“元TBSアナ、38歳おひとり様”で地元に出戻った私の後悔「もし戻れたら…」

“元TBSアナ、38歳おひとり様”で地元に出戻った私の後悔「もし戻れたら…」

退社後、初めて自社以外のラジオ番組を聴いてみたら


 ですが、会社を辞めたあと、初めてNHKラジオを聞いたときにやっと気づくことができたんです。それまでの私は自社以外のテレビやラジオを客観的に見たり、聞いたりする余裕すらなかったのですが……。

 その時は『すっぴん!』という番組が放送されていて、アナウンサーの藤井彩子さんが番組に出演されていたのをよく覚えています。肩の力の抜け方といったら……とにかく、面白いことを言ってやろうとか、ここを盛り上げなければいけない!とか、私がずっと仕事で思い続けてきたおかしな邪念のようなものを一切感じさせないお仕事ぶりを発揮されていたのです。

 ただ純粋にアナウンサーとしての仕事を淡々とこなしながらも、ちょっとした言葉の端々からユーモアが垣間見えて、それが非常に心地良いのです。私はそこで初めて、ああ、アナウンサーの仕事ってこれでよかったんだなぁなんて、やっとわかった気がして。

 どうして現役時代にそんなことも気づけなかったんだろうと後悔することもありました。そして今こそ、自分がもしアナウンサーに戻れたら、とてつもなく良い仕事ができる気がする……。そんなふうに厚かましくも思ってしまったり。

 すべては無いものねだりだとわかっています。いざ自分がその環境に置かれれば、もうちょっと休みたいだの、プライベートが充実していなくて疲れているだの言い出すに決まっているのです。状況が変化するたびにさまざまなジレンマが浮かんでくるであろうということは、どの職種も一緒だとはわかっています。

 でも、体を壊したり、東京での20年の生活を手放し北海道に戻ったりと、経験を積んだ私が今思う事は、本当にアナウンサーという仕事は私にとって愛しくてやまないお仕事だったということ。お恥ずかしい限りですが今さら気づいている私。

 一方で退社後の生活もそれは本当に素晴らしいものだったし、どんな経験も私にとってなくてはならないもので、すべてが今の私につながっているということを、当たり前ですが再認識している今日この頃です。

半額のお刺身で漬け丼を


 そうそう。おひとり様の方、1人用のお食事、自炊はどうされていますか?

 新生活を営む故郷北海道は食材が豊富で、最高においしいのは皆さんがご存知の通りですが、ただ、1人分のご飯を作るというのが私は本当に苦手。むしろ自分だけのために料理をしようなんて気がサラサラ起きないのです……。

 最近になって、仕事帰り半額のお刺身を買って漬け丼にして食べるということにはまり始めていますが……自分だけのためにおひたしを作ったりとか、今後もう絶対ないだろうなあ。

 札幌での一からのスタート、さて、さて、これからどうなるか。

<文/アンヌ遙香>

【アンヌ遙香】
元TBSアナウンサー(小林悠名義)1985年、北海道生まれ。お茶の水女子大学大学院修了。2010年、TBSに入社。情報番組『朝ズバッ!』、『報道特集』、『たまむすび』などを担当。2016年退社後、現在は故郷札幌を拠点に、MC、コメンテーター、モデルとして活動中。文筆業にも力を入れている。ポッドキャスト『アンヌ遙香の喫茶ナタリー』を配信中

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