パワハラで訴えられたらどうすればいい?!弁護士が対処法を教えます

パワハラで訴えられたらどうすればいい?!弁護士が対処法を教えます

3、パワハラを会社に訴えられた!担当部署からの事情聴取への対応

パワハラ被害にあったと労働者から会社に訴えがあれば、パワハラを受けたと申告した人だけではなく、パワハラを行ったとされた人に対しても人事部などの担当部署からヒアリングの機会が設けられるでしょう。

その際の注意事項を整理しておきます。

(1)一般的に、会社は先に被害者の話を聞いている

厚生労働省のパンフレット「事業主の皆様へNoパワハラ」で、会社がパワハラについて相談を受けた場合の対応の流れが解説されています。

通常は、パワハラを受けたと申告した人からのヒアリングが先に行われ、様々な事実関係を整理してから、パワハラを行ったとされる人へのヒアリングが行われるでしょう。

このような場合、会社の人事担当者が、パワハラを受けたと申告した人の言い分を聞いただけで、パワハラを行ったとされる人に悪い印象を抱くことがあるかもしれません。

また、パワハラを行ったとされる人への処分をさっさと済ませて解決しようといった対応をとられることがあるかもしれません。

そのため、以下でご説明するように、パワハラを行ったとして訴えられた場合には、慎重かつ冷静な対応が必要です。

(2)事実を正確に話す

パワハラを行ったとされて事情聴取をされた場合も、焦らず、自身が把握している事実を正確に話しましょう。また、わからないこと、曖昧なことは、「わかりません。」「はっきりと覚えていません。」などと正直に話しましょう。事情聴取がされることがあらかじめわかっている場合には、そのときの状況、実際の言動等をできる限り整理しておきましょう。

後で記録や資料などを調べて回答したいということがあるなら、その旨もはっきりと伝えると良いでしょう。

パワハラの事実があったかどうかは、社内的には人事担当者などが判断することになりますが、そのための十分な情報提供は、当事者が行う必要があります。

(3)事実の根拠をはっきり確認する

ヒアリングの際に指摘された事実に思い当たることがないなら、その旨はっきり主張すべきです。

また、パワハラを受けたと申告した人が具体的にどのような事実があったと申告しているのかを確認してください。

さらに、何か客観的な証拠があるのかどうか、第三者(例えば同じチームの仲間・部下)のヒアリングもされているのか、といったことも確認した方が良いでしょう。

(4)都合の良いストーリーを作らない

事情聴取を受けた際には、自身を守るため、自分に都合の良いストーリーを作り上げてしまうこともあるかもしれません。

しかし、話をとりつくろって綺麗なストーリーを作り上げようとしても、ヒアリングをする人事担当者の信頼を失うだけです。とにかく事実だけを話す、事実だけを確認するという姿勢で臨むべきです。

(5)被害者をおとしめる発言は避ける

パワハラを受けたと申告した人が自身の認識と異なることを申告していたとしても、非難することは避け、感情的にならずに、実際にはどうだったかということを事実として淡々と正確に伝えましょう。

パワハラを受けたと申告した人を誹謗中傷したと思われるような言動は絶対に避けるべきです。

(6)自分の言動の根拠をしっかりと主張する 

仮に自身の言動が適切だったと思っているのなら、なぜそのような言動をしたのかをしっかり主張しましょう。

その際、「業務上必要だった」と主張するなら、人事担当者としては「なぜ必要だったのか」「他の方法がなかったのか」「たとえ必要だったとしても、行き過ぎではなかったのか。」等と聞いてくるでしょう。

不本意な処分などを避けるためには、そのような問いかけに的確に答えられるかどうかが重要です。

(7)自分に非があるならば、素直に認める真摯さを

自分にも非があると思い当たる節があるなら、素直に認めましょう。

たとえ相手にも非があるとしても、真摯な反省の態度はあなたに有利に働くでしょう。

4、パワハラにより発生する3つの責任 

相手にわずかな不快感を与えた程度のことなら、非を認めて謝れば厳しい処分には至らないでしょう。しかし、被害の程度次第では、懲戒処分や民事上・刑事上の責任を問われることがあります。

(1)就業規則上の処分

まず、人事上の措置として、異動などが行われることがあります。すなわちパワハラを行った人とパワハラをされた人を切り離すというものです。パワハラへの対応としてはよく行われます。

さらに、パワハラを行った人に対して、懲戒処分がされることがあります。懲戒処分は、人事上の措置とあわせて行われることもあります。

懲戒処分は、軽いものから概ね次のようになっています。

①戒告・譴責:労働者の将来を戒めるものです。譴責は始末書提出を求められます。

②減給

③出勤停止

④降格

⑤諭旨解雇

⑥懲戒解雇

被害の程度が重ければ重いほど、重い処分がされやすくなります。

(2)民事責任 

不法行為(民法第709条)に基づく損害賠償責任が生じる可能性があります。数十万円から100万円を超えることもあります。

パワハラを受けた人が精神疾患を発症して働けなくなったり、自殺に至った場合など、重大な被害をもたらした場合には、さらに大きな賠償額が認定される可能性もあります。

(3)刑事責任 

「傷害」「暴行」「脅迫」「強要」「名誉毀損」「侮辱」などの犯罪に該当する可能性があります。

問題の行為がこれらの犯罪に該当し、刑事罰が科される場合、上記の損害賠償とは別に、罰金刑が科されたり、懲役刑が科されて刑務所に入らなければならないこともあります。

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