●刑務官の視点「無期囚でも特別扱いしない」
期限の定めがない無期懲役という刑罰について、現場の刑務官たちはどう向き合っているのだろうか。
山本さんは「無期を特別扱いすると刑務所が乱れるので、普通の受刑者と同じように扱う」と話す。
ただ刑務所では、社会に戻れるかすらも分からない無期懲役囚に安定した生活を送らせながら罪に向き合わせる必要があり、「やりがいのある仕事を与えることが大切。刑務所の職員の人間力に頼ることになる」と説明する。
10年以上の長期刑の受刑者は問題を起こすと仮釈放が遠のくため、数年で出所できる短期刑の受刑者よりも慎重に行動する人が多いという。
山本さんは「刑務官は犯罪をして刑務所に入ってきた人たちを適法な方法で抑えなければならない。相当な経験が必要です」と話す。
●緊張感に包まれる「無期懲役囚の共犯者」の死刑執行
山本さんによると、無期囚の中には共犯者が死刑判決を受けた者も珍しくなく、刑務所のテレビで共犯者の死刑が執行されたというニュースが流れると、受刑者たちが食事を取る食堂の雰囲気が変わるという。
死刑事件に関わった無期懲役囚は一生仮釈放されることはないだろうという暗黙の了解が塀の中にはあり、周りの受刑者たちがその無期囚の心情を読み取って緊張感に包まれるためだ。
共犯者の死刑執行を知った無期懲役囚が絶望して自殺したり暴れ始めたりしないように、刑務官らはいつもより注意深く本人の様子を観察して対応にあたるという。
配信: 弁護士ドットコム