「法曹の卵」である司法修習生が主催する「第77期司法修習生フォーラム」が、10月13日、14日に京都市内で開催される。
これは毎年、社会問題や人権問題をテーマに全国の司法修習生が主催するもので、30年以上の歴史があるという。今年のスローガンは「『当たり前』を、疑う」。
今年は「離婚後共同親権の問題点と法案成立の背景」を全体会のテーマとして、女性の権利問題に取り組む岡村晴美弁護士や、全国女性シェルターネット共同代表で広島大学ハラスメント相談室准教授の北仲千里さん、憲法学者で東京都立大学教授の木村草太さんらを招き、講演やパネルディスカッションを行う。
また、分科会では、「公立学校教員・医師の労働環境」や、「トー横問題に見る子どもたちの人権と未来」などさまざまなテーマをとりあげ、一線で活躍する専門家や当事者、弁護士らが登壇して現代社会が抱える問題と法律について考える。
運営をしている77期司法修習生の実行委員会に今年の目的やねらいを聞いた。
⚫︎共同親権、看過できない深刻な問題
——今回、「離婚後共同親権の問題点と法案成立の背景」が全体テーマとのことですが、なぜこのテーマが選ばれたのでしょうか。
本法案は、立法過程において様々な問題点が指摘されていました。とりわけ、DVを原因として離婚をした人々は、本法案によって加害者から逃れることができなくなる危険性が高くなるという点は看過できない深刻な問題です。
一方で、本法案の立法事実は法案成立後の今でも明らかとは言えません。昨今では重大な問題点が指摘される法案について、十分な審議がなされないまま成立してしまうことが少なくありません。本法案もその一つだと思います。
本法案とその成立過程の問題点を学ぶことを通して、既存の法律に則って思考するだけではなく、ときには、法曹として法律そのものの不合理に対して声を挙げなければいけないということを修習生として学んでいきたいと考えたため、このテーマを選びました。
⚫︎トー横問題と子どもの未来を考える
——分科会では、「トー横問題に見る子ども達の人権と未来」というテーマに興味を抱きました。どういった内容になるのでしょうか。
いわゆる「トー横」や「グリ下」には、家庭問題等の様々な事情を抱えた子ども達がいます。彼ら彼女らには、家庭等に居場所がないという共通項があり、同じような経験・思いを抱く子ども達が各地から集まり、「トー横」に居場所を見出だしています。
一方で「トー横」には、子ども達の人権と未来を蝕む様々な危険が蔓延しています。薬物の味を覚えさせられ、犯罪の手足に利用される、ホストに手なずけられた女性が多額の金員をホストに貢ぎ借金漬けになる、ホスト等に貢ぐために(児童)売春に手を染める。
これらは氷山の一角にすぎないものの、「トー横」に様々な危険が潜んでおり、彼ら彼女らの人権と可能性に富んだ未来が危険に晒されているのは明白です。
しかし、「トー横」が家庭等に居場所のない子ども達にとって「居場所(避難場所)」として機能していることもまた否定できず、彼ら彼女らを無理やり「トー横」から引き離してしまうこともまた重大な問題を孕んでいます。
以上を踏まえ、この「トー横」に潜む種々の危険からいかにして子ども達を守ることができるのか、我々はトー横の子ども達にいかに向き合うべきなのか、民間のみならず、法曹はそのためにどのようなことができるのか。これらの点を念頭に、「トー横問題」について考えてみたいと思います。
配信: 弁護士ドットコム