犯罪行為の境界線をぼやけさせてしまう
「迷惑行為」もメディアでは頻繁に使われている。2024年2月、北海道釧路市のラーメン店「山岡家釧路町店」で飲料水が入ったピッチャーのふたを舐めるような様子が撮影された動画をSNSに投稿した男が、威力業務妨害の疑いで逮捕された。だがこの事件を報じた各メディアのタイトルには「迷惑行為」という言葉が多く使われていた。
“迷惑系YouTuber”という言葉がある通り、動画撮影・投稿を目的とした犯罪行為は「迷惑行為」と報じられやすい。ただ、「迷惑行為」という言葉が「犯罪になるかもしれない」という判断を曖昧化させ、結果的に“迷惑行為”を助長している可能性もある。
暴力行為を「パワハラ」、性犯罪を「セクハラ」
また、ハラスメント関連の言葉も多い。2024年8月、勤務先の部下に口頭、もしくはLINEのグループ内で「殺すぞ」「子供ひき殺したろか」 などと度々脅迫したとして暴力行為等処罰法違反(常習的脅迫)の疑いで男が逮捕された。この報道では「パワハラ」という言葉がタイトルに使われていた。
他にも、「パワハラ」や「セクハラ」という言葉を使用して、犯罪行為を報じる記事は枚挙にいとまがない。これらの言葉が普及したことにより、ある程度は他者との距離感を重んじる風潮は醸成されたように思う。その一方で、犯罪行為の境界線をぼやかせ、結果的には苦しむ人も新たに生み出していないだろうか。
メディアに限らず、世間では子どもに対する性犯罪を「いたずら」、過去の犯罪行為を「やんちゃ」と表現する人も一定数いる。「ワンタッチ痴漢」をはじめ、こういった犯罪行為をマイルドに表す言葉を見直すことが犯罪抑制につながるのかもしれない。
<文/望月悠木>
【望月悠木】
フリーライター。主に政治経済、社会問題に関する記事の執筆を手がける。今、知るべき情報を多くの人に届けるため、日々活動を続けている。Twitter:@mochizukiyuuki
配信: 女子SPA!
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