若い世代の方たちにとっては、将来自分の骨がもろくなるかも・・・といわれても、ピンとこないでしょう。
ですが、女性はホルモンバランスの変化により急激に骨に変化が訪れてしまうのです。
骨がもろくなる骨粗鬆症、そしてその予防方法とは?
森女性クリニック 院長の森久仁子先生にお話を伺いました。
骨がスカスカ?骨粗鬆症(こつそしょうしょう)とは??
骨粗鬆症とは、骨量(正しくは骨塩量といいます)が減少し、骨組織の骨密度が低下することによって、骨がもろくなり、骨が折れやすくなる状態をいいます。
骨量は骨に含まれるカルシウムやマグネシウムなどのミネラルの量で、骨密度は単位面積当たりの骨量のことです。
骨は、骨芽細胞が新しい骨を作り出す「骨形成」と、破骨細胞が古い骨を吸収する「骨吸収」がバランスよくおこなわれることで、強く健康な状態を保っています。
「骨形成」にはカルシウムと、腸管からのカルシウム吸収を促進するビタミンD、骨代謝を促すビタミンKなどが必要です。
骨量は男女ともに幼少期から増え続け、20~30歳代をピークに自然に減ってきて、特に女性は50歳前後から急激に減少します。
加齢や閉経により、「骨吸収」が「骨形成」を上回り骨密度が低下し、骨粗鬆症が起こります。
骨粗鬆症は、全体の約8割を女性が占めています。
その主な原因は、エストロゲンという女性ホルモンにあります。エストロゲンは破骨細胞による「骨吸収」をおさえる働きをしています。
女性は閉経の前後、特に閉経直後からエストロゲンの量が急激に減少します。
このため閉経により「骨吸収」が「骨形成」を上回り、骨密度が低下し骨粗鬆症になりやすくなるのです。
また、家族に骨粗鬆症にかかった人がいるなどの遺伝的な要因、栄養の不足した極端なダイエット、運動不足、喫煙なども原因に挙げられます。
他の病気や薬剤が原因となるものは、続発性骨粗鬆症に分類されます。
ホルモンの異常をきたす疾患(副甲状腺機能亢進症、クッシング症候群、甲状腺機能亢進症、性腺機能不全など)、栄養障害をきたす疾患(胃切除後、神経性食思不振、吸収不良症候群など)、薬物性(ステロイド薬、ワルファリン、抗痙攣薬、性ホルモンを低下させる薬剤、SSRI,メトトレキサート、ヘパリンなど)、先天性の疾患(骨形成不全症、マルファン症候群)、糖尿病、関節リウマチ、アルコール多飲、慢性腎臓病、慢性閉塞性肺疾患があります。
症状は、初期にはほとんどありませんが、進行すると腰痛や背部痛、場合によっては骨折により身長が低下することがあります。
どんな人が骨粗鬆症になりやすい?
診断には、骨密度測定や骨代謝マーカー検査(尿検査や血液検査)などが行われます。
骨密度測定には複数の方法がありますが、診断にはDEXA法によるX線骨塩量測定装置を用いて、腰椎や大腿骨近位部の骨量を測定するのが望ましいとされています。
骨量が若年者(大体20~44歳くらい)の平均値の70%以下を「骨粗鬆症」と診断しますが、検診では骨量が若年者の平均値の80%未満を「要精検」としています。
骨量が若年者の平均値の80%以上90%未満、90%以上でもリスク因子がある場合を「要指導」としています。
90%以上でリスク因子がない場合を「異常なし」とします。
リスク因子には、加齢・女性・人種・家族歴・遅い初潮・早期閉経・過去の骨折・栄養摂取不足・過度なダイエット・運動不足・日照不足・喫煙・過度な飲酒・多量のコーヒー摂取があります。
悩む女性が多い骨粗鬆症・・・どんなケアで骨を丈夫にできる?
日本の厚生労働省の調査によると、60歳以上の女性の約2割が骨粗鬆症になっているとされており、60歳代から女性の骨粗鬆症有病率は急上昇します。
「要指導」に該当するまだ薬を開始する必要がない女性でも、この状態が進行すると、将来骨粗鬆症を発症する可能性が高くなります。
このため骨量を増やすように、生活習慣を整えることが重要です。
骨量を増やすためには、運動が有効です。
特に、ウォーキング、ジョギングなどの有酸素運動や筋力トレーニング、片足起立などのバランス運動が効果的です。
ウォーキングは週に3回以上を1年間おこなうことで骨密度上昇効果が認められています。
ただし、無理な運動はかえって体に負担をかけることになるので、無理のない範囲で運動をするようにしましょう。
骨を作るためには、カルシウムやビタミンD・K、マグネシウム、ビタミンB6などさまざまな栄養素が必要です。
カルシウムは牛乳やヨーグルト、干しエビ、豆腐、小魚、チーズ、納豆、モロヘイヤなどに多く含まれています。
ビタミンDはメカジキ、しらす干し、煮干し、干ししいたけなどに多く含まれています。
ビタミンDは日光によって皮膚で生成されるので、1日15分程度の日光を浴びるとよいとされています。
食事での摂取が難しい場合は、サプリメントで摂取することも検討しましょう。
喫煙はエストロゲンを抑える作用や、腸管でのカルシウムの吸収を抑える作用、尿への排泄を促す作用があるため、骨粗鬆症のリスクが高まります。
またアルコールを多量に摂取することも、腸管でのカルシウムの吸収を抑える作用、尿への排泄を促す作用があるため、骨粗鬆症のリスクが高まります。
場合によっては薬の服用が必要になることも
食事や運動などの生活習慣の改善と並行して、薬の内服が必要な場合があります。
骨粗鬆症の薬の種類には骨の吸収を抑える「骨吸収抑制剤」、骨の形成を助ける 「骨形成促進剤」、更年期の時期であれば「女性ホルモン製剤」、各種ビタミン剤やカルシウム製剤などがあります。
どんな薬を選んで、いつから薬物療法を始めるかは、 年齢や症状の進み具合によって医師が判断します。
担当医とよく相談しましょう。
骨粗鬆症は、骨折のリスクを高めることから、早期発見・治療が重要です。
エストロゲンが低下する40歳以降は2~3年に1回、更年期以降は1年に1回程度、定期的に骨密度検査を受け、生活習慣の改善などによって骨量をできるだけ維持していくことが、骨粗鬆症を予防することになります。
将来骨粗鬆症にならないために、骨量が最大値になる20歳頃までにしっかり運動し、バランスのよい適切な栄養を摂取することにより、最大骨量(ピークボーンマス)を増やすことが重要です。運動不足や過度なダイエット、偏食でピークボーンマスが低くなる場合もあるため、若いうちから生活習慣を整えましょう。
[執筆者]
森久仁子先生
産婦人科専門医、医学博士
大阪医科大学を卒業後、同大学産婦人科学講座に入局。
同大学産婦人科学講座助教、和歌山労災病院をへて、平成25年和歌山市に森女性クリニックを開院。
プライバシーに配慮したクリニックで、産婦人科としての枠組みだけではなく、女性医療の充実を目指すべく診療を行っている。
森女性クリニック
配信: キレイ研究室
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