軽い脳卒中の主な治療法
治療法:軽症の脳梗塞
脳梗塞で後遺症がほとんど残らなかった場合、数日~10日程度で退院のこともあります。また脳梗塞の一歩手前の一過性脳虚血発作(TIA)という状態もあります。一時的な脱力・呂律困難等の症状で、数日のみの入院になることもあります。しかし脳梗塞は一度起こして終わりではなく、再発する危険があります。つまり軽症だからといって全く油断はできず、退院後も外来通院をして、予防治療を続けることが大切です。適切な血栓を溶かす薬(抗血栓薬)を内服し、普段からこまめに水分補給をして脱水を予防する、生活習慣病を避ける生活を心掛ける、といったことも重要です。また心房細動という不整脈や卵円孔開存症という心臓の中の壁(中隔)に穴が開いている病気が原因の場合、循環器内科でカテーテル等の治療を検討する場合もあります。いずれにせよ脳梗塞は再発予防が非常に重要で、しっかり通院することが大切です。
治療法:軽症の脳出血
小さい脳出血で手術の必要がなく、症状も軽い場合は2週間程度で退院できることがあります。脳神経外科や脳神経内科などの科が入院を担当し、脳梗塞と同様、退院後も通院を要します。脳出血の原因が、脳動静脈奇形やもやもや病、海綿状血管腫、脳腫瘍といった特殊な疾患の場合は再出血を予防するための外科治療を検討する場合もありますが、基本的に中高年以降の方の脳出血は高血圧が原因です。そして一度起こされた方は、出血を起こしやすい素因を持っているということであり、血圧のコントロールが悪い場合は再発する危険性があります。従って、退院後も外来通院で、内科治療による血圧のコントロールが必要です。
治療法:軽症のくも膜下出血
くも膜下出血は頭痛のみの軽い症状もありますが、そもそも脳動脈瘤の破裂であれば緊急手術を要し、最低でも3~4週間程度は入院を要します。従って、基本的に発症すると長期入院は覚悟しなければなりません。ごく稀に出血源が特定できないくも膜下出血もありますが、その場合は複数回の検査を行い、再出血の危険性が高くないと判断されれば退院になります。退院後も外来通院をし、頭部MRI等で定期的な経過観察が必要です。というのも、稀ですが治療した脳動脈瘤が再び大きくなる、違う場所に新しい脳動脈瘤ができる、ということもあるからです。
治療後の脳卒中の後遺症
脳卒中は多くの場合、手足の麻痺や嚥下障害、言語障害、高次脳機能障害といった何らかの後遺症を残すため、リハビリによる機能回復が必須です。そしてすぐに自宅退院することが難しいような後遺症ではリハビリ治療に特化した「回復期リハビリ病院」に移動(転院)して、さらに入院を継続します。リハビリ期間は数か月以上かかる可能性もあり、その後も長期で福祉・介護サービスが必要となる場合もあります。またリハビリをすることすらも困難な重度の後遺症の場合、療養できる医療施設に転院して長期入院する場合もあります。ここでは脳卒中の後遺症について詳しく解説します。
麻痺
手足や顔の麻痺が残ると、立てない・歩けない、手の作業ができない、食事や会話がしにくい等、日常生活に様々な支障がでます。つまり脳卒中を起こす前は意識せずできていたことが、できなくなってしまうのです。そのためリハビリには患者さんの生活力や生活環境が重要です。例えば、もともと仕事をしていたのか、どれくらい自分でできていたのか、誰かと同居していたのか、家の環境は段差が多いのか、といった細かなことまで考え、リハビリの目標を設定します。また脳卒中の麻痺の特徴は左右どちらか半身のみに出現するということです。つまり麻痺があるのは利き手なのか、麻痺が残っていない側をうまく使うことはできるか、といった点も重要です。そして完治は難しくても、少なくともリハビリをして筋力を補ったり、使い方を工夫したりすることで、発症前の70%程度くらいまでを目標にして自宅退院できるようリハビリします。また必要に応じて杖や歩行装具や介護サービスの利用等を考え、退院後の生活サポートを検討します。一方、麻痺を放置すると、どんどん動かしづらくなり、固まっていく「拘縮」という状態になる可能性もあります。重度の麻痺はある程度の拘縮が出ることも仕方ないですが、可能な限り退院後もリハビリを続けていくことが重要です。
しびれ
手足や顔面のしびれ、感覚低下といった症状が残る方もいらっしゃいます。これらは感覚障害といいますが、残念ながらリハビリで回復させるということは難しいです。従って、しびれが強い場合は内服を試すこともありますし、感覚が低下している場合は、例えば火傷をしても気が付きにくいといった問題もありますから、日常生活でより注意を払う必要があります。
言語障害、高次脳障害
複数の情報を統合・処理する脳の部分が障害されると、言語障害や高次脳機能障害という後遺症になることもあります。空間認識や言語理解ができず、例えば片側の空間のみを無視してしまう、言葉がうまく理解できない・話せない、書字や計算がうまくできない、といった症状が後遺症となります。また精神症状や認知症につながる場合もあります。言語療法といって言葉や空間認知、情報理解に関するリハビリを行うことで機能の回復を目指します。完治は難しいですが、リハビリを続けて日常生活で後遺症を補うやり方を工夫することで、克服することは可能です。
配信: Medical DOC