菊丸師匠、驚愕のライギョ釣り!
私がこの“アワセなし釣法”を目の当たりにしたのは1度や2度ではない。ラバージグを使って、野池のライギョをふたりで釣った時などは、私が2本釣る間に、菊丸さんは7~8本のライギョを立て続けに釣っていた。その時も、岸に上げたライギョはことごとくラバージグを自分で吐き出した。なんと、菊丸さんは1匹もフッキングさせていなかったのだ。こんなに優しい釣り方が他にあるだろうか?
そして、「ほら、これじゃ、見てみい」と言って、彼が差し出したラバージグを見て、私は戦慄した。なんと、そのラバージグはガビガビに錆びていて、なおかつ針先が折れていたのだ。つまり、バーブレスどころではなく、ポイントレスだった。それは拾ったラバージグだと言っていた。ライギョとバスとでも釣り方・口の硬さなどは異なるが、いずれにせよ、そのテクニックは神の領域だと思う。
その時私は、釣りを終えてから「これを使って下さい!」と言って、デプスのフラットバックジグをひとつプレゼントした。もちろん、針先の鋭い新品だ。その数か月後、久々に菊丸さんにお会いした際「お前にもらったあのラバージグ、もの凄くよく釣れたよ」と言ってくれた。さすがに、フックの折れたラバージグよりはフックのあるラバージグのほうが成績が良かったようで、この時はちょっとホッとした。
菊丸さんも、まったくアワセないわけではない。でも、せいぜいロッドを立ててリールを速く巻く感じ。強くアワセると、バスの口が開いてしまうからだ。とくに重めのジグヘッドの場合、バスが口を開けたまま首を左右に振ると、穴が広がってフックを外されることが多い。そこで、アワセずにファイトすると、バスはワームを逃げようとしている本物のエサだと思い込み、めったなことでは口を開けないのだという。
もし外れても、バスは2度喰いしてきて、さらに硬く口を閉ざす…というのが菊丸理論。信じない人もいるだろうが、目の前で結果を出されている私は、信じるほかない。ただ、自分がその技をマスターするのは、かなり難しいだろう。
誰でも試せる“グリップ叩き”と“ハンチング帽”
また、菊丸さんから“グリップ叩き”という妙技を教わったこともある。ポーズ中のワームにバスがなかなか喰いつかないことがあるが、その時ロッドグリップを叩くと突然バスが喰いついてくるのだ。これは見えバスで何度も試したが、かなり効果的だった。もちろん、ブラインドで釣っていてもこの技は有効。私自身が釣る取材でも、何度この技に助けられたことか…。これは“アワセなし釣法”と違って誰でもできる技なので、「そんなんで釣れるのか?」と思う方もいるかもしれないが、ぜひ試していただきたい。
他にもいろいろあるが、もうひとつ最後に伝えたいのは、彼のトレードマークである“ハンチング帽”だ。菊丸さんは常にハンチング帽をかぶっているし、菊丸一門の弟子たちもハンチング着用で釣りするのが作法となっている。
その理由は「遠投」。ルアーを遠投するには、最適な角度で斜め上方に投げるというのが菊丸さんの理論。菊丸さんによれば、ハンチング帽のつばの下に見える山に目がけてルアーを飛ばすと、ベストな角度で飛んでいくらしい。これが、普通の野球帽的なキャップではつばが大きすぎて、目標が見えないという。
「だからハンチングなんじゃよ!フォッフォッフォ!」
今でも、これを教えてくれた時の笑顔が忘れられない。2年半前、菊丸さんの危篤を知らされたときは香川まで駆け付けたが、コロナが蔓延しているタイミングだったので会うことができなかった。亡くなった後はなかなか行く機会が作れず2年が経過。近々、お墓参りに行きたいと思っている。
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配信: 釣りビジョンマガジン
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