裁判離婚とは、離婚協議や離婚調停でも話がまとまらない場合に離婚裁判(訴訟)を提起し、判決または和解によって成立する離婚のことをいいます。
今回は、
離婚裁判の手続きの流れ
離婚裁判にかかる費用と期間
離婚裁判に勝つ方法
等について解説します。
1、裁判離婚とは?
裁判離婚とは、冒頭でもご説明したように、離婚裁判(訴訟)によって成立する離婚のことです。
まずは、裁判離婚が具体的にどのようなものであるのかについてご説明します。
(1)協議離婚と裁判離婚の違い
裁判離婚と対照的な言葉として「協議離婚」というものがあります。協議離婚とは、夫婦間の話し合い(離婚協議)によって成立する離婚のことです。
それに対して、裁判手続きを経て成立するのが裁判離婚ですが、他にも次のような言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。
調停離婚
審判離婚
調停離婚とは、家庭裁判所の離婚調停で夫婦が合意することによって成立する離婚のことで、審判離婚は家庭裁判所が下す審判によって成立する離婚のことです。
この2つも家庭裁判所の手続きを経るものなので、広い意味では裁判離婚に含まれますが、一般的に「裁判離婚」という場合は、離婚裁判(訴訟)を経て成立する離婚のことを指します。
本記事ではこれ以降、一般的な呼び方に従って、離婚裁判(訴訟)を経た離婚のことのみを「裁判離婚」と呼びます。
(2)裁判離婚にも3種類の形がある
裁判離婚もさらに細かく分けると、次の3種類の形があります。
判決による離婚
和解離婚
認諾離婚
判決による離婚は、離婚裁判(訴訟)で原告(離婚を求める側)の勝訴判決によって成立する離婚です。
しかし、離婚裁判でも審理の途中で話し合いが行われ、和解が成立することもよくあります。裁判上の和解によって成立する離婚のことを和解離婚といいます。
認諾離婚というのは、離婚裁判(訴訟)が始まった後に被告(離婚を求められた側)が原告の言い分を全面的に認めることによって成立する離婚のことです。
認諾離婚が成立するケースは少ないですが、被告が争いを避けるなどの目的で原告の請求を認諾することもあります。
和解離婚と認諾離婚の違いは、裁判上の話し合いが行われたかどうかです。
離婚条件について双方が譲歩し合って一定の内容で合意できた場合が「和解離婚」、話し合いは行われず、被告が全面的に折れる形で成立するのが「認諾離婚」です。
(3)裁判離婚ができる条件
裁判離婚は、いつでも自由にできるわけではありません。離婚裁判(訴訟)を起こすためには、次の2つの条件があります。
①先に離婚調停を行っていること
日本の法律では、離婚裁判(訴訟)を起こす前に、必ず離婚調停を行わなければならないこととされています。
この原則のことを「調停前置主義」といいます。
離婚のような家庭の問題については、強制的な裁判手続きを行う前に、まずは離婚調停で話し合うべきものと考えられているのです。
②法定離婚事由があること
離婚裁判をするには、法定離婚事由が必要となります。
法定離婚事由とは、裁判で離婚が認められる条件として法律で定められた事情のことです。
具体的には、民法第770条1項で以下の5つの事由が定められています。
相手に不貞行為(不倫行為)があったこと
相手による悪意の遺棄があったこと
相手の生死が3年以上不明であること
相手が強度の精神病にかかって回復の見込みがないこと
その他、婚姻の継続が困難な重大な事由があること
2、離婚裁判で争われる内容は?
離婚裁判で争われる内容は、第一に「離婚するかどうか」という点です。
離婚が認められる場合には、離婚に関する諸条件についても争えます。
離婚を求める側は、離婚裁判を起こす際に、離婚が認められることを前提として、希望する離婚条件も具体的に訴状に記載して主張することになります。
以下で、それぞれについて概要をご説明します。
(1)離婚するかどうか
被告が離婚に反対する場合、原告は先ほどご説明した「法定離婚事由」を主張し、その根拠となる事実を証明できる証拠も提出する必要があります。
証拠によって法定離婚事由の存在を証明できた場合、離婚が認められます。
もっとも、被告が離婚することについては争わず、離婚条件についてのみ争うという場合は、法定離婚事由に関する証拠は不要です。
(2)慰謝料
被告に法定離婚事由がある場合は、慰謝料の請求も可能です。
ただし、被告が争う場合には慰謝料の根拠となる事実を証明できる証拠の提出が必要です。
また、原告がどの程度の精神的苦痛を受けたのかという点についても証拠によって証明しなければなりません。
これらの証明が不十分な場合は慰謝料が認められないか、認められても少額にとどまる可能性があります。
なお、離婚裁判では、離婚原因ごとに慰謝料の相場がおおむね決まっています。
たとえば、不倫や浮気で離婚する場合の慰謝料の相場は、数十万円~300万円程度です。
(3)財産分与
財産分与についても離婚裁判で争えますが、財産分与の割合については、よほど特別な事情がない限り2分の1ずつと判断されるケースがほとんどです。
そのため、多くの場合は事前に財産調査を行って夫婦共有財産を漏れなくピックアップすることと、自分の財産については特有財産を主張することがポイントとなります。
(4)親権
子どもの親権については、離婚原因がどちらにあるかにかかわらず、子どもにとってどちらに育てられるのが望ましいかという観点から判断されます。
そのため、たとえ母親に離婚原因があったとしても、母親が親権を獲得するケースが大半です。
少しで親権を獲得する可能性を高めるためには、子どもに対して深い愛情を注いでいることや、養育環境が整っていること、子育てに時間を割くことが可能であることなどをしっかりと主張・立証していく必要があります。
なお、おおむね15歳以上の子どもの場合は、子ども自身の意思も尊重されます。
(5)面会交流
親権者の指定と併せて、面会交流についても離婚裁判の判決や和解で取り決めることができます。
もし取り決めなかった場合、面会交流を求めるには別途、協議や調停・審判を行う必要があります。
どうしても親権を獲得できない場合は、離婚裁判において面会交流権の獲得を目指しましょう。
(6)養育費
一方、親権を獲得する側は、養育費も離婚裁判の中で請求できます。
金額については、和解協議で合意が可能な場合は自由に取り決めることができますが、判決が言い渡される場合には裁判所の「養育費算定表」に従って計算されます。
養育費算定表では子どもの年齢や人数と両親それぞれの年収に応じて金額が定められていますので、離婚裁判の中で自分と相手方の収入を証明できる証拠を提出する必要があります。
(7)婚姻費用
別居後、離婚成立までにかかる生活費(婚姻費用)の支払いについては、離婚裁判ではなく、話し合いや調停・審判によって別途、取り決める必要があります。
ただし、すでに取り決めた婚姻費用が支払われていない場合は、離婚裁判において過去の婚姻費用の支払いを請求できる場合もあります。
もっとも、判例上は未払いの婚姻費用の支払いがストレートに命じられるわけではなく、財産分与の手続きの中で清算すべきこととされています(最高裁判所昭和53年11月14日判決 民集32巻8号1529頁)。
したがって、過去の婚姻費用を請求する場合には、併せて財産分与の請求をする必要があります。
配信: LEGAL MALL