「私は懲戒処分になるのでしょうか」。このような相談が弁護士ドットコムに寄せられています。
相談者は、私生活で窃盗事件を起こして逮捕、罪を認めて釈放されました。会社から「懲罰委員会にかける」として、就業規則に基づき自宅待機命令が出されたと言います。また会社からは「温情として懲戒解雇ではなく、自主退社をしたらどうか」と、もちかけられたそうです。
しかし相談者は、「窃盗事件では懲戒解雇にできないはずだ」と考えており、就業の継続を希望しています。また「会社から就業規則に基づく自宅待機の場合、無給だと言われましたが、納得がいかない」とも吐露しました。
裁判はまだ始まっておらず、罪は確定していませんが、従業員が私生活で逮捕されたり、有罪判決が確定したりした場合、会社はどのような処分を下すことができるのでしょうか。村松由紀子弁護士に聞きました。
●懲戒解雇の有効性を判断する要素とは
——相談者は窃盗について罪を認めています。このような場合、懲戒解雇となる可能性はあるのでしょうか
多くの会社の就業規則には、従業員の私生活上の非行を理由に懲戒処分をするとの規定があります。
ただ、就業規則に規定があればどのような処分でもできるわけではなく、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」は、権利の濫用として無効になります。
犯罪行為があった場合に、懲戒解雇が有効になるかどうかは、逮捕されたかどうか、犯罪の内容、会社の事業の性質、従業員の会社での地位などが総合的に判断されます。
相談者さんは、窃盗の罪を認めていますので、窃盗の内容にもよりますが、懲戒解雇となる可能性は十分あるかと思います。
相談者さんは窃盗事件では懲戒解雇できないはずだと考えているようですが、窃盗罪は決して軽微な犯罪ではありません。例えば、立場は違いますが、公務員の懲戒処分の指針を参考としてみると、公務外の窃盗は免職と停職のいずれかという重たい処分となっています。
なお、有罪判決があると必ず懲戒解雇が有効となるのではなく、従業員にとって不利な事情の一つということになります。
自宅待機については、不正再発の恐れなど、従業員の就労を許容しないことについて実質的な理由が無い限り、賃金は発生します。相談者さんの場合は、私生活上の非行ですから、一般的には業務を遂行させることに支障はなく、賃金は発生するでしょう。
【取材協力弁護士】
村松 由紀子(むらまつ・ゆきこ)弁護士
弁護士法人クローバーの代表弁護士。同法人には、弁護士4名が在籍する他、社会保険労務士4名、行政書士1名が所属。企業法務を得意とする。その他、交通事故をはじめとする事故、相続等の個人の問題を幅広く扱う。
事務所名:弁護士法人クローバー
事務所URL:https://clover.lawyer/
配信: 弁護士ドットコム