5、アスベスト関連疾病を発症したときに受けられる補償とは?
アスベスト関連疾病を発症したときには、公的制度を利用して補償を受けたり、損害賠償請求によって金銭賠償を受けたりする方法が考えられます。具体的には以下のような手段があります。
(1)労災保険給付
アスベスト関連業務に従事している際にアスベストにばく露した結果として、アスベスト関連疾病を発症した場合は、労働基準監督署長に申請して労災保険給付を受けることが考えられます。
労働者本人が既に亡くなられている場合でも、遺族補償給付や特別遺族給付金が受けられる可能性があります。
(2)石綿救済法
労災保険の特別加入者でない一人親方など、アスベスト関連疾病(良性石綿胸水を除く)を発症したにもかかわらず労災保険給付による補償を受けられないアスベストばく露者は、「石綿による健康被害の救済に関する法律(石綿救済法)」によって補償が受けられる可能性があります。
(3)建設アスベスト給付金制度
業務中のアスベストのばく露態様は、大きく2種類に分けられます。一つは工場でアスベスト製品の製造等を行う際にばく露する「工場型」、もう一つは建設現場等でアスベストを取り扱う作業の際にばく露する「建設型」です。
このうち後者の「建設型」に当てはまる方は、令和4年1月19日に施行された「特定石綿被害建設業務労働者等に対する給付金等の支給に関する法律」によって補償を受けられる可能性があります。
これは、建設作業中にばく露したアスベストによってアスベスト関連疾病を発症したと厚生労働省に請求をして認定を受けることで、給付金を受け取れる制度です。
(4)国家賠償請求
(3)で説明した業務中のアスベストのばく露態様のうち、「工場型」については法律で
給付金制度が現状設けられていないため、国に対して国家賠償請求訴訟を提起することで直接補償を求めることになります。
訴訟と聞くと大げさに考えてしまいますが、工場型のアスベストばく露については、アスベスト被害にあわれた方々が原告となって戦った結果、平成26年に国の責任を認める最高裁判決が出ており、それに基づく和解基準が設けられています。
そのため、基準を満たしていれば必要な証拠資料を揃えて、和解により賠償金を受け取れることが見込まれます。
(5)その他の民事上の請求
上記以外に、アスベストに関わる業務の使用者・アスベスト含有の建材メーカーなどに対して民事上の損害賠償請求をすることも可能です。
ただし、使用者・建材メーカーが現存していない場合や、分からない場合は訴訟を提起して損害賠償を求めるのは難しいですし、仮に提起できたとしても、裁判ではアスベスト被害者側で業務とアスベスト関連疾病の発症との因果関係等について主張立証をする必要があるため、満足のゆく訴訟活動を展開するのは簡単ではないでしょう。
6、アスベストを吸ったことで不安があるときは弁護士へ相談を
すでにアスベスト関連疾病を発症している人、過去の仕事中にアスベストを吸ったおそれがある人など、アスベストが原因で健康被害・不安を抱えているときには、弁護士に相談することをおすすめします。
アスベスト関連事案の実績豊富な弁護士に相談することで、次のようなメリットがあります。
労災保険給付の申請手続きや石綿救済法に基づく補償制度などの申請手続きを代行してくれる
事業者やメーカーなどに対する損害賠償請求を進めてくれる
アスベストによって生じる健康被害リスクや日常生活の不安へのアドバイスが期待できる
石綿救済法に基づく補償制度やアスベスト被害の損害賠償請求については、相談料・調査料・着手金などの負担なく受任してくれる弁護士事務所がある
配信: LEGAL MALL