姫が本気で愛を伝えた時……心揺らぐさまがたまらない|NHK『光る君へ』34・35話

姫が本気で愛を伝えた時……心揺らぐさまがたまらない|NHK『光る君へ』34・35話

道長、命がけの祈願

都で火事が続いたり、敦康親王(片岡千之助)が病にかかるなど、不吉なことが続いていた。そこで道長は金峯山寺への参拝を決めた。彰子の懐妊と世の安寧を祈願するためだ。命がけの道のり。

それだけ、道長が彰子の懐妊を願うのは、このままでは彰子が不憫だという思いが強いからだろう。

事実だけ見ると、自分の地位を確固たるものにするためにしている可能性だってあるのに、そうは見えないのは道長の人柄によるものだろう。伊周(三浦翔平)は定子(高畑充希)に皇子を産め産めと責め立てていたな……と思い出さずにはいられない。

そんな伊周は金峯山寺からの帰路に道長を亡き者にしようとしていた。それを阻んだのは隆家(竜星涼)だった。伊周は、なぜ自分の邪魔ばかりをするのだ、というが、隆家としては兄を助けるための方法であったのだと思うけれど、弟の心、兄知らずというところだろうか。

彰子の心が一条天皇を動かす

道長は金峯山寺から戻ると、まひろのもとを訪れる。道長の無事な姿を見て、まひろもホッとした様子を見せる。空気感が夫婦のようだ。

そして道長が何をするかというと、「源氏物語」の続きを読むことだ。

光る君の不義密通の話を読み、どのような心積もりで書いたのかと問う道長。まひろは我が身に起きたこと、と言う。それは、道長との夜のことを指しているのだけれど、道長には伝わっているんだろうか……。

不義密通があったとして、自分と宣孝(佐々木蔵之介)以外の男の存在があった、と道長は考えるのか。まひろの部屋を出たあと、道長はふと足を止めるが、その心のうちはいかに。

でも、恋だとか愛だとかは全てが分かってしまったら少しばかりつまらないのかもしれない。

一方、彰子。彰子は「源氏物語」に登場する若紫に思いを馳せていた。若紫は自分のよう。幼いうちに光る君に引き取られ、育てられた若紫。彰子は幼いころに入内し内裏で育った。その姿が重なるのだろう。

若紫はこれからどうなるのか、と問う彰子にまひろは「どうなればよいと思うか」と問い返す。

「光る君の妻になるがよい」

光る君は一条天皇のようだと彰子は言っていた。その一言に、彰子の思いが詰まっていた。心の内を一条天皇に伝えてはどうか、というまひろだったが、そこに一条天皇が訪れた。思いが溢れるかのように、「お慕い申しております!」と告げた彰子。

頬を涙で濡らし、その瞳が一条天皇をとらえる。自分の感情を初めてあらわにした瞬間だったかもしれない。

その場は立ち去った一条天皇だったが、改めて藤壺を訪れる。彰子に触れるために。

雪が積もる夜に訪れ、ふとその雪に視線を向ける帝の美しいことよ……。

思い出していたのは定子と過ごした日々のことだろうか。

定子に慈しまれ、愛されていた幼い帝。自分を慕う誰かを慈しみ、愛する人にならなければならないときが来たのかもしれない。

<文/ふくだりょうこ>

【ふくだりょうこ】
大阪府出身。大学卒業後、ゲームシナリオの執筆を中心にフリーのライターとして活動。たれ耳のうさぎと暮らしている。好きなものはお酒と読書とライブ

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