労働基準監督署への通報方法、期待できる労基署の対応やリスクを弁護士が解説

労働基準監督署への通報方法、期待できる労基署の対応やリスクを弁護士が解説

3、通報したら労基署は何をしてくれる?

通報しても、「そうですか」で終わられては勇気を出して通報した通報者はたまりません。

では、一体、労基署は、何をしてくれるのでしょうか。

本項では、この点を明確にしていきます。

(1)違反内容について調査

労働基準監督署は、通報を受けた場合、事業者に労働関連法令に違反する行為があるかどうかを調査することができます。

事業所に直接立ち入ったり、帳簿等の書類を提出させたりすることができます。

調査については「通報があったから」とは言わず、「定期調査のためである」などとして配慮してもらえる場合がありますので、この点も安心です。

(2)違反内容の改善を求める指導

調査した結果、労働基準法違反等の法令違反行為が認められた場合には、まず、違反内容の改善を求める指導を行うことが一般的です。

その後、労基署は、指導後に指導内容について改善されたかどうかの状況確認を行います。

(3)指導に従わないなら是正勧告

指導しても従わない場合には、是正勧告を行います。違反内容が悪質な場合には、指導を省略して直ぐに是正勧告を行うことも可能です。

指導と同じく、是正勧告した後も改善されたかどうかを確認します。

(4)違反内容が悪質な場合には逮捕もあり得る

労働基準監督官は、労働基準法違反の罪について、司法警察官と同じ職務を行うことができます(労働基準法101条、102条)。

調査した結果、違反内容が極めて悪質である場合や、指導、是正勧告に従わない場合には事業主を逮捕することもできます。

また、労働者を就業させる事業の附属寄宿舎が、安全及び衛生に関して定められた基準に反し、且つ労働者に急迫した危険がある場合においては、労働基準監督官は、使用者に対して、その全部又は一部の使用の停止、変更その他必要な事項を命ずることができます(同法103条、96条の3第1項)。このとき、労働基準監督官は、使用者に命じた事項について必要な事項を労働者に命ずることができます(同法103条、96条の3第2項)。

4、まだある!労基署以外の通報(相談)先

本項では、労基署以外の通報(相談)先をみていきます。

事案の内容にしたがって、相談先を検討してください。

(1)労働法関連違反

①総合労働相談コーナー

労働局が設置している相談窓口で、多くは労働基準監督署内に設けられています。労働に関する相談全般を受けてくれます。労働法関連違反について、何か相談事があるならぜひ訪れてみるべきところでしょう。

②労働局の雇用環境・均等部

各都道府県にある労働局の部署です。主にパワハラや解雇、セクハラ、マタハラなどの雇用環境問題について相談に応じてくれます。企業への指導や紛争解決のあっせんなども行ってもらえます。

③法テラス(日本司法支援センター)

国によって設立された法的トラブル解決のための「総合案内所」です。

刑事・民事を問わず、誰もが法的なトラブルの解決に必要な情報やサービスの提供を受けられるようにするという構想で、法務省所管の公的な法人です。電話やメールで適切な相談窓口を無料で案内してくれたり、無料法律相談などを行ってくれたりします。

④かいけつサポート

民事上の紛争を利害関係のない公正中立な第三者が、当事者の言い分を聞いた上で専門家としての知見を活かして柔軟な和解解決を図るもので、構想の下、法務大臣の認証を受けた民間業者が行っています。

日本各地に認証を受けた業者が存在しますので、お近くのところに相談してみるというのも一つの方法です。

(2)公益通報となる法律違反

①行政機関

公益対象事実の内容(事業者の違反行為の内容)によって、様々な行政機関に通報できます。

例えば、

衛生に関する法令違反なら保健所
消費者保護に関する法令違反なら消費者庁
談合などの公正取引に関する法令違反なら公正取引委員会

等があります。

どの行政機関に通報すればよいか分からない場合には、まずは弁護士に相談し、事業者(会社)の行為がどの法律に違反するのか、どこに通報するのが最も適切かをみてもらいましょう。

②会社内の内部通報窓口

事業者(会社)によって、公益通報者保護法に基づいて社内の人事部等に内部通報窓口を設けている場合があります。自分が労務提供している会社が内部通報窓口を設けているか確認してみましょう。

内部通報窓口を設けている場合、公益通報者保護法により保護されますので、減給、降格等の不利益取扱いを受けることはありません。

内部通報の場合、行政機関への通報と異なり、通報対象事実が生じるか、またはまさに生じようとしていると思料する場合に保護されます(公益通報者保護法3条1号)。つまり、行政機関への通報の場合に必要とされる通報対象事実が生じるか、生じようとしていると信じるについて相当な理由があるとき(公益通報者保護法3条2号)よりも緩やかな条件で保護されることになります。

これは、内部通報と行政機関への通報とを比較して、行政機関への通報の方が企業にとっても損害が大きいため、行政機関への通報をより慎重に行うべきという考えによるものです。

ですので、会社内に内部通報窓口がある場合には、まず、内部通報を検討するのが賢明です。

③外部通報

マスコミ等、報道機関への通報も考えられます。報道機関には取材源秘匿の自由が保障されていますので、あなたが通報したことが会社側に知られるリスクは極めて少ないと言えます。

ただし、外部通報の場合は、通報対象事実が生じるか、まさに生じようとしていると信じるに足りる相当な理由に加えて、公益通報すれば証拠が隠滅されたり偽造されたりするおそれがある場合など、内部通報、行政機関への通報と比較してより厳しい要件を満たさないと保護されません(公益通報者保護法3条3号)ので、内部通報、行政機関への通報を先に検討した方が良いと言えます。

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