高級レストランで食事ができる子どもが優秀なわけではない
ここで誤解がないように確認をしたいことがあります。それは、高級レストランでおとなしく食事をできる子どもや乳児が優秀であるというわけでは決してないということです。
子どもの個性は多様であり、マナー習得などの成長のスピードも子どもによって異なります。ですから、他の子どもが高級レストランで食事を楽しんでいたとしても、自分の子どもも同様に幸せであるとは限りません。
親の考えや価値観も同じではありませんから、まずは親の希望、子どもの特性や願望などを整理して、自分たちが高級レストランで安心して楽しめるかどうかを店に相談してみるのが賢明です。
先日訪れたイギリスの有名ホテルのティールームには、子ども専用のメニューがあるだけではなく、食事中に楽しめるクイズやゲームブックが用意されていました。
乳児がくつろげるソファ、心地よい音楽、隣席との適度な距離、残った食べ物をテイクアウトに切り替えられるような柔軟対応など、子連れへの対応は一流そのものでした。お客が不安を抱えたまま遠慮をして食事をすることは、真の一流店は望んでいないはずです。
ちなみにロンドンの超人気ステーキ専門店では、子ども専用のサイズやリーズナブルな料金設定が用意されていました。周りを見渡すと、おいしそうな肉料理に親子で熱狂するテーブルがちらほら。そんな光景さえも楽しい雰囲気に変えてしまう店側の対応力には驚きました。
周りの客の立場だったら、どうすべき?
もう一つ考えてみたいのは、自分が親ではなく、周りの客である時です。隣で知らない子連れ親子が騒いでいる状況に遭遇したことをイメージしてみましょう。
そのシーンが不快に感じる場合、過度な我慢をする必要はないと、私は考えます。その状況をすべて改善できるかは店次第にはなりますが、席移動などの相談をすることは決しておかしなことではありません。どの客も平等に食事を楽しむことを望むのは当然です。
ここでも客の多種多様な状況やニーズに対応できるかは、店の対応能力やノウハウで決まります。つまり今回の鳥羽氏の宣言は、子連れではない人々にも大きく関係するテーマですから、あえて公に宣言をするのであれば、店側の具体的な対策は並行して準備し、説明することが、お客の安心や信頼につながるのではないでしょうか。
最後に、どんなレストランであっても、子どもが笑顔で食事を楽しめることは健やかな成長・食育につながります。多くの人々に考えるきっかけを与えてくれたという点で、鳥羽シェフの発信は有意義だったのかもしれません。
<文・撮影/食文化研究家 スギアカツキ>
【スギアカツキ】
食文化研究家、長寿美容食研究家。東京大学農学部卒業後、同大学院医学系研究科に進学。基礎医学、栄養学、発酵学、微生物学などを学ぶ。現在、世界中の食文化を研究しながら、各メディアで活躍している。女子SPA!連載から生まれた海外向け電子書籍『Healthy Japanese Home Cooking』(英語版)好評発売中。著書『やせるパスタ31皿』(日本実業出版社)が発売中。Instagram:@sugiakatsuki/Twitter:@sugiakatsuki12
配信: 女子SPA!
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