久世は今期の経営課題として、第1に物流拠点の拡充を掲げる。物流拠点はコロナ禍を受けて大幅にダウンサイジングしてきた。
外食需要の急回復により、既存拠点だけでは手狭となり、作業環境が悪化していたためだ。久世真也社長が10日、展示会に先立つ記者会見で足元の業績と今後の方針について説明した。今年創立90周年を迎え、100周年に向けた「持続可能な業務用卸」を目指して質的成長に主眼を置く。
2024年度の第1四半期(4~6月期)は売上高170億1,800万円で前年同期比9.9%増、売上総利益38億5,900万円で前年同期比4億300万円増、一方で販管費が34億5,300万円で同4億2,800万円増となり、営業利益は4億2,400万円で前年同期比1.5%減となった。
売上高はコロナ前の水準に回復した。数量の拡大影響が6割、値上げ影響が4割とみている。売上総利益はPBやJFSAの商品の取り扱い拡大によって増加傾向にある一方、販管費が増えている。ベースアップなどによる人件費の上昇や、これまでかなりダウンサイジングしてきた物流費を意図的に上昇させているためだ。「(物流拠点は)かなりダウンサイジングして、倉庫がパンパンな状況がある。そのため大口ユーザーの1つは外部委託で、岩槻(さいたま市)に移管している。この9月からは新設した蓮田DC(さいたま市蓮田区)を本格稼働した」(久世社長)。蓮田DC が加わり、社管理の物流センターは7拠点となった。
なお通期売上高は670億円、営業利益は14億円を見込む。
今後の方向性について、久世社長は「この先の100周年を旗印に『持続可能で質的な成長を果たす』ことを経営テーマに掲げた。量的というよりも、業務精度や働きやすさ、商品1品1品について、質的な成長を果していくことを主眼に、顧客目線・現場目線を今一度徹底しながら、お客様の求めているもの、現場の課題を重視していく」と話した。
重点施策として第1に、物流のキャパシティ拡大を挙げる。新設の蓮田DC は敷地面積約1,450平方メートル(483坪)で3温度帯完備。「大きいセンターではないが、中期的にセンターを確保し、まずは目の前の物流課題を解消したい」(久世社長)とした。
同社の戸田DC は主力拠点の1つだが、外食市場の回復によって手狭になっていた。蓮田DCの開設により北関東エリアの物流の効率化を図る。北関東は中食セントラルキッチンも多く、業容拡大も見込めるという。
第2に新規顧客の獲得。「フードサービス、観光レジャー、中食惣菜プラスCK をテーマにしている。FS のお客様は引き続き強化しながら、観光レジャーや中食惣菜のお客様の新規獲得に取り組む」とした。
第3に競争優位性のある商品の強化。PB 商品の強化がその1つ。今春、業務用にリブランディングした「makeit(メイキット)」も含む。そしてJFSA 商品の関東シェアの拡大。「6年前に加盟してからJFSA 商品のシェアは確実に増えているので、共販メーカーとも協力しながら関東シェアを拡大していきたい」とした。
第4に業務改革とDX の推進。久世社長は「持続可能な業務用卸のオペレーションに変えていく」と述べた。RPA の活用や、スマホで受発注や問合せができるシステム「KUZEX」によるオペレーション変革を推進する。また今般、カスタマーセンター内に欠品に集中対応する機能を設けた。これまで各営業担当者が対応してきたが、これにより業務効率化を図る。
DX について久世社長は「お客様にとって最終的に便利だということが重要。ネット通販などに引けを取らないサービス拡充、利便性向上を図る」とした。今年、業務改革プロジェクトを立ち上げて推進している。
最後に中国事業について。「国分グループ本社と新たな枠組みで協働し、中国市場における日本食の業務用食材卸事業の拡大を加速させていきたい。そのために国分グループ本社に資本の多くを譲渡した。連携して、ともに成長していく」とした。
なお同社では、本社キッチンスタジオをリニューアルした。「30年来使用してきたが、新たなフードコミュニケーションを発信する空間となる。新しい厨房機器、解凍機・凍結機も導入した。情報提供だけでなく、ラボとして活用し、商品の質を高めていきたい」(久世社長)
〈冷食日報2024年9月12日付〉
配信: 食品産業新聞社ニュースWEB