「ソナエルJapan杯」で防災を学びJクラブを優勝させよう 元Jリーガー・石川直宏さん①


「能登半島地震復興支援プロジェクト」として、2024年4月5日に被災地である石川県珠洲市を訪問してサッカー教室を行った石川さんら(ⓒJFA)

サッカー×防災の価値を伝えたい

各界で活躍する方々に防災に関する取り組みなどを語っていただく「防災ニッポンボイス」。今シリーズは、元Jリーガーの石川直宏さんです。石川さんは現役引退後の2018年から、FC東京のファンやサポーターたちのコミュニティ作りの旗振り役として活動し、現在はJリーグ選手OB会の副会長を務めているほか、サッカー×防災のイベントに積極的に関わっています。初回は、J1からJ3までの全クラブが、防災の知識習得を通じて勝ち点を競う「ソナエルJapan杯」と、能登半島地震被災地支援の取り組みについて話していただきます。

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「防災模試」を受験するとクラブに勝ち点!

「ソナエルJapan杯」は、もともとヤフーが運営していた「防災模試」をベースに、日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)と、LINEヤフーの共催で2021年にスタートしました。J1からJ3まで全60クラブの対抗戦です。約3週間の期間中、クラブの選手やファン、サポーターたちが、「防災模試」をオンライン受験すると、その得点に応じてクラブに「勝ち点」が入ります。「X」のクラブ指定ポストのリポストを行った場合なども勝ち点が入り、最終的に勝ち点が一番多かったクラブが優勝します。


開催中の「ソナエルJapan杯2024 」防災模試の問題例

「ソナエルJapan杯」でも共に勝利を!

全クラブが同じ条件で戦うので、この季節になると、クラブ、ファン・サポーターが一丸となって「試合ではもちろん、ここでも協力して上を目指すぞ」と、気合を入れるクラブもあります。

このイベントは、防災について楽しく学べて、さらにそれがクラブの勝ち点になるため、みんなで一緒に協力しながら戦っているように感じられます。そのことにより、「他人事」になりやすい防災が「自分ごと」になるよい機会になると考えています。

勝って喜びを分かち合う機会

「防災を学ぶのに、勝ち負けを決めるのはどうなのか」という声もあるかもしれません。ただ、もともとサッカーには勝ち負けがあるし、勝って喜びを分かち合えるという面もある。それが、サッカーを通して防災を学ぶことの一つの価値ではないかと思っています。

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サッカーで大事な「準備と協力」は防災にも通じる

僕は、サッカーで大事なのは、「準備と協力」だと思っていて、それは、「防災」にも通じると考えています。みんなで協力しながら「準備」ができるのはステキなことだと思います。2024年の開催期間は9/12までと残りわずかですが、ぜひ、多くの人に参加してほしいですね。

2024年には、能登半島地震をはじめ、多くの災害が起こりました。

能登半島地震の被災地でサッカー教室

僕は地震から3か月ほど過ぎた4月に、能登半島地震の被災地の一つである珠洲市に行きました。

JFAが、現地の保育園や小中学生向けのサッカー教室を開くのにあたり、日本代表OBとして参加したのです。


能登半島地震の被災地を訪れた石川さん。倒壊した建物がそのままになっている光景に衝撃を受けた

能登の被災地に行ったのは初めてでした。3か月以上が過ぎても、まだ水道が復旧しておらず、僕たちが行った学校は避難所になっていたり、グラウンドに仮設住宅が建っていたりしました。自衛隊がお風呂を設営している所もありましたね。

倒壊したままになっている建物も数多くありました。ほとんど手つかずに見える場所もあり、「ここからどうやって復興していくのか、見えづらいな」と感じました。

楽しそうな子どもたち 喜ぶ大人

そんな中でも、子どもたちはイベントで楽しそうにサッカーに取り組んでいて、それを見た周囲の先生や家族たちが喜んでくれたのも嬉しかったですね。


珠洲市の保育園で行われたサッカー教室。周囲の大人たちも嬉しそうだった(2024年4月5日撮影、ⓒJFA)

被災した人たちが置かれている環境は厳しくて、子どもたちにサッカーを教えても、復興の役には立たないかもしれません。それでも、少なくともサッカーをしているその瞬間は気が紛れるでしょうし、元選手たちが被災地に心を向けていると感じてもらえるだけでも、やる価値はあるのではないでしょうか。もちろん、一度で終わりではなく、継続的に行っていく必要があると思います。

「被災地に意識を向け続ける」のが大事

JFAだけでなく、他にも協働してアクションをしているスポーツ団体がたくさんあります。いろいろな人たちが協力しながら、被災地に意識を向け続けることが大事だと思っています。

(石川直宏さんのシリーズ2回目は、9月11日公開予定です)

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