朝ドラ『虎に翼』32歳俳優の演技は「極めて大げさ」だけど優れているといえるワケ

朝ドラ『虎に翼』32歳俳優の演技は「極めて大げさ」だけど優れているといえるワケ

 9月7日に放送された『人生最高レストラン』(TBS)に戸塚純貴が出演した。彼は俳優としての強みについて話していた。

 戸塚純貴の強みは彼の核心部分である。それはあの極めて大袈裟な表情に見える演技を確立する演技法であり、朝ドラ『虎に翼』(NHK総合)の轟太一役まで着実に探求、実践されてきた。

 イケメン研究をライフワークとする“イケメン・サーチャー”こと、コラムニスト・加賀谷健が、『虎に翼』の轟太一役の“リアクションの演技”を読み解く。

精神の救いとなってきた「教会」

『虎に翼』公式Xには、「#トラつばインタビュー」という一連のポストがある。これは戸塚純貴と土居志央梨が同作の裏側について語るインタビュー音声なのだが、9月10日にポストされたインタビュー中編が興味深かった。

 ふたりがそれぞれ演じる轟太一と山田よねは、主人公・佐田寅子(伊藤沙莉)の学友であり、戦後、上野の元カフェで共同弁護士事務所を設立した。弱きを助けるこの事務所には、毎日のように人々が相談にくる。

 インタビューでは、弁護士事務所が「自分のことを正直に話す場所」と戸塚が定義し、だんだん「教会みたいな感じ」と土居が付け加えている。そうか、教会か。言い得て妙かもしれない。この弁護士事務所は、弁護を頼みにくる人々のために平等に開かれているばかりか、轟とよねにとっても精神の救いとなってきた場所だからだ。

花岡を想う眼差し

 この場所が初めて教会化する瞬間があったとするなら、それはたぶん第11週第51回だろうか。この週は、明律大学で寅子たちと学んだ判事・花岡悟(岩田剛典)が餓死するというショッキングな事件直後から幕を開けた。

 誰よりもショックを受けたのが轟であり、彼にとっての花岡は親友以上の存在だった。轟が花岡に抱く愛情に気づいているよねが、ぐでんぐでんに飲み崩れた轟の元に現れ、カフェに連れてくる。

 よねから「惚れてたんだろ、花岡に」と言われ、最初は声を荒げる轟だが、彼は確かに花岡のことを愛していた。ただ、「俺にもよくわからない」と轟が言うように、この時点での轟のセクシュアリティは曖昧である。

 花岡を想う轟の眼差しが、まさに愛の告解(告白)を行うような強さとして描かれていたら十分だ。この場面以降、弁護士事務所を設立しようと結束する轟とよねにとってはある意味、設立自体がイコール精神の救いというか、つまり教会的な機能を担うことになったのだと思う。

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