妻と夫の関係に何が!? 産後クライシス対策【マインドセット編】

妻と夫の関係に何が!? 産後クライシス対策【マインドセット編】

第11回 注目の「妻のお悩み」をまとめてチェック!
出産を機に、良好だった夫婦仲が急に悪化してしまう「産後クライシス」に陥っていませんか? 今回はコミュニケーション方策を考える際に前提となる“男女の違い”について、ポイントを押さえながらとらえましょう。心理カウンセラー、キャリアコンサルタントの筆者が解説します。

男女のコミュニケーションスタイルは違う?

妻と夫の関係に何が!? 産後クライシス対策【マインドセット編】

「おしゃべりするとストレスが発散できる」という女性は多いのではないでしょうか? 女性同士の会話では、言葉に感情をのせて伝えたり、生き生きとした言葉からイメージを膨らませたりすることが、容易に行われている場合が多いといえるでしょう。

一方で男性は、思考を論理的に構築し、人にわかりやすく説明することは比較的容易に行いますが、目的なく自分からどんどん話しかける状況は少ないようにも思われます。

右脳と左脳の働きの違いについて、聞いたことはありませんか? 右脳は「直感」や「イメージ」を、左脳は「言語」や「思考」をつかさどるといわれています。一説によると、女性は左脳と右脳との連携がスムーズで、両方の脳をバランスよく同時に使える傾向が高く、対して男性は左脳が得意な領域をフル活用できるとされているようです。

一方で、たとえ脳機能に男女差があるとしても、そこから「男性脳・女性脳の典型的な行動」といった一般化は無理があるとする説も複数存在します。とはいえ、コミュニケーションにおける男女の特徴は、確かに違いがあるようにも思われます。

アイデンティティの発達では、自己実現において男女に違いがあるといわれています。個人志向性・社会志向性の2軸で考えると、男性は個人志向性の後に社会性志向を、女性は社会志向性の後に個人志向性を強めて発達させる傾向があるとされています。

たとえば一般的に、男性は相手よりも優位に立つことや集団の中での個性に重きをおいて成長し、年を経てからは社会とのつながりにも重点をシフトします。一方で女性は、若いころから周囲との協調性、社会貢献といった周りとのつながりに重きをおいて成長し、年を経て自己実現をはかるといわれています。

このように、自己実現へ向けた成長プロセスに男女の差違があるためか、コミュニケーションで重きを置く内容にも性差があるように感じられます。

たとえば夫は、相手より優位に立つことや自分らしさ、個性を大事にするためか、情報をできるだけ独占し、多くを語りたがらない傾向があるのかもしれません。一方で妻は、良いことはシェアして共感し合い、みんなとできるだけ同じ立場に立って人間関係を深めたい傾向があるともいえるでしょう。

日常生活での夫婦・男女のすれ違いあるある!

妻はただ気持ちを聞いてもらいたいだけなのに、夫は解決策を提案してしまう…といったすれ違いは、よく聞く話のひとつかもしれません。

たとえば、「子供の病気で仕事を休む回数が多いのでは? やる気がないのか? とみんなの前で言われたのよ、あんなパワハラおやじ!」と妻が夫に吐露してきたとき、妻はどんな価値観や気持ちを共感してもらいたいのでしょうか?

病気の子どもを一番に考える価値観を理解してもらいたいこと、仕事にやる気がないわけではないこと、みんなの前で恥をかかされたこと。わかってもらいたかった残念さや悔しさで、腹が立つようななんともいえない気持ちが渦まいているのです。

ここで夫が、妻の気持ちに共感する前に「子どもにもう少し厚着をさせて風邪をひかせないようにしよう」などと先に解決策を提案してきたら、妻的にはアウトなのですよね。

ただ、夫的には大まじめに精一杯考えたアイデアではあるのです。このように、男女のコミュニケーションのタイプが異なることから出来る溝は、日常のやりとりを探すとまだまだあります。

妻と夫の関係に何が!? 産後クライシス対策【マインドセット編】

多くを察して欲しい妻と、言葉通りの行動しかしない夫

男性に多いと思われる<言葉に厳密で理論的にシステマティックに考えるタイプ>は、「ワインを買ってきて」と言われるとその言葉通り、ワインだけを買ってくることが多いでしょう。一方で、女性に多いと思われる<人間関係を深めることに価値観を置くタイプ>は、「ワインを買ってきて」という言葉に「おつまみやデザートなどと一緒にあなたと楽しみたいな」といった言外の意味や背景となる気持ちがあるのかもしれません。

妻は夫がこのような意味や背景を察してくれることを「夫が妻との関係を大事にしている証」と感じます。言葉通りにワインだけ買ってきた夫に、がっかりしたり怒ったりしてしまうのは、女性ならではの状況かもしれません。逆に考えると、女性の習慣が察することとすれば、相手に確認せず一方的な解釈によって腹を立て、悲しんでいる場合があります。

たとえば、妻が夫に「帰りに牛乳を買ってきてくれる」と頼んだら、夫が「えっ」と反応したとしましょう。妻はこれについて、「めんどくさいってことね」「買い物をしているのをご近所さんに見られるのが嫌なのかしら」「私が買い忘れたのをなんで俺がと思っているのね」「重いからダメなのかしら」と思いを巡らせます。

ですが、夫は本当のところ、なぜ「えっ」と言ったのでしょう? 夫とコミュニケーションをとらなくては、その真意はわかりません。妻の憶測で「じゃ、もう買ってこなくていいわ」と会話を終わらせてしまうようなことがないように気をつけましょう。
 
男女で発達の過程などが異なることから、コミュニケーション法もそもそも異なるという前提をマインドセットすることで、2人のすれ違いやこぜりあいは小さく済むかもしれませんね。不和がない、つまり自然でニュートラルである状況は、我慢するストレスや頑張るストレスを増やさないだけでなく、新しい前向きな力を生み出してくれます。

次回は、夫婦のコミュニケーションの土台となる「男女の違いに合わせたわかりやすい伝え方」「相手が言われたい言葉での会話」着目していきます。

妻と夫の関係に何が!? 産後クライシス対策【マインドセット編】

■この記事は編集部&ライターの経験や知識に基づいた情報です。個人によりその効果は異なります。ご自身の責任においてご利用・ご判断ください。

この記事を執筆・監修した人

石橋 麻衣子(筆名:やまもとこも)
<公認心理師・臨床心理士・キャリアコンサルタント> 10代の子の母。一般企業で20年勤務後キャリアチェンジし、現在は公的機関での教育相談、スクールカウンセラー、精神科クリニックで心理検査やカウンセリングに従事しています。自身の心身の状態が子どもや家族の成長にとても大事だと強く実感しています。自分も他人も大事にするコミュニケーションでよりよい関係や笑顔が生まれますように。
<公認心理師・臨床心理士・キャリアコンサルタント> 10代の子の母。一般企業で20年勤務後キャリアチェンジし、現在は公的機関での教育相談、スクールカウンセラー、精神科クリニックで心理検査やカウンセリングに従事しています。自身の心身の状態が子どもや家族の成長にとても大事だと強く実感しています。自分も他人も大事にするコミュニケーションでよりよい関係や笑顔が生まれますように。