同じ部署の女性に告白も「ごめんなさい」→気まずい空気で業務にも悪影響 配置転換される?

同じ部署の女性に告白も「ごめんなさい」→気まずい空気で業務にも悪影響 配置転換される?

職場の同僚に愛の告白したという20代男性から、「告白失敗した上、業務に支障が出てしまっている」とし、「(相手に)退職されたらどうしよう」と悩んでいるとする相談が弁護士ドットコムに寄せられました。

男性は、入社同期の同僚女性に告白したものの撃沈。2人は少人数の同部署配属ですが、告白後は直接会話をしておらず、メールや他人を介しての意思疎通しかできないなど、業務に支障が出ているそうです。

男性としては、配置転換されることや、自分の告白がきっかけで女性が退職するなど、「告白の責任」を問われる可能性を恐れているようです。

好きな気持ちは止められないものかもしれませんが、告白をきっかけに業務支障が発生した場合、会社側は配置転換などの措置をとることは可能なのでしょうか。また、「告白のせいで辞めざるをえなくなった」などという事態になった場合、女性は告白した人に損害などを請求することはできるのでしょうか。金井英人弁護士に聞きました。

●トラブル対応の配置転換「慎重に手続きを踏む必要がある」

──告白したことがきっかけで所属部署で業務に支障が生じている場合、会社側は配置転換を命じるなどの措置をとることは可能ですか。

まず前提として、告白は業務外のプライベートの領域でのできごとですので、そうした私的なできごとを理由に業務に支障をきたすことは望ましくありません。ですが、いろいろなきっかけで人間関係に亀裂が生じてしまうことはありえます。

会社側としては、従業員の人間関係の悪化が原因で業務に支障が生じている場合に、職場環境の改善や業務の正常な運営のために何らかの措置をとらざるを得ないこともあるでしょう。

そもそも、配置転換命令は会社の人事権に基づいて行使することが認められるものであり、従業員としては職務命令に原則従うべきことになります。

ですが、従業員間のトラブルの場合、命令を受ける側にしてみれば「自分には非がないのに配置転換を命じられた」と感じることがあります。

配置転換命令は、業務上の必要性がなかったり、不当な目的で行使されたり、従業員に著しい不利益が生じる場合などには無効となり得ます。

職場環境改善等の目的であっても、従業員間のトラブルの場合に、双方からの聴き取りが不十分だったり、一方にのみ不公平な配置転換になっていたり、当事者への説明が欠けていたりすると、従業員から命令が無効であるとして争いになる可能性があります。

どのような原因や事情であっても、従業員間のトラブルへの対応として配置転換命令をする場合には、会社は慎重に手続きを踏む必要があるでしょう。

●告白された側の配置転換要求「よほどの事情がないかぎり難しい」

──告白を受けた側が告白者の配置転換を会社側に求めることは可能ですか。

告白を受けて働きにくくなったことを理由に、会社に告白者の配置転換命令の行使を求めることは、業務上の適正の問題やトラブルが原因ではないので、よほどの事情がないかぎり難しいといえます。

会社は、そのような要望を受けた場合には、慎重な調査をして人間関係の調整をはかり、配置転換をすべきかどうか検討することになりますが、一方の要望によって他方を配置転換することは重大な労使間トラブルの原因になりかねません。

──仮に告白がきっかけで女性が退職した場合、告白した男性に慰謝料を求めることなどは可能でしょうか。

通常、告白する側には相手に対する加害の意思はありませんので、それによって告白を受けた側が退職せざるを得ないような状況になったとしても、不法行為が成立する可能性は低く、精神的な損害賠償(慰謝料)を求めることは難しいでしょう。

告白者が意図的に、告白を受けた側が職場で働きにくくなるような方法で告白をしたなどの事情がある場合などには、不法行為にあたる可能性はあります。

誰であっても告白する権利はありますし、失敗してしまうことももちろんあります。告白の当事者も、周囲の人も、それによって人間関係が壊れてしまわないような気配りができるかが大切だと思います。

【取材協力弁護士】
金井 英人(かない・ひでひと)弁護士
愛知県弁護士会所属。労働事件、家事事件、刑事事件など幅広く事件を扱う。現在はブラックバイト対策弁護団あいちに所属し、ワークルール教育や若者を中心とした労働・貧困問題に取り組んでいる。
事務所名:弁護士法人名古屋法律事務所 みどり事務所
事務所URL:http://www.nagoyalaw.com/

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「専門家を、もっと身近に」を掲げる弁護士ドットコムのニュースメディア。時事的な問題の報道のほか、男女トラブル、離婚、仕事、暮らしのトラブルについてわかりやすい弁護士による解説を掲載しています。
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