九州の多くの高校には「朝課外(あさかがい)」という長年続いてきた風習がある。1時間目が始まる前の早朝の課外授業のことで、塾や予備校が少ない地方で経済的負担がかからない方法として数十年前に始まったとされる。
ただ、時代の変化によって生徒や教員への重い負担が問題視されるようになり、宮崎県のある公立高校では3年前、生徒自らが見直しを求めて声を上げた。その影響かは不明だが、九州各県でその後、朝課外を廃止する動きが加速。今は大学生となった元生徒会長に当時の思いを聞いた。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介)
●「学校に嫌われる怖さから生徒は何もできない」
ーー鹿児島大学歯学部2年の早田立貴(はやた・りつき)さん(21)は、宮崎県立延岡高校で生徒会長を務めていた2021年、生徒会が主導して朝課外のあり方を見直そうとしました。なぜそのような行動をとろうと思ったのですか?
ぶっちゃけ言って、生徒会長は行事ごとに対応すればあとはほとんど何もしなくていいんです。中には肩書きほしさに生徒会長になる人もいます。
話が少し遡りますが、僕が中学の時、生徒会長として合唱コンクールのプログラムを変えて文化祭のような行事に生まれ変わらせたり、分厚い生徒手帳を廃止したりしたことがありました。
ありがたいことに中学の評判が噂になって、高校でも生徒会長をすることになりました。 僕は高校でもどうせ生徒会長になるなら何かを変えるためにアクションを起こしたいと思っていました。
どこから手をつけようかなと考えていた時、一番やっかいなのが朝課外だなと思い至りました。
というのも、進学校である延岡高校では生徒が実際は朝課外を廃止するために行動したいと思っていても、大学受験を控えているので学校側に嫌われて受験に不利になるんじゃないかという怖さがあって生徒たちは何もできないんです。その代表である生徒会長も変革を起こせません。
僕の場合は成績がそんなに良くなかったこともあり、捨て身でやってみようと思えました。
●アンケートすら取れず、「先生たちと話がしたかった」
ーー見直しに向けた最初の取り組みとして、朝課外について生徒たちが本当はどう思っているのかを可視化する生徒アンケートの実施を学校側に提案したそうですね。
朝課外を考える上では、生徒、保護者、先生という3つの視点があります。それぞれ朝課外の否定派と肯定派がいると思いますが、この3者の意見がうまく噛み合っていないと感じました。
そんな中で最初から「朝課外を廃止しろ」と言ってもデータがないと何も変わらないことは目に見えていたので、僕が生徒会長としてできるのは生徒の視点から意見を集めることだと考え、まずは一旦、生徒たちの声を整理しようとアンケートを取ろうと思いました。
でも、それを学校に伝えたら「先生たちの間ですでに議論が始まってる」と言われ、そもそもアンケート自体を取ることすらさせてもらえませんでした。しかし、今考えると、その議論には生徒の視点が欠落していて、理想的な進め方とは思えません。もうちょっと先生たちと話がしたかったです。
配信: 弁護士ドットコム