遺言書をパソコンで作成できる?知っておくべき5つのこと

遺言書をパソコンで作成できる?知っておくべき5つのこと

最近は遺言書を作成する方が増えてきましたが、手書きで遺言書を書くのが面倒だと感じる方も多いことでしょう。

パソコンで遺言書を作成することができれば便利ですし、気軽に取りかかることもでき。

そこで今回は、

パソコンで遺言書を作成することはできるのか
遺言書の作成にパソコンを利用するときの注意点とは
正しく遺言書を作成するためにはどうすればいいのか

といった内容をご紹介します。

パソコンを利用して遺言書を作成したいとお考えの方のご参考になれば幸いです。

遺言書の書き方について知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

1、遺言書ってパソコンで作っていいの?

そもそも、遺言書はパソコンで作ってもいいのでしょうか。

遺言書には

自筆証書遺言
秘密証書遺言
公正証書遺言

の3種類がありますが、まずは最も作成する人が多い自筆証書遺言についてみていきましょう。

(1)従来は遺言書全体についてパソコンでの作成は禁止

自筆証書遺言とは、自身で作成する遺言書のことです。

従来は、自筆証書遺言を作成するには遺言書全体について自分で手書きする必要があり、パソコンの利用は一切認められていませんでした。

一文字でもパソコンで作成した部分があると、遺言書全体が無効とされていたのです。

(2)2019年1月からは財産目録の作成はパソコンでもOKに

しかし、相続法の改正によって、2019年1月13日からは、自筆証書遺言に添付する財産目録については、パソコンでの作成も認められるようになりました。

民法第968条 

第1項

自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。

第2項

前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第九百九十七条第一項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。

引用元:民法

ただし、

現在でも本文は自筆しなければなりません
パソコンで作成した財産目録には署名押印が必要

これらに注意が必要です。

(3)法務局での保管もできるようになった

上記の改正に加えて、2020年7月10日からは自筆証書遺言を法務局で保管できるようになりました。

それまでは自筆証書遺言は自分で保管するしかありませんでした。そのため、紛失や相続人による破棄・隠匿・改ざんなどのおそれがあり、相続開始後に相続人に見つけてもらえないケースもありました。

この制度を使い、法務局で遺言書を保管してもらえればこれらのリスクはありませんし、相続開始後に相続人が法務局で確認すれば遺言書の存在と内容を確認できますので、遺言内容を確実に相続人に伝えることもできます。

法改正によって自筆証書遺言を活用することが容易になりましたので、ぜひ遺言書を正しく作成し適切に保管して活用しましょう。

2、パソコンで財産目録を作る方法

(1)財産目録とは

財産目録とは、遺産分割の対象となる財産を表形式でまとめて記載したものです。

遺言書の本文の中に財産を全て書いてもかまいませんが、財産の項目が多い場合は財産目録にまとめて記載した方がわかりやすく、遺言書の見た目もきれいになります。

本文には「別紙財産目録1に記載の財産をAに相続させる」というように簡潔に記載し、本文の後ろに財産目録を添付します。

(2)財産目録に書くべき財産

被相続人が所有するもので財産的価値があるものは、全て財産目録に書きましょう。

書き漏らした財産があっても遺言書が無効になるわけではありませんが、遺言書に記載のない財産については相続人全員が遺産分割協議を行って遺産分割しなければなりません。

相続人の負担を減らし、紛争を回避するために遺言書を作成される場合も多いですが、財産の漏れがあるとかえって相続人間のトラブルを招いてしまう原因ともなり得ますので注意しなければなりません。

また、財産目録の作成に当たっては、借金などのマイナスの財産も記載しましょう。マイナスの財産を隠していたり、どうしてほしいのかを書いていなかったりすると相続人が困ることになります。

(3)財産目録の書き方

財産目録の書き方に決まりはありません。遺産分割の対象となる財産を種類別にわかりやすく書けば足ります。

様式を気にするよりは、内容を正確に書くことが重要です。曖昧な書き方をしてしまうと、財産目録に記載されたものと実際にあるものとの同一性が確認できなかったりして特定が困難になる場合があります。

登記事項証明書や通帳
取引報告書
保険証券
車検証
契約書

などを参照して、そこに記載されているとおりに正確に記載しましょう。

一例として財産目録の記載例を掲げておきますので、参考にしてください。


(4)訂正する方法

パソコンで財産目録を作成した場合にも、誤植や誤字・脱字が発生することはあります。

間違いに気付いたらパソコンで訂正の上でプリントアウトし直すとよいですが、プリントアウトした財産目録を直接訂正することもできます。

その場合は訂正したいところに

二重線等を引いてその上に押印
その箇所の上下や横などの余白に正しい内容を記載
その上で、欄外の余白に「〇行目〇字削除〇字追加」などと自筆して押印します

この方法を守らないと訂正の効力が認められないので、ご注意ください。

(5)署名押印する

パソコンで作成した財産目録には、署名押印することが必要です。

記載する財産が多いときは目録が複数枚になると思いますが、各ページごとに署名押印しなければならないので注意が必要です。

(6)遺言書本文に添付する

財産目録を遺言書本文に添付する方法については、特に決まりはありません。バラバラにならないように遺言書本文と一緒に保管しておけば、有効なものとして認められます。

ただし、散逸や改ざんを防止するためには、ホチキスなどで綴じた上で各ページに契印しておくことが望ましいでしょう。

なお、自筆した遺言書本文とパソコンで作成した財産目録は別の用紙でなければなりません。パソコンで作成した財産目録を印刷した紙の余白に遺言書本文を書いたり、自筆した遺言書の余白に財産目録を印刷したりしないよう注意しましょう。

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