3、裁判離婚のメリットとデメリット
離婚裁判は夫婦関係に決着をつけるための最終手段ですが、裁判離婚には協議離婚や調停離婚にはないメリットとデメリットがあります。
以下で、裁判離婚ならではのメリット・デメリットをそれぞれ具体的にご説明します。
(1)メリット
まず、裁判離婚のメリットとして次の2点が挙げられます。
①相手が拒否していても裁判で認められれば離婚できる
裁判離婚の最大の特徴は、民法770条1項の法定離婚事由に当てはまるケースであれば、たとえ相手が拒否していても離婚を成立させることができるというところです。
協議離婚・調停離婚が相手との合意を得るための方法であるのに対して、裁判離婚では相手の意思に関係なく強制的な離婚が可能となります。
逆に言うと、法定離婚事由に当てはまらないケースでは、裁判に進んでも離婚が認められないことがあります。
また、これらの離婚事由を作った側からの離婚請求は基本的に認められないため、注意しましょう。
②客観的事実や証拠に基づいた判断が下される
裁判離婚の決め手となる離婚事由があるかどうか、裁判官が判断するための手がかりとなるのは客観的な事実とそれを裏づける証拠です。
夫婦間の話し合いではつい感情に流されてしまうこともあるかと思いますが、裁判離婚ではそういった感情を一旦脇へ置いておくことができます。
離婚したいという主張を行い、その主張を基礎付ける事実を立証できれば離婚が認められるので、確実な証拠を掴んでさえいれば裁判に進むメリットは大きいでしょう。
(2)デメリット
一方、裁判離婚には次のようなデメリットもあります。
メリットと照らし合わせた上で、自分にとって裁判離婚を選ぶのがベストなのかそうでないのかはじっくり検討しておきましょう。
②費用と時間がかかる
裁判になると、弁護士へ依頼するための費用が必要です。
裁判で離婚を勝ち取ることができれば、財産分与や相手からの慰謝料でその費用も相殺することができますが、万が一負けてしまった場合は結果的に大きな負担となります。
時間的にも場合によっては1~2年ほどの長い戦いとなることを覚悟する必要があり、その間は生活面でも精神面でも落ち着かない日々を過ごすことになるでしょう。
実際の平均審理期間や裁判にかかる費用については後ほど詳しくご紹介しますので、そちらもぜひ参考にしてください。
②判決に従わなければならない
裁判の判決には強制力があり、良くも悪くも必ず従わなければなりません。
請求通りの慰謝料や養育費が認められた場合はその権利が保証されるため安心することができますが、もし相手にとって有利な条件での離婚が成立してしまったら、結果的に悔しい思いをすることになる可能性もゼロではないのです。
また、みなさんが判決内容を守らなかった場合は、相手から法的な措置を取られる可能性もあります。
裁判に臨む前には、あらかじめ自分の望み通りの判決が得られなかったパターン=最悪のケースもしっかり想定しておきましょう。
4、離婚裁判の流れ
では、いよいよ離婚裁判はどのように進められるのか、手続きの流れをみていきましょう。
(1)離婚調停における注意点
先ほどもご説明したとおり、離婚裁判を起こす前には必ず離婚調停を行っていなければなりません。
ですが、どうしても離婚したい場合や、できる限り早く離婚したい場合で、裁判を見据えているのなら、離婚調停にはあまり時間をかけず早々に切り上げた方がよいこともあります。
離婚調停は調停委員を介した話し合いの手続きですので、相手方から離婚を求められても応じたくない場合や、離婚条件について丁寧にすり合わせたい場合には、じっくりと時間をかけて話し合うことが得策です。
それに対して、離婚したいという固い決意がある場合には、早めに話し合いを打ち切って離婚裁判に進んだ方が結果的に早く離婚できる場合が多いといえます。
(2)事前に準備すべきこと
離婚裁判を起こすためには、以下の書類を準備する必要があります。
訴状
夫婦関係調整事件不成立調書
夫婦の戸籍謄本
離婚裁判の訴状を作成するには、離婚調停の申立書に比較してより高度な法律的知識が要求されます。
弁護士に依頼すれば訴状の作成を任せることができますが、弁護士に依頼しない場合にはご自身で作成しなければなりません。
そこで、作成する際に参考となるよう、以下にて裁判所の雛形と記載例をダウンロードできるようにしました。
ご自身で作成される際はこちらをご参考下さい。
離婚裁判の訴状の書式ダウンロード
離婚裁判の訴状の記載例
(3)訴えの提起
裁判を起こすことを専門的な表現でいうと、「訴えの提起」といいます。
離婚裁判の訴えを提起するには、上記の必要書類に後ほどご説明する費用を添えて、家庭裁判所へ提出します。
提出先の家庭裁判所は、夫または妻の住所地を管轄する家庭裁判所です。
離婚調停を行った家庭裁判所へ提出すれば間違いありません。
あるいは、どこの家庭裁判所で裁判するかについて夫婦で合意している場合には、その裁判所へ提出することもできます。
(4)口頭弁論
裁判所で訴状が受理されると、おおむね1か月半~2か月ほど先の日にちに「第1回口頭弁論期日」が指定されます。
通常は第1回口頭弁論期日よりも前に被告(相手方)から答弁書や証拠が提出されます。
そして、期日においては裁判官の前でお互いが訴状と答弁書を陳述し、証拠が裁判官によって取り調べられます。
それから裁判官の主導で双方の主張が食い違う点が整理され、今後のお互いの主張・立証の方針などを話し合い、続行期日が指定されます。
以降、おおむね月に1回程度のペースで口頭弁論期日(または弁論準備手続き期日)が設けられ、双方が主張や証拠を出し合って争点を煮詰めていきます。
争点が煮詰まった時点で、裁判官はどちらが有利かについてある程度の心証を持っていますから、証拠調べに進む前に和解を勧められることもあります。
この段階で裁判官から心証を開示された上で話し合い、和解が成立するケースも多いです。
(5)証拠調べ(尋問)
和解が成立しない場合は、裁判官が絞り込んだ争点について最終的な心証を得るために「証拠調べ期日」が設けられ、証人や原告・被告に対する本人尋問が行われます。
証人とは、争点に関連する事実を知っている第三者のことです。
配偶者の不倫による離婚裁判であれば、不倫相手は証人という立場になります。
その他にも、原告・被告はそれぞれ、自分に有利な事実を知っている第三者の証人尋問を行うことを裁判所に申請できます。
尋問の順序は特に決まっていませんが、最初に証人尋問が行われ、その後に本人尋問が行われるのが一般的です。
本人尋問では、被告の尋問が先に行われるケースが比較的多いです。
尋問のやり方は、弁護士や裁判官が質問を行い、証人や本人は聞かれたことに対して知っている内容を回答する形で行われます。
たとえば自分に対する尋問の場合は、まず自分が依頼した弁護士から打ち合わせどおりの質問が行われ、次に相手方または相手方が依頼した弁護士からも質問されます。その後に裁判官からも質問があります。
なお、尋問の前に証人や本人は「知っていることを隠さず正直に話します」という誓約書に記名・捺印し、法廷で読み上げることになります。そのため、尋問当日は印鑑(認印可)を持参しましょう。
(6)裁判の終了
証拠調べ(尋問)が終わった段階で、裁判官はその事件について、ほぼ心証を固めています。
そこで、再び裁判官から原告・被告に対して和解を勧めてくることがあります。
民事裁判の約7割は、ここまでの段階で和解が成立して終了します。
和解が終了しない場合は、基本的に審理は終了し、判決言い渡し期日が指定されます。
もっとも、原告・被告が希望する場合は最終的な主張を提出するための口頭弁論期日が指定されることもあります。
その際、新たな証拠を提出することも認められますが、それ以前に提出できたはずだと裁判官に判断されると受け付けられない可能性もあります。
なお、判決書は裁判所から原告・被告に対して郵送されますので、判決言い渡し期日に出廷する必要はありません。
判決内容に納得できない場合は、判決書を受け取ってから2週間以内に控訴をして、再度の審理を求めることができます。
控訴をせずに2週間が経過すると判決が確定し、離婚裁判は終了します。
配信: LEGAL MALL