注意欠如・多動症)だと不注意や多動性、衝動性がみられ、自閉症スペクトラム障害であればコミュニケーションがうまく取れなかったり、生活に支障をきたしてしまうほどの極端なこだわりをもったりといった症状が見られます。また、これらが組み合わさったケースも非常に多く見られます。

編集部

発達障害は子どもの疾患ではないのですか?

酒井先生

いいえ、子どもだけの疾患ではありません。発達障害は生まれつきのもので、脳の一部の機能に障害があることが原因だと考えられています。3歳ごろには、はっきりと発達障害の特性が出現してきて学校生活などで顕著になるため、子ども特有のものと思われることも多いのですが、子どもの頃には見過ごされ、大人になってから判明するケースも多くあります。

大人の発達障害はどんな時にわかるの?

編集部

「大人になってから判明するケース」とは、例えばどんなケースがありますか?

酒井先生

子どもの頃から、何かしらの困難を抱えていたという人も多いですが、大人になって社会的な要求が増す中で、問題が顕在化することもあるのです。例えば、職場での過剰な忘れ物やミス、注意散漫があったり、計画や時間管理が極端に苦手だったり、同僚や上司とのコミュニケーションに問題があり、誤解や衝突が多かったりといったところから「もしかして……?」と受診されるケースなどです。

編集部

職場で症状が表れる場合が多いのですか?

酒井先生

そうですね。しかし、それだけでなく、家事などが難しく感じて気が付くこともあります。例えば「日常的な家事や自己管理が苦手で、散らかったままの状態が続く」「無計画な買い物が多く、金銭管理ができずに後悔する」といったことです。ほかには、結婚をきっかけに、配偶者とのコミュニケーションがうまく取れないことで、発達障害が判明するということも多く見受けられます。

編集部

そうなのですね。

酒井先生

あとは、適応障害や不安障害、うつ症状などで医療機関を受診した際に発達障害の可能性を指摘されるケースや、学校などで子どもの発達障害を指摘され、診察を重ねるうち、保護者の方にも発達障害があると判明するケースもあります。

関連記事: