●維持管理が大変なGPS
GPSは、アメリカが軍事用に打ち上げた30基の人工衛星が始まり。そこから送られてくる情報を元に、現在位置を割り出しています。この30基の人工衛星は、それぞれ異なる軌道で地球全体を回っており、常に世界中のどこでも人工衛星からの電波が受信できるようになっているということ。そのため、現在は世界のどこにいても、携帯電話から自分の位置がわかるんです。
しかし、GPSの運用コストは高く、人工衛星の寿命はたったの10年。壊れるたびに新たな物を打ち上げる必要があります。さらに、たくさんの人工衛星を常に維持・管理し続けなければいけないことから、実質アメリカだけがGPSシステムを運用している状態が長く続いていました。
●日本が抱えるGPSの問題点
人工衛星から送られてくる情報には、実は誤差があります。そのため、GPSは常に4機以上の人工衛星からデータを受信し、それぞれの誤差を計算して正確な位置を割り出す仕組みとなっているのです。受信できる衛星の数が多ければ多いほど、誤差修正に必要なデータが多くなり、位置の精度が高くなるという仕組み。
ところが日本は平地が少なく山が多いため、真上近くにある衛星からの電波は受信しやすいのですが、横に近くなればなるほど受信するのが難しいという地理的特徴があるのです。また、数少ない平地でも高層ビルなどが建ち並び、受信できる衛星の数も少ないことから、日本はGPS誤差が大きいことを我慢するしか無い状況が続いていました。
●日本版GPSを実現する「みちびき」
とはいえ、こうしたGPSの問題も、今までの人工衛星の使われ方ではあまり問題視されていませんでした。しかし、近年のAIの発達などで、自動運転車など高い精度の位置情報が必要とされてきたため、人工衛星「みちびき」を4機打ち上げる計画が立ち上がったというわけです。みちびきは日本上空に長時間滞在する特殊な軌道で飛ぶように設計されており、4機のどれかが常に日本上空にいることで、GPSの精度を上げることが目的とされています。
これにより、自動車であれば車線単位での認識が可能になり、トラクターでは植えた稲の隙間を、稲を踏まないように自動で走らせるといった、これまででは難しかった精度での自動運転などが可能になる見通しです。
今までは、場所を知る手段にとどまることが多かったGPS。日本での人工衛星が運用されることで、多くの交通手段や工業・農業の自動化が期待されています。全てが自動で動く未来も、そう遠くないかも?
(文・姉崎マリオ)