●裁判所が宿泊費まで支払いを認める可能性も考えられる
——仮に裁判になった場合には、どのように判断されるでしょうか
公演中止が当日となれば、交通費や距離によっては宿泊費が来場者に発生することはほぼ確実です。
仮に、今回の当日キャンセルを受けて、来場者が交通費や宿泊費を求めて裁判を起こした場合、裁判所は公演中止について主催者側の故意や過失の有無や程度について検討し、免責条項は適用せず、主催者側の支払い義務を認めるかどうかを判断すると思われます。
過失というのは、トラブルが十分予見可能であり、かつ、そのトラブルを回避する義務を怠った場合です。天候や出演者の体調不良に伴う中止については基本的にはそもそも予見することは難しいから主催者側の過失は認められないでしょう。
しかし、今回のケースについて、仮に人為的な要素が高く、そして事前準備や対策を怠ったことが原因で公演中止ということになれば、主催者側の過失が認められ、交通費や宿泊費にまで拡大して損害賠償が認められる可能性はありえると思います 。
ただし、逆に損害賠償の範囲が無限定に拡大していくのを防ぐため、民法は、基本的に相当な範囲での損害に賠償義務を限定しています。つまり、公演中止に伴う相当な範囲の諸費用が損害の範囲となり、どこから会場に来たか、どのホテルに宿泊したかの個別的事情によらずに、”だいたいこれくらい”という感じで賠償額が定められると思われます。
しかし、実際、海外から来た場合や高級なホテルに宿泊しているケースもあると思います。この場合には、主催者側がその特別事情を予見できたという場合には損害の範囲に含まれますが、基本的には、予見困難な特別事情として損害として認められるのは難しいと思われます。
配信: 弁護士ドットコム