●親がレールを敷くのは中学生まで
「中学までは義務教育なので、親が手を差し伸べていいと思いますが、子どもが見事高校に合格したら、あとはもう子どもの人生で、自分で考えて進んでいけばいいんじゃないかなと思います。もちろん突き放すことはせず、子どもから求められたらアドバイスはしますが、大学を親が決める必要はないと考えます。相談されたら、人生の先輩として選択肢は与えますが、“この大学がいい”などの具体的なアドバイスは、わが家ではしていません。今時は、就職セミナーに親が参加することもあるようですが、私のなかではありえませんね。親の洗脳が許されるのは、せいぜい中学生くらいまでじゃないでしょうか」(小成氏 以下同)
そもそも中学生にもなると、思春期を迎えた子どもたちは反抗期に突入。よほど従順な子でない限り、親の言うことを聞かなくなるのが世の常。今でこそ「お母さんに感謝している」と語る小成家の息子たちにも、手ごわい反抗期があったそうだ。
「もう大変でしたよ。長男は、理論武装派。毎日帰ってきては、私に命題をくれるわけです。“学校でこんなことがあったんだけどどう思う?”と。疲れている時に、ちょっとでも適当に答えると“昨日お母さんが言った論点はこうだけど、今日は論点にずれが生じている”と責められたり…。頭にきて、お風呂でシャワーヘッドを叩きつけて壊したこともありました(笑)。次男はモノに八つ当たりするタイプの反抗期だったので、よく床や壁を蹴飛ばしていましたね。ある時カーテンがちぎれて、いまだにわが家のカーテンはそのまま。今や次男の勲章です(笑)。そんななかでも極力冷静に、“これも正常で必要な成長過程なんだ!”と自分に言い聞かせて、何とか乗り越えました」
●子どもが信頼する“外の大人”と交流を!
親の言うことをまったく聞かなくなった子どもたちに、小成さんが行った施策とは…?
「中学校に上がってからは、なかなか親の言うことを聞かなくなるので、その時その時の状況に応じて、彼らが素直に意見を聞くような“外の大人”と交流を持つことを心がけました。例えば塾の先生など、子どもたちが信頼するような大人を側に置くことが、反抗期の子どもを持つ親に唯一できることなのかなと思います。親が“この人は素晴らしい!”と思ったら、積極的にアプローチして人間関係を築き上げ、困った時には、“子どもたちにアドバイスして頂けませんか?”と助けを求める。大きな決断は子どもたち任せてきましたが、あまりに危うい時は、時に遠隔操作も必要だと思います」
親がレールを敷くのは中学までと語る小成さんだが、社会人になった長男に、ひとつだけアドバイスしたことがあるという。
「大学時代、スペイン語と中国語を学んだ長男は、現在グローバルな企業で働いていますが、“入ったからには3年頑張りなさい”と言い続けていました。私自身20年近く人材の採用と新人教育をしてきて実感していることですが、最初の会社で3年勤めれば根性が身につきますし、概ね、転職時の心象も良くなります。仕事に100%いいことなんかない。大変なことや苦しいことを乗り越えて、3年働き続けられる人は、その先いろいろな山を乗り越えていけるはずです」
東大に合格することや医学部に合格することをゴールにせず、伸び伸びと自由に自分の道を選ばせてきた小成さんだからこそ、見えるものがある。わが子を一向に手放さず、いつまでもレールを敷き続けていると、やがては子どものためにならないということを、親はしっかりと認識していなければならない。
(取材・文/蓮池由美子)